2024年上半期 最も注目を集めた建築家が建てた住宅事例TOP10

建築家ポータルサイト「KLASIC」に掲載されている約500件の実例記事の中から、2024年上半期でユーザーの皆様に最も閲覧された建築事例TOP10をこの特集では紹介させていただきます。
デザイン性に富んでいる実例、独創性を感じられる実例、利便性を追求した実例など、たくさんの魅力が詰まった10邸をゆっくりご覧になって、ぜひみなさまの住まい造りの参考にしてください。

鉄筋コンクリート構造・地上3階建てなのに2000万円台! 「リブハウス」という名の住宅

東京都小金井市 / U邸

上原邸は鉄筋コンクリート構造・地上3階建てという造りだ。袖壁と梁型で構成される構造フレーム(リブ)から"リブハウス"と名付けられた。1階から3階まで吹き抜け構造になっている。さらに各フロアが6つのエリアに区切られており、仕切る壁や扉がないのだ。その結果、驚くほど開放的な空間が広がっている。

「外部から自然の恩恵をどこまで取り込めるかという点を重視しています。室内を吹き抜けにして、上層階から光を取り入れることで、冬場は少しでも多くの日光を取り込めるようにしてあります。その反面、夏場は室内の熱気を3階にあるトップライトから排出できる構造となっており、吹き抜けでありながら、煙突のような役割を果たしているんです」と上原さんは語ります。

1階は上原さんの設計事務所である"上原和建築研究所"としての役目を果たしている。「それぞれのデスクからミーティングスペースに行き来するなど、地中の梁型をむき出しにすることで、"またぐ"という動作が生まれます。玄関を開けると、目の前にあるのがホームエレベーターです。このエレベーターは、鉄板の素地がむき出しになっています。建物自体が"素材むき出し"なので、エレベーターもあえて塗装しないで組み込んであるんです」と上原さん。

個性的な住戸が集うコーポラティブハウス。 全住戸に庭付き一戸建ての豊かさを

東京都杉並区 / 荻窪ロウハウス

1つの建物を区分所有し、建築家とともに自分の住戸の間取りや内装をつくっていくコーポラティブハウス。集合住宅でありながら注文住宅のように好みを反映でき、住空間にこだわりをもつ人々に人気が高い住宅だ。

建築家の奥野公章さんが設計した東京・杉並区の『荻窪ロウハウス』もその1つ。1つの建物の中にスケルトンで7つの住戸をつくり、間取りや内装を個別にプランニングしている。

建物全体のコンセプトは、緑豊かな一軒家が立ち並ぶ周囲の街並みに溶け込むよう、「全住戸が庭付き一戸建て感覚で住めること」。屋外と気持ちよくつながり、光や風を効果的に取り込むパッシブデザインの住宅設計に長けた奥野さんは願ってもない適役だった。

上質なモダン建築がもたらす極上の時間。 都心に佇む羨望の高級邸宅

東京都品川区 / F.R.邸

東京都心の閑静な住宅街。洗練されたデザインのエントランスを入ると、天井の高い吹抜けのエントランスホール。邸内に進むと右手にキッチン、正面にはテラスに面したバーカウンター付きのダイニング。その先には3面がガラス張りの吹抜けのリビングが広がり、青空と緑が迫るダイナミックなスケール感に圧倒される。

「このお宅は地下1階、地上3階建て。リビングは1階のほか、2階にお子さまたちのラウンジ、3階にご夫妻専用のラウンジ、地下にファミリーラウンジがあります」と教えてくれたのは、設計を担当したJWA建築・都市設計一級建築士事務所の渡辺純さん。1階リビング以外に家族用のラウンジが3つもあるとは驚いてしまうが、外国人の施主さまはホームパーティーをよく楽しまれるため、1階は来客を意識してつくられたのだという。

RCと木造を合わせた『混構造』を採用 沖縄の気候・自然と共存する「亜熱帯のいえ」

沖縄県豊見城市 / 亜熱帯のいえ

沖縄県にある設計事務所、ADeRで一級建築士として活躍する仲本昌司さん。その自邸が、豊見城市に建つ「亜熱帯のいえ」だ。

海が見える土地を長年探していたと話す仲本さん。農業従事者しか家を建てられないなど制限がある土地も多く、理想的な土地を見つけるのには苦労したそう。理想の土地に出会うまでに、1年の歳月を要したという。

家づくりに着手した仲本さんが最初に考えたのが、建物の構造だった。亜熱帯気候で台風やシロアリの被害が多い沖縄では、RCコンクリート造が主流だ。しかし、コンクリートは蓄熱するうえ調湿効果がないため、高温多湿の沖縄では結露しやすいなどのデメリットもある。

まるで森の中にいるよう。 開放的な空間から庭を楽しむ家

愛知県豊橋市 / F邸

施主であるF様は、植物やそれに合わせたインテリアなど、ライフスタイルを提案するお店を経営されている方。F邸は家の三方を木々が囲み、特に東側には緑地公園の木々が生い茂る、まさにグリーンを扱うF様のお仕事にぴったりな環境に建てられた家といえる。「ゲストに自宅の庭を紹介したい」という要望も叶い、お招きしたゲストとともに庭を楽しみ、にぎやかに、またはゆったりと時間を過ごされる機会も多いのだとか。

hm+architects一級建築士事務所の伊原洋光さん、みどりさん夫妻は、建築予定地を初めて見たとき直感的に家のフォルムのイメージが湧いたという。

家の中に木が生えてる 自由な発想で狭小地でも中庭も明るさも

愛知県名古屋市 / アトリウムに暮らす家

現在の住まいや実家にも近く、子どもたちの学校の校区内に土地を購入した施主のSさん。実はこの土地は間口が狭く奥行きが長い狭小地。夫婦と子供4人という大家族が住む家を建てることに難色を示す工務店が多い中、NATURE SPACEの担当者は「ウチなら面白い建物ができると思います」と自信を見せたのだという。それもそのはず、NATURE SPACEはこれまでに、狭小地や変形地、高低差のある土地など、困難と思われる土地にも施主の希望を叶える家を作り続けてきたのだ。こうしてSさんとNATURE SPACEの家づくりが始まった。

NATURE SPACEの家づくりは、じっくりとヒアリングすることから始まる。そのヒアリングでは「何階建てにしたい」「部屋はいくつほしい」といったスペックについては聞かないらしい。むしろ「何のために家を建てるのか?」「どんな生活をしたいのか?」そして現在「どんな生活をしているのか?」ということを問い続けるのだという。

築40年の日本家屋の梁や構造材を活用し 古民家然とした和モダンな家にリフォーム

愛知県稲沢市 / つなぐ家

築40年程の⽊造⽡葺2階建ての日本家屋。母屋は60坪程あり、1階、2階ともに天井には太い梁が通っている土壁の立派な建物で、N様のご両親が大事に暮らしていたご実家だった。その母屋を、定年を迎えられたN様がご夫婦2⼈で住み継ぐことになり、リフォームして住むか、新築に建て替えるか迷っていた。そこで知り合いの事例を見て紹介してもらった、建築家の森さんに相談。

古民家のように落ち着いた空間が好きというN様に、森さんは立派な建物なので、構造材をデザインに生かすことを提案。ただ、耐震診断をしたところ、数値があまりよくなかった。そのため、公的機関からの助成金も加えて、耐震補強をすることに。さらに、2人暮らしだから「2階は使わないだろう」とのことだったので、平屋+⼩屋裏収納・ロフトのある建物に改築とした。「屋根を軽くして、平屋建てにすることで耐震面でも有利になります」と森さん。また、夏の風通しは良いが、冬は大変冷え込むので暖かく、快適な家にしたいというご要望もあり、断熱性能にも配慮。屋根、外壁、床下の断熱を行った上で、床暖房も設けた。

出入り自由、誰もが使える通り土間。 美しい田園風景になじむ、切妻屋根の家

熊本県熊本市 / 切妻と土間の家

林田直樹建築デザイン事務所の林田直樹さんが自邸を建てるために選んだのは、穏やかな農村地帯の一角だ。目の前になにもない開けた場所を探していたところ、出会ったのが、西側から北側にかけての2方向を田んぼに囲まれたこの土地だった。

見渡す限りと形容できるほど、田んぼが伸びやかに広がる絶景を存分に楽しむことはもちろん、周りの風景にもなじむ家にしたいと考えた林田さん。まず南北に長い長方形の平屋を計画し、中には通り土間やLDKなどを配置した。LDKは西側の一面を大きく開口したおかげで、西側に広がる田んぼの風景をゆったりと楽しめる。

高台の恵まれた立地をさらに生かした 抜群の眺望を楽しみ、快適に暮らせる住まい

沖縄県 / 高台の家

沖縄県。見晴らしのよい高台に、真っ白な外壁が青空に映える家がある。お施主であるSさまは、自宅であるこの「高台の家」を建てる際、この立地や環境を最大限に生かしたいとお考えだったという。

依頼を受けたのは、アトリエセグエの比嘉俊一さんだ。詳しいヒアリングを通して、眺望を生かすことはもちろん、毎朝リビングで朝日を浴びることができる生活をイメージ。計画したのは、下に続く街並みに向かって大きく開口した2階建ての家だ。

1階に設けたLDKは、リビングエリアを2階までの吹き抜けとしている。そして、吹き抜けを構成する多様な開口部の計画が、明るいLDKのキーになっているのだという。「吹き抜け部分の上部、東側と南側にそれぞれ『空に繋がる窓』を設けました」と比嘉さん。お施主さまがイメージされていたような、さわやかな朝日がたっぷり入ってくるのはもちろん東側の窓だ。沖縄の強い日射を考えると、大きく開口して大丈夫なのかと気になるところだが、朝の時間を過ぎれば直射では日が入らず、むしろ青い空がそのままの色で眺められるという。

街とつながり、「楽しい」が増える場所。 北向きでも採光抜群、緑豊かな店舗併用住宅

千葉県流山市 / HOUSE F

建築家の福井啓介さんと森川啓介さんは、2人が運営する設計事務所・かまくらスタジオの名前の由来についてそう話す。冬の風物詩であるかまくらはみんなで一緒につくってみんなで入ることができ、そこからコミュニケーションが生まれ、和気あいあいとした楽しい光景を街の中につくり出す。かまくらスタジオという名前には、そんな建築を提供したいとの思いが込められているという。

2人が設計した『HOUSE F』は、その思いを具現化したような建築だ。場所は、自然豊かな住宅街として人気の千葉・流山おおたかの森駅から歩いてすぐ。1階にかまくらスタジオのオフィスとカフェ、2~3階に福井さん一家の住居がある鉄骨造3階建ての建物で、緑に包まれたモダンな佇まいが目を引く。