京都・大阪・兵庫に、事務所を構えている建築家に特化した特集です。
該当エリアでお住まいを建てられるご予定がある方々は、ぜひご活用ください。
制約があっても、“あたりまえをあきらめない”
設計の力で、あたりまえを実現した邸宅
大阪府豊中市 / 刀根山の家
大阪府豊中市に建てられた『刀根山の家』は、竹本卓也建築研究所の竹本卓也さんの自邸である。
お子様が小学校に進学する時期を見据えて、土地探しからのスタート。約半年をかけて、周辺環境や駅からの距離、予算などの希望にかなう土地と出会うことができた。
しかし、その土地にはいくつかの制約があった。
・23.2坪の狭小地
・東西に細長い土地形状
・北側からの高度斜線の制限
・東側隣地と1.4mの高低差
特に問題となったのは、高度斜線の制限だ。
高度斜線の制限により、標準的な階高設定では2階の天井高を確保できない。ただでさえ狭小地であるのに、一般的な設計手法では生活に必要なスペースを十分に確保することが難しい。
このような間口や建坪、斜線の制限のある土地にあっても、過不足のない家を設計の力で実現したのが “刀根山の家” である。
親世帯と子世帯、それぞれの希望を叶えた
完全に独立した家が並ぶ2世帯住宅
京都府京都市 / 京の2世帯住宅
家の建て替えにあたり、敷地も十分な広さがあったことから新しい家は2世帯住宅としたいとお考えだったお施主さま。お父さまお母さま、お嬢さまが暮らす親世帯の家と、息子さま家族が暮らす子世帯の家を、それぞれ独立した2階建てにしたいとお望みだった。
この「京の2世帯住宅」を設計した傳寶慶子建築研究所の傳寶慶子さんはまず、東西に長い敷地の東側に親世帯、西側に子世帯を配置しようと考えた。しかし、ただ横並びにするとそれぞれの家が邪魔をして光や風が家の中を通らなくなってしまう。そこで、2つの世帯を南北にずらすことにしたのだという。
前面である南側に出ているのは親世帯だ。子世帯と接しているのは西側の壁面だが、ずれを利用して窓を計画し、東西にも風が抜けるようにした。逆に子世帯は、家の奥に当たる北側に親世帯の壁が切れる部分があり、そこからの光や風を取り入れている。
家族が1つになる、1人にもなれる家
「ズレ」によってできる家族の「新たな間合い」
京都府与謝郡与謝野町 / マルハウス
都府の北部の町、与謝郡与謝野町。高級織物「丹後ちりめん」が隆盛を極めたころの歴史的建造物が残る「ちりめん街道」のほど近く、瓦屋根の古い家と住宅メーカーによる新しい家が織り交じりながらも、どこか懐かしさを感じる街並みに、「マルハウス」と名付けられたその家はある。
夫婦と子供3人が住むM邸だ。地元出身のMさんが家を建てようと土地を入手し、最初に家づくりを依頼したのはハウスメーカーだった。しかし、ハウスメーカーでの家づくりは途中で行き詰まったという。
家づくりの計画が具体化する何年も前から「子供たちにとっても良い環境の家にしたい」と、家づくりに強い思いを持っていた奥様の数々の要望は、ハウスメーカーでは「実現が難しい」「費用的に厳しい」ものだったのだ。
周囲を家や擁壁で囲まれた土地で
屋根をかけた中庭から光を取り込む
奈良県生駒市 / 生駒の家
奈良県の北西部に位置する緑豊かな住宅都市生駒市。長年、大阪のベッドタウンとして発展を続けてきた生駒市は、平坦な土地が少なく、傾斜地にも数多くの家が立ち並んでいるのが特徴だ。そんな街に、安部さんが手掛けたM邸がある。
お子さんの小学校入学を機に、奥様のご実家近くへの移住を決断されたM様ご家族。見つけた土地は、南側は3mほど、西側は1mほど高くなった傾斜地。目の前には緩やかな坂道があり、隣家に囲まれ、さらに裏側には擁壁がそびえるという囲まれた土地で、採光や眺望に恵まれた場所ではなかったという。
この土地を見た安部さんは「サイドから光を取り込むのは難しい。中庭型にして上から光を取り込むしかないだろうな」と感じたという。
変形敷地だからこそできた空間の広がり。 和の魅力が伝わる、重厚感のある家
兵庫県伊丹市 / 野間の家
自宅の建て替えを決断し、建築家を探していたMさま夫妻。傳寶慶子建築研究所を見つけたのは、インターネット上、傳寶さんのホームページだった。イメージにぴったり合った外観を持つ家の作例が掲載されていたのだそうだ。
ヒアリングでイメージを掘り下げると、「重厚感があり、和の良さを随所に取り入れながらもモダンでかっこいい家」という全体像が見えてきた。そこで、この「野間の家」は、室内の木はすべて古色仕上げとし、柱や梁は全体的に太くして重厚感を表現した。塗装を施すことで木目が際立ち、美しさ、力強さをより感じることができる。
屋根も重厚なイメージに合わせ、瓦棒葺きを選択した。近年は屋根材のみを繋いでいく立平葺きが一般的だが、それではジョイントの凸部が細く、雰囲気が合わないのだという。瓦棒葺きはジョイントに垂木を使用するため、凸部が太く、どっしりとした印象が得られる。ぱたぱたとはめ込むだけで作業が終了する立平葺きと違い、特殊な器具を使用して固定する必要があり、手間も数倍かかり大変だったというが「職人さんたちは昔ながらのやり方に、職人魂に火がついたように黙々と、楽しそうに作業を続けていました」と傳寶さんは語る。
⼤きな窓がとれなくてもこんなに明るい
「ズラし」が⽣んだ効果とは
⼤阪府岸和⽥市 / 春⽊の家
施主のTさんと安部さんとのご縁は、数年前にTさんのご実家の建て替えを安部さんが手掛けたことが始まり。Tさんは、安部さんの設計・デザイン力、実家の住み心地、さらには安部さんの仕事ぶりを高く評価していたのだろう。
「ご両親のお家をとても気に入っていただいたようで、『自分達の家もお願いしたい』とのご依頼でした」と安部さん。
実家と同じテイストの家を希望されているのかと思いきや、Tさんからのリクエストは「両親の家とは違った、自分達らしい家」「皆が驚くような、変わった建物にしてほしい」ということだった。希望のテイストは違ったとしても、これまで多彩な住宅を手掛けてきた安部さんならば、自分達の期待に応えた家を作ってくれるだろうと思ったに違いない。
静かな中庭と明石海峡
つの景色を望む家
兵庫県淡路市 / 二つの景色が望める家
兵庫県、淡路島の緑深い山間の高台、海を望む絶好のロケーションに誕生したO邸。こちらに住むのは、40代のOさんご夫婦と、お子様、そしてご高齢のお母様の4人家族だ。
この家が建つ土地は、北側が絶壁。購入すべきか最終判断に迷っていたとき、知人の紹介で出会ったのが、ef設計の木下太さんだった。木下さんとも相談のうえ、Oさんは土地の購入を決め、いよいよ家づくりがスタートすることとなる。
「Oさんは最初から希望が明確でした」と当時を振り返る木下さん。打合せの場でOさんが最初に口にしたのは、「日本庭園で有名な足立美術館のような庭のある家を建てて欲しい」。という言葉だった。
ここで、嬉しい偶然が発覚する。実は木下さんは、足立美術館がある、島根県安来市の出身だったのだ。もちろん足立美術館にもよく足を運んでいたため、2人はすっかり意気投合。話も大いに盛り上がったのだという。