土地の形状を活かした豊かな住まいづくり 「狭小住宅特集」_VOL.3

土地の難点をデメリットと捉えず、豊かな住まいをつくる。
コンパクトな敷地に加え、旗竿や三角形といったいびつな形状、更には高さ制限などの厳しい条件のなかで、理想の住まいを実現したという設計事例_第3弾をここではご紹介いたします。
施主の想いと希望をカタチにした、建築家ならではの設計事例を、ぜひみなさまの自分らしい住まいづくりの参考にしてください。

防火地域の10坪の土地に豊かな空間を 不可能を可能にした「天空の光庭」という発想

東京都新宿区 / 新宿の家 -隙間の光明-

もともとこの地にあった2階建ての古い家を取り壊し、建て替えたいと思っていたOさん。建て替えの条件は、以前の家よりも床面積を大きくできる3階建て、できるだけ自然光を取り入れられること、そしてもちろん、それを限られた予算内で実現すること。

この条件を、数件のハウスメーカーに相談したところ「土地が狭くて難しい」「2階建てにしかできない」「予算的に厳しい」と、Oさんが思い描いていた家ができないという現実に直面したという。

「諦めざるを得ないのか?」「無理なのか?」と悩む中「建築家であればなんとかしてくれるかもしれない」との思いを持ち、知人を介してたどり着いたのが、キトキノアーキテクチャの小林さんだった。

わずか建坪9坪の狭小住宅とは思えない 光と風、そして広さを感じられる住まい

東京都品川区 / 中延の家

「そもそも、狭い土地や制約がある土地に家を建てる場合こそ、その分野に詳しく経験が豊富な建築家に依頼すべきだと私は考えています」。

「一般的な間取りでプランを考えると、どうしても諦めなければならないことや、我慢しなければならないことが出てきます。しかし経験が豊富な建築家であれば、その土地が持つ制約や周辺環境をよく調べ、諦めや我慢が少なくてより快適なプランを作ることができると思います」。

「狭小」のイメージを覆すのびやかさ。華やぐ都市で、天に向かって踊る家

東京都渋谷区 / 神宮前の踊居

小さいけれど、何かが好ましくて人目を引く建物というのがある。建築家の蘆田暢人さんが設計した東京・渋谷区の『神宮前の踊居』は、まさにそんなたぐいの住宅だ。

作品名の読みは、踊る居と書いて「ようきょ」。地下1階、地上3階のこの家は正面が曲面ガラスで仕上げられ、ガラス越しにはなめらかな弧を描くらせん階段が見える。くるくると天に向かう階段はまさに踊るような躍動感にあふれ、建物に囲まれたコンパクトな家なのに、思わず目を奪われてしまう。

うなぎの寝床の敷地がこんなにも明るく 家族もペットもそれぞれが心地よい2世帯

大阪府大阪市 / 天王寺の家

そんな街の一角に施主のNさんの奥様の実家はあった。江戸時代には寺町・武家屋敷が広がっていたこのあたりは、いわゆる「うなぎの寝床」の家が点在する。「うなぎの寝床」は、京都や大阪に多くみられる、間口が狭く奥行きが長い敷地の土地のこと。かつて間口の広さで税金を課したことに対応して生まれたという。

この家は三方を建物に囲まれ、隣家とは人が通る隙間すらないほど密接していた。そのためほぼ陽が入らず、日中でも電気をつけて過ごすような生活だったという。また、建物自体も経年劣化し、雨漏りすることもある状態だった。

自然素材が心地いいナチュラル空間。 災害対策も万全な、敷地13坪の狭小住宅

東京都 / Kさんの家

K邸の計画にはハードルもあった。立地は3方向を隣家に囲まれた東京・葛飾区内の住宅地。良好な採光を望めない上、敷地は約13坪とかなりコンパクトだ。

この条件下で最も意識したことは「閉塞感、圧迫感がない家にすることでした」と藤田さん。その言葉通り、完成した住宅は「日当たりの厳しさ」「狭小地」という2つのハードルを見事に乗り越えている。

狭小でも明るくほっこり 1階と2階が緩やかにつながる家

東京都小金井市 / O邸

深い庇に切り取られた豊かな緑が美しい広々バルコニー。木のぬくもりを感じる開放感抜群のリビング。狭小地であることを感じさせない、居心地の良い住宅を設計したのは、ESPAD環境建築研究所の藤江保高さん。狭小・ローコストという難題をクリアし、家族4人が快適に暮らせる住まいの秘密に迫る。