2023年 最も注目を集めた建築家が建てた住宅事例 下半期TOP10

建築家ポータルサイト「KLASIC」に掲載されている約500件の実例記事の中から、2023年下半期でユーザーの皆様に最も閲覧された建築事例TOP10をこの特集では紹介させていただきます。
デザイン性に富んでいる実例、独創性を感じられる実例、利便性を追求した実例など、たくさんの魅力が詰まった10邸をゆっくりご覧になって、ぜひみなさまの住まい造りの参考にしてください。

湘南の海を愛する施主が求めたのは15mの塔 施主と地域の人々の安心のランドマーク

神奈川県 / KUGENUMA-Y

湘南の海に育まれ、海を愛する施主が求めたのは、高さが15メートルもある塔のような家。工務店もお手上げだったこの依頼を、見事に成し遂げたのは、夫婦の建築家ユニット可児さんと植さん。2人の頭脳の化学反応で、日本中どこを探してもここにしかない、唯一無二の住宅が生まれた。
この建物の施主であるYさんは、湘南で育ち人生の大半を海と共に過ごしてきた。毎朝海からパワーをもらい、一時期海から離れた生活を送っていた際には体調を崩してしまったというほど、海とは切っても切れない関係。また、東日本大震災では、ボランティアとして津波の被害地域に滞在し、海の厳しさを改めて感じるという経験もしたのだそう。海の酸いも甘いも噛み締め、それでも海と共に生きていく覚悟をもってこの地に家を建てようと思ったのだ。

街とつながり、「楽しい」が増える場所。 北向きでも採光抜群、緑豊かな店舗併用住宅

千葉県流山市 / HOUSE F

暮らしも、仕事も、街の人々との交流も充実し、毎日が楽しい。福井啓介さん、森川啓介さんが設計した『HOUSE F』は、そんな新生活がかなう店舗・オフィス併用住宅。人生までぐっと豊かになりそうな、幸せな予感を与えてくれる建築だ。
『HOUSE F』は、施工期間中から「何ができるんですか?」と声をかけられ街の人との交流が始まることも多かったという。「自分も使える新スポットができるのかな?」と期待を抱かせ、コミュニケーションやワクワク感を創出していたということだ。
街の人々がそう感じたのは、居心地のよさそうな洗練された佇まい、街にひらいたオープンな建築の魅力があったから。「ごくフツーの家」だと感じたら、完成を待つ楽しみも、かまくらスタジオの2人との交流も生まれることはなかっただろう。

コンパクトでも、居心地はこんなにのびやか 快適動線もうれしい森林の別荘

山梨県北杜市 / 北杜の別荘

齋藤文子さんが設計した『北杜の別荘』は、延床面積約53㎡のコンパクトな住宅だ。けれど実際に住んでみると、想像以上にのびやかな居心地や機能的な動線に驚くこと間違いなし。数字では表せない、心地よい開放感はどのようにしてつくられたのだろうか?
シンプルな空間構成と、さりげなく仕込まれた機能性。そして、誰もが安らぐナチュラルな心地よさ。これらを備えた『北杜の別荘』は、無地の麻シャツをおしゃれに着こなす自然体のファッションとイメージが重なる。わかりやすいブランド品で着飾らなくても、質とセンスは最高峰。そんな住まいを望むなら、齋藤さんは願ってもないパートナーといえそうだ。

七里ガ浜と大島を望むパノラマビュー。 海好き憧れの暮らしがここに

神奈川県鎌倉市 / 津西の家

敷地は南に七里ガ浜の海を望む恵まれたロケーション。鎌倉に事務所を構える建築家の工藤宏仁さんはその贅沢な眺望の魅力を、設計の力で最大限に引き出した。耐震性能や土地の課題も見事にクリアし、施主の理想の暮らしをかなえた家づくりとは?
朝日にきらめく海から夕日に染まる水平線まで、刻々と表情を変える雄大な海を毎日眺めて暮らしていく──。ロケーションのよさを最大限に引き出した工藤さんの設計は、海好きなら誰もが憧れる生活を最高の形でかなえている。

天井高4mのスケール感あふれるLDK。 水平ラインの美しさが目を引くモダン邸宅

東京都 / HOUSE T

「天井が高く、屋外とつながる広いLDKが欲しい」という要望を、想像をはるかに上回る理想的な形でかなえた建築家の八田政佳さん。完成した住まいは邸内へ入るまでの動線も訪れる人を楽しませ、デザイン・住み心地ともに魅力満載の住宅となっている。
こういう心遣いには設計者自身の暮らしを楽しむ力や、住まい手の暮らしをイメージする力が求められる。その点、八田さんは想像力が豊かでセンスがいいし、根底にはいつも、「住まう人が幸せであって欲しい」という温かな思いがある。そんな人と一緒に建てる住宅が、楽しい時間をたくさん紡ぎ出してくれることは想像に難くない。八田さんがつくる家は、ただ、かっこいいだけではないのだ。

鎌倉の深緑に馴染むモダンな平屋。 レイヤーで外とつながる、光あふれる住空間

神奈川県 / Layered house

鎌倉の豊かな自然に馴染みつつ、モダンで都会的な佇まいが目を引くこの家を設計したのはdesus(デサス)建築設計事務所。邸内は光や風が心地よく通り、大切なペットへの配慮も盛りだくさん。鎌倉に住むならこんな家を建てたいと思える住宅だ。
2人がつくる住宅は、快適性もデザイン性もパーフェクトといっていい。その上、景観をランクアップし、住まう人だけでなく街に対しても価値ある贈り物になっている。
歴史、文化、自然が調和する風景を誇り、人々を魅了し続ける鎌倉の街。鎌倉の美しさを支えているのは、実は、稲垣さんと花形さんのような建築家なのかもしれない──。『Layered house』を眺めていると、そんな風に思うのだ。

個性的な住戸が集うコーポラティブハウス。 全住戸に庭付き一戸建ての豊かさを

東京都杉並区 / 荻窪ロウハウス

奥野公章さん設計の『荻窪ロウハウス』は、集合住宅でありながら自分好みの住まいをつくることができるコーポラティブハウス。驚くことに全住戸が庭付き一戸建て感覚で住めるという。住戸の事例とともに、工夫を凝らした奥野さんの建築の魅力を紹介しよう。
全住戸庭付きという離れ技をやってのけた『荻窪ロウハウス』は、集合住宅とは思えない住環境を生み出す奥野さんの設計のすごさがよくわかる。
これまでも、外部の自然と心地よくつながる一戸建てを数多く手がけてきた奥野さん。その知見が大いに活きた7つの住戸は、集合住宅の枠をはるかに超えた豊かな暮らしをかなえてくれた。

出入り自由、誰もが使える通り土間。 美しい田園風景になじむ、切妻屋根の家

熊本県熊本市 / 切妻と土間の家

建築家の林田さんが自邸を建てるため選んだ土地は、一面に田んぼが広がる農村地帯にあ
る。田んぼを眺めつつ生活できる平屋は、切妻屋根も美しくしっくりと風景になじんでい
る。それだけではない。出入り自由、誰もが使えるパブリックスペースとして通り土間を
設けるなど、本当の意味で地域に根付いているのだ。
家づくりでは、お施主さまがどんなことを大事にしているのかに重きを置いてプランニングするという林田さん。その姿勢が生む結果の素晴らしさは、景色を楽しみたい、今の時代に合わせた土間を取り入れたいという出発点からできたこの「切妻と土間の家」を見ればよくわかる。

築40年の日本家屋の梁や構造材を活用し 古民家然とした和モダンな家にリフォーム

愛知県稲沢市 / つなぐ家

「新築にはない魅力を引き出すこと」それが建築家・森さんのリフォームへのこだわり。今回紹介するN様邸はリフォームコンクールの受賞作品で、そんな森さんの設計思想を体現した実例。もともと使われていた構造材を活用し、N様の快適な暮らしに適した減築や改修を施して、和モダンな平屋に生まれ変わらせている。
自然塗料で色を付け、壁には珪藻土を塗る、和紙のクロスを採用するなど、予算に配慮しながらも、なるべく自然素材を使用。「工業製品は、状態がどんどん悪くなるばかりで、経年変化による味わいが出てくることもないので」と森さん。和室の襖紙にもこだわり、古典文様の伝統美を意匠とした襖紙を採用した。照明器具は真鍮製のものなど、そんな和モダンな空間に合うものを選んだという。

玄関を省き、靴のままで出入り自由。 まるで自然の中のような暮らし心地の家

福岡県福津市 / 川沿いの家

将来は夫婦2人で暮らすための、小さな、倉庫のような家を建てたいと依頼を受けた建築家の中野さん。ライフスタイルが確立しているご一家に合わせ、自由にオープンに暮らせる住まいにしたいと計画。完成したのは、ダイニングまで土足で出入りできる、玄関のない家だ。
Hさまご一家からは「この家に住むようになってから、趣味のキャンプに行く必要を感じなくなった」と大満足の感想をいただいたのだそうだ。それは、環境に溶け込み、風や光、水、自然を感じながら自由に暮らしたいという願いを中野さんが的確に理解し、プラスアルファの提案をしつつ、よりよい方法で叶えたからにほかならない。