個性的な形をした敷地、木々に囲まれた環境。この土地の魅力を最大限に生かした家を建てたい。そんな施主様の希望を最適解といえるプランニングで叶えた建築家の伊原洋光さん、みどりさん夫妻。ご要望を的確にクリアしつつ唯一無二の空間をつくる手腕は、おふたりの感性と緻密さによるものだった。
この建築家に庭の正面を縁取っているのは緑地公園の木々。公園は東に向かい大きく広がっている。背面も裏の家の庭と接しているため、家の三方が木々に囲まれた贅沢な環境。折れ曲がった位置のリビングから庭を眺めると、開放的な視界に時間を忘れて過ごしてしまうと施主様もお喜びだそう
家の端から端まで途切れることなく続く濡れ縁が印象的。軒天にも天然木を貼り、モダンな雰囲気に。2階のフォルムもユニーク。1階が持つ長く公園へ突き刺さるイメージを加速させている
余計な装飾のない、平たいイメージの壁面。シンプルだからこそ、面と面が合わさる角度や時間の移り変わりで変化する日の光による陰影が際立つという。洗濯干しスペースはガラス張りのサンルームにすることで、生活感を感じさせない、エレガントな雰囲気を演出した
隣家の塀の脇で暗くなりがちな北西のエントランスも、建物をへの字に曲げたことで十分なスペースと明るさを確保
側面のスリットから差し込む光がアクセントに。ゲストはコンクリート土間のポーチを抜けて庭へ出る
開放的な内部空間。必要に応じて引き戸を閉めればパブリックとプライベートの領域を明確に分けられる。引き戸を閉めても上部は開放されているため、場の雰囲気を保つことができるという。勾配がついた天井によって生まれる光のニュアンスが美しい
キッチンはバイブレーション加工を施したステンレスを使用し、男性的なイメージに仕上げた。キッチン裏側のパントリーには、左右どちらからでもアクセスできる。写真上部の吊り照明は雰囲気に合わせ造作。4.5mの長さがあり、「この空間スケールだからできること」と洋光さん
脱衣所のすぐそばに洗濯機を設置、洗濯干しスペースまで直線で結んだ。ガラス張りのサンルームは両側にドアを設け風通しに問題なく、それでいて急に雨が降っても安心と喜ばれている。写真上部に見えるのは電動昇降する物干し。洗濯物が多い日も干す場所に困らない
和室。障子を閉めても鴨居の上部に空間のアキがあるため、全体的な室内空間のおおらかさが保たれる
撮影:Shigeo Ogawa