高台の恵まれた立地をさらに生かした
抜群の眺望を楽しみ、快適に暮らせる住まい

見晴らしのよい場所に、「高台にあるからこそ」の暮らしができる家を建てたいと考えたお施主さま。依頼を受けた建築家の比嘉さんは、美しく空を切り取る窓や、LDKからゆったりと眺望を楽しめる大きな開口を計画。
沖縄の強い日射をコントロールし、風や光を存分に享受しながら快適に過ごせる家をつくり上げた。

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高台の立地を存分に生かした
空も、街並みも美しく見える家

沖縄県。見晴らしのよい高台に、真っ白な外壁が青空に映える家がある。お施主であるSさまは、自宅であるこの「高台の家」を建てる際、この立地や環境を最大限に生かしたいとお考えだったという。

依頼を受けたのは、アトリエセグエの比嘉俊一さんだ。詳しいヒアリングを通して、眺望を生かすことはもちろん、毎朝リビングで朝日を浴びることができる生活をイメージ。計画したのは、下に続く街並みに向かって大きく開口した2階建ての家だ。

1階に設けたLDKは、リビングエリアを2階までの吹き抜けとしている。そして、吹き抜けを構成する多様な開口部の計画が、明るいLDKのキーになっているのだという。「吹き抜け部分の上部、東側と南側にそれぞれ『空に繋がる窓』を設けました」と比嘉さん。お施主さまがイメージされていたような、さわやかな朝日がたっぷり入ってくるのはもちろん東側の窓だ。沖縄の強い日射を考えると、大きく開口して大丈夫なのかと気になるところだが、朝の時間を過ぎれば直射では日が入らず、むしろ青い空がそのままの色で眺められるという。

南側の窓は、より印象的に空が眺められる。深い庇に加えて同じ幅でサイドの壁面も前面に出し、窓をフレーミング。庇は窓の外枠の位置から屋根の高さまでなだらかに上がっていき、自然な流れで空へ視線をいざなう。

また、照明の計画にも比嘉さんのこだわりがみえる。吹き抜けに下がるペンダントライトは、透明感があり光を反射するデザインのものを選択。窓から空を眺めようと見上げると、ペンダントライトにも空が写り込んでいるのが見える。家の中に小さな空があるようで、心が浮き立つに違いない。

吹き抜け部分のほかにも、下に街が見える南側は大きな窓を計画。テラスを設け、日射対策として2階の床スラブを大きく張り出させて、庇としての機能も持たせた。おかげで光や明るさがコントロールされ、眩しさを感じることなく室内から眺望が楽しめるようになった。
  • 南側から見た外観。高台にあり、空や眺望が楽しめるように南側は全体的に大きく開口した。2階の床スラブがぐっと張り出し、1階デッキ部分の庇の役割も兼ねている。屋根に蓄電池付きの太陽光パネルを設置し、台風などによる停電に備えた
撮影:Alien design & photography 井田佳明

    南側から見た外観。高台にあり、空や眺望が楽しめるように南側は全体的に大きく開口した。2階の床スラブがぐっと張り出し、1階デッキ部分の庇の役割も兼ねている。屋根に蓄電池付きの太陽光パネルを設置し、台風などによる停電に備えた
    撮影:Alien design & photography 井田佳明

  • 北西から見た外観。北側は前面道路に面しているため居室や窓は設けず、駐車スペースや玄関を配置した。建物の左手前部分は室内物干し室。光を入れるため、天窓をつくった
撮影:Alien design & photography 井田佳明

    北西から見た外観。北側は前面道路に面しているため居室や窓は設けず、駐車スペースや玄関を配置した。建物の左手前部分は室内物干し室。光を入れるため、天窓をつくった
    撮影:Alien design & photography 井田佳明

  • 北側の外観。中心はアプローチへ続く扉。左側には室内物干し室がある。外壁は透かし積みのレンガを用い、室内といえども半屋外のように風が抜ける。右側は駐車場。車を降りたら直接アプローチにアクセスできて便利だ
撮影:Alien design & photography 井田佳明

    北側の外観。中心はアプローチへ続く扉。左側には室内物干し室がある。外壁は透かし積みのレンガを用い、室内といえども半屋外のように風が抜ける。右側は駐車場。車を降りたら直接アプローチにアクセスできて便利だ
    撮影:Alien design & photography 井田佳明

  • 1階LDK。テレビを設置するパネルや床など以外は白くまとめられているが、実は一番外側の壁面、正面の扉がある壁面、左側の階段手すり部分の壁面で、素材や「白」の色味がそれぞれ異なっている。これにより陰影や壁面のエッジなどが際立ち、室内の雰囲気が表情豊かになった
撮影:Alien design & photography 井田佳明

    1階LDK。テレビを設置するパネルや床など以外は白くまとめられているが、実は一番外側の壁面、正面の扉がある壁面、左側の階段手すり部分の壁面で、素材や「白」の色味がそれぞれ異なっている。これにより陰影や壁面のエッジなどが際立ち、室内の雰囲気が表情豊かになった
    撮影:Alien design & photography 井田佳明

リビングと庭を繋ぐデッキテラス。
沖縄ならではの手法で日射をコントロール

空や街並みを美しく眺められるLDKは、先述の通り吹き抜けもあるオープンな空間だ。比嘉さんによれば、沖縄ならではの住まい方を特に表現した部分が、テラスとリビングの繋がりだという。日陰であれば、カラッとして涼しいという沖縄の夏。沖縄の伝統的な家のつくり方に倣って庇を大きく出し日射を遮り、要望だったエアコンに頼らない暮らしを実現した。

また、テラスが室内と庭を結ぶワンクッションとして機能することで、LDKの使い勝手がよくなったうえ、同時に庭の使い道もバリエーション豊かになった。天気がよい日には、ピクニック気分でお庭ランチを楽しむこともあるのだとか。

2階への階段は吹き抜けがある東側の壁面に沿うように計画した。ただ、せっかく開放的な空間を演出しているのに、階段室のように完全に区切ってしまうとLDKがそれだけ狭くなる。そこで階段とLDKを仕切る壁の高さを可能な限り低くし、「空に繋がる窓」まで空間を一続きにした。そればかりか、仕切り壁と窓がある外側の壁との重なりが奥行き感を生み、かえって広々と感じられるようになったという。

白を基調としてまとめられたLDK。不思議なのは、同じ色でまとめたと思えないほど室内の雰囲気が表情豊かなのだ。壁と壁が交わる部分や、角のラインもはっきりと浮かび上がっている。

「実は白といっても、4~5色使っているんです」と比嘉さん。天井が純粋な白、キッチンに近い壁面は薄くグレーがかった白など、素材や場所によって一番美しく見えるように組み合わせた。同化したり逆に目立ちすぎたりすることがないように、最終的には施工時にサンプルで全体的なバランスを確認しながら確定したのだそうだ。

アプローチや玄関は、LDKと対照的にしっとりした空間で上質な落ち着きがある。その理由は素材の使い方にあった。たとえばアプローチの床は荒いコンクリートの質感を残したビシャン仕上げ、また玄関に繋がる壁面のコンクリートは杉板本実型枠表しと、コンクリートそのものにデザインを持たせた。その理由を伺うと、「光と影、それにコンクリートは相性がいいんです」との答えが。

なるほど、屋根に覆われたアプローチにハイサイドライトがくっきりと一筋差し込み、床や壁面にアクセントを与えている。光を受けるコンクリートに模様や質感があるからこそ、さらにその光が生きてくるのだ。また、玄関の床には大理石を採用した。アプローチのハイサイドライトは玄関のガラスを通って届き、大理石に柔らかく反射する。
はっきりしたコントラストだったり、ほのかな明るさだったり。美しい陰影が大切に扱われているアプローチと玄関を通ることで、LDKの明るさや解放感もより効果的に感じられるようになった。
  • 1階リビングダイニング。リビングの上部は吹き抜けとし、開放的に演出。画像左、テレビを設置したパネルの裏側に階段がある。壁面で区切りすぎてしまうと室内が狭く感じられるため、可能な限りパネルの高さを抑えた。外側の壁との重なりによって、より奥行きが感じられる空間に
撮影:Alien design & photography 井田佳明

    1階リビングダイニング。リビングの上部は吹き抜けとし、開放的に演出。画像左、テレビを設置したパネルの裏側に階段がある。壁面で区切りすぎてしまうと室内が狭く感じられるため、可能な限りパネルの高さを抑えた。外側の壁との重なりによって、より奥行きが感じられる空間に
    撮影:Alien design & photography 井田佳明

  • 階段。右側壁の裏がリビング。吹き抜け上部、東と南に「空と繋がる窓」を設けた。空の眺めは絵画のよう
撮影:Alien design & photography 井田佳明

    階段。右側壁の裏がリビング。吹き抜け上部、東と南に「空と繋がる窓」を設けた。空の眺めは絵画のよう
    撮影:Alien design & photography 井田佳明

  • 2階、夫婦の寝室。画像左奥の引き戸は廊下へ、手前の引き戸はウォークスルークローゼットに続く。右側のデッキは居室部分の端から端までに伸びており、廊下だけでなくデッキを介してもそれぞれの居室と行き来ができる
撮影:Alien design & photography 井田佳明

    2階、夫婦の寝室。画像左奥の引き戸は廊下へ、手前の引き戸はウォークスルークローゼットに続く。右側のデッキは居室部分の端から端までに伸びており、廊下だけでなくデッキを介してもそれぞれの居室と行き来ができる
    撮影:Alien design & photography 井田佳明

  • 駐車場からアプローチ、玄関、LDKは直線で繋がれている。屋根もあり、雨に濡れずに行き来できて便利だ
撮影:Alien design & photography 井田佳明

    駐車場からアプローチ、玄関、LDKは直線で繋がれている。屋根もあり、雨に濡れずに行き来できて便利だ
    撮影:Alien design & photography 井田佳明

来客用の居室を独立させプライバシー確保。
快適に暮らせる住まいを細やかな配慮で実現

土地柄もあり、お盆やお正月など行事ごとに来客が多いというSさま。また、奥さまは県外のご出身で、お母さまが遊びにいらっしゃることも多いそうだ。そんな理由から、もう1つ「来客が気兼ねなく休むことができる和室が欲しい」とお望みだった。

そこで1階は、玄関を入りまっすぐ進めばLDK、すぐ右に折れれば寝室へという配置に。
トイレもLDKに続く仕切りより手前に設け、Sさま家族が住まうエリアに干渉せずにくつろげるよう配慮した。

さらに、寝室や子供部屋などよりプライバシーを守る必要がある居室は2階へ上げた。2階も1階と同じように南側を吐き出し窓で開口。デッキからもそれぞれの部屋へ行き来できる。ひとつひとつの居室に十分な広さがあり、今はまだ小さなお子さまたちが成長したときにはきっと喜ばれることだろう。また、夫婦の寝室にはウォークスルークローゼットが隣接しており、朝の時間など身支度も楽にできる。

生活の利便性についても配慮した。1階のアプローチは玄関だけでなく駐車場にも抜けることができ、雨の日でも安心だ。また、普段から人や車の通りが多いため北側には居室を設けず、かわりに物干し場を設けた。風を通す透かし積みのレンガブロックで外壁を計画、天窓から光も入るようにした半屋外的な設えとし、洗濯機も同じ場所に置いた。洗面脱衣室とも繋がっており、家事がしやすい。

立地を生かし、また暮らしやすさも追及した「高台の家」。「光も風も眺望も想像以上に満喫できる家となったことを、Sさまがとても喜んでくださいました」と、比嘉さんは嬉しそうに語ってくれた。
  • 1階LDK。キッチンはアイランド式を採用。ダイニングテーブルとキッチンをくっつけて設置することをあらかじめ決めていたため、使い勝手を考えて作業台にコンセントも備えている。左にあるデッキはLDKの裏側に位置する和室まで続く
撮影:アーキメディア沖縄 小玉勝

    1階LDK。キッチンはアイランド式を採用。ダイニングテーブルとキッチンをくっつけて設置することをあらかじめ決めていたため、使い勝手を考えて作業台にコンセントも備えている。左にあるデッキはLDKの裏側に位置する和室まで続く
    撮影:アーキメディア沖縄 小玉勝

  • 1階リビング。上部に設けた「空と繋がる窓」は庇がなだらかに上がり、視線が自然と空へと延びる
撮影:アーキメディア沖縄 小玉勝

    1階リビング。上部に設けた「空と繋がる窓」は庇がなだらかに上がり、視線が自然と空へと延びる
    撮影:アーキメディア沖縄 小玉勝

基本データ

作品名
高台の家
所在地
沖縄県
家族構成
夫婦+子供3人
敷地面積
383.85㎡
延床面積
245.8㎡
予 算
5000万円台