KLASICでは、住宅だけでなく建築家が手掛けた「宿泊施設」や「商業施設」、「オフィス」「飲食店」「集合住宅」など、様々な事例を掲載しています。
今回、それらの事業空間(施設)をまとめて、特集にしました。

建築にかけられる予算的な条件のほか、投資に対する利回りやターゲット設定、地域とのかかわり方など、住宅とは全く異なる条件や要望に応えながら、空間づくりをしていくストーリーをぜひ、お楽しみください。

土間付き空間で周辺物件と差別化 収益×住み心地を両立させた洗練の集合住宅

東京都 / 目黒の集合住宅

今回のプロジェクトで選ばれた土地は、センスのいいインテリアショップやレストランが集う目黒通りからほど近い閑静な住宅街。都会的な暮らしを送るカップルや単身者をターゲットに、地上3階・地下1階、1LDKを中心とした全23戸の集合住宅がつくられた。

松浦さんたちが手がける集合住宅は、築年数を経ても家賃を高く維持でき、オーナー目線で魅力的な実績を持つ。その理由は「エリア特性を踏まえたターゲット設定」「ライフスタイルを的確にイメージした住みやすさ、デザイン性の高さ」といった要素で、周辺物件としっかり差別化していることにある。

“視線をコントロールする壁”が創り出す すべての場所で違う景色を楽しめる空間

大分県由布市 / 湯布高原のVILLA

この物件を設計したのは、杉田吉田アーキテクツ 一級建築士事務所の吉田さんだ。

同社は個人の住宅や店舗をおもに手がけているが、今回の依頼は企業所有の大型保養所だ。お施主様からの要望は少なく、部屋数の確保や外壁に赤茶のレンガタイルを使用すること、トレーニングルームの設置くらい。基本的にプラン構成や外観デザインはお任せだった。

さっそく現地調査を実施した吉田さんは、基本的なコンセプトがすぐに固まったそうだ。

「とてもすばらしい景観を、最大限に楽しめる空間にしたいと考えました。眼下に由布院の街が見え、くじゅう連山や由布岳を望むことができる立地を活かすことが一番重要だと感じたのです」。

ここだから住みたい、ずっと住みたい 永く愛され地域と共に歩む集合住宅

京都府向日市 / つづき屋根の集合住宅

京都市の隣に位置し西日本で一番面積の小さい市、向日市。京都市の中心地まで約10分、大阪までも30分という立地にありながらも、都会と田舎の良さを併せ持つ住宅地の線路沿いに、その建物はある。

全長80mにもなるコンクリート打ちっぱなしの建物は、ずっと以前からここに存在していた何かの施設のようにも感じるが、これは新築の集合住宅だ。
この建物をつくったのは、大阪に事務所を置き関西を中心に、戸建てや集合住宅、店舗やオフィスなど幅広く手掛ける建築家、アリアナ建築設計事務所の三野さん。

木の温もりと、無数の石州瓦が美しい道の駅 地域の魅力が詰まった「ごいせ仁摩」

島根県大田市 / ごいせ仁摩(道の駅)

山陰道の仁摩・石見銀山ICは、世界遺産の石見銀山に最も近い高速出口。この出口を下りて少し車を走らせると、瓦屋根が美しいおおらかな建物が見えてくる。島根県中央部に位置する大田市の道の駅、「ごいせ仁摩」だ。

「ごいせ」とは、この地域の言葉で「いらっしゃいませ」の意味。石見銀山の玄関口という立地にふさわしい名を持つ「ごいせ仁摩」の建物は、建築家の安藤大輔さんが代表を務める安藤建築設計室と飴屋工房の共同設計でつくられた。

「ごいせ仁摩」は観光および地域の文化発信の拠点であると同時に、地場の特産品の利用促進・技術活用のモデル事業としての役割も担っていた。そこで発注者の大田市は、プロジェクトに対して主に次の3つの要望を持っていた。

古い空き店舗が建築の力でみんなの居場所に 社会課題の解決に繋がるリノベーション

東京都新宿区

新宿区牛込柳町。日本有数の大都会新宿と同じ区内とは思えないほど、都会の喧騒とはかけ離れた閑静な住宅地の一角にその建物はある。
看板は古いクリーニング店となっているが、中の様子はカフェのような不思議な建物。脇にある可愛らしい表札には「みちくさくらす」という文字が。

ここは、さまざまな使い方ができる複合施設。カフェのような1階には、大きなキッチンが備えられており、カフェとして営業することもあるし、レンタルキッチンとして貸し出され、料理教室やパーティーなどに使われる。2階は大きな机がある空間。習い事やワークショップ、会議やイベントの場であるとともに、並木さんのオフィスでもあるのだという。