梁などの構造材をあえて露出「現しの家」_VOL.3

お家を垂直方向に支える「柱」、水平方向に支える「梁」など構造材をあえて露出する、そんなデザインが今、話題に。
柱や梁を露出することで、天井高が上がり、より開放的な空間に。
また、ハイサイドライトが取り込め、より明るい空間に仕上げることも可能。
さらには、インテリアデザインの幅も広がり、日々の暮らしにより一層、彩(いろどり)をもたらしてくれます。
今回は、そんな多様性に富んだ「現(あらわ)しのある家」をご紹介いたします。
ぜひみなさまの住まいづくりの参考にしてください。

おうち時間を便利に、豊かに。 家族が憩うリゾートヴィラ風の住まい

東京都文京区 / S邸

3110ARCHITECTS一級建築士事務所の齋藤文子さんが設計したS邸は、自然豊かな庭園、大学、運動場などに囲まれた、都心の閑静な住宅街に立つ。施主のSさまは、ご夫妻とお子さま2人の4人家族。どこに行くにもアクセスがよく、子育てに適した静かで緑も多い環境を気に入って、この地に家を建てることにした。

完成したS邸は地下1階+地上2階建ての3層構造。最上階の2階をまるごと使ったLDKに入ると、一瞬にして、ここが東京の住宅街であることを忘れてしまいそうになる。

まず目を奪われるのが、屋根の垂木を現し(あらわし)にした開放的な山型天井。シックなウォルナット材を使ったダイニングの床は一段高くなっており、食事の時間が華やぐ特別感を演出する。一方、リビングは緑が広がる大きな窓に3方を囲まれ、屋外にいるような心地よさ。その先には青空と緑を望むテラスもある。

古色仕上げの木、そとん壁、瓦棒葺き 手仕事によって生まれた重厚感

兵庫県伊丹市 / 野間の家

自宅の建て替えを決断し、建築家を探していたMさま夫妻。傳寶慶子建築研究所を見つけたのは、インターネット上、傳寶さんのホームページだった。イメージにぴったり合った外観を持つ家の作例が掲載されていたのだそうだ。

ヒアリングでイメージを掘り下げると、「重厚感があり、和の良さを随所に取り入れながらもモダンでかっこいい家」という全体像が見えてきた。そこで、この「野間の家」は、室内の木はすべて古色仕上げとし、柱や梁は全体的に太くして重厚感を表現した。塗装を施すことで木目が際立ち、美しさ、力強さをより感じることができる。

屋根も重厚なイメージに合わせ、瓦棒葺きを選択した。近年は屋根材のみを繋いでいく立平葺きが一般的だが、それではジョイントの凸部が細く、雰囲気が合わないのだという。瓦棒葺きはジョイントに垂木を使用するため、凸部が太く、どっしりとした印象が得られる。ぱたぱたとはめ込むだけで作業が終了する立平葺きと違い、特殊な器具を使用して固定する必要があり、手間も数倍かかり大変だったというが「職人さんたちは昔ながらのやり方に、職人魂に火がついたように黙々と、楽しそうに作業を続けていました」と傳寶さんは語る。

眺望も明るさも! 無柱の開放空間をかなえた“キール”とは?

神奈川県横浜市 / Y邸

横浜市の高台に立つY邸は、開放的でとても爽快な住まいだ。テラスに向けて大きく取った窓からは空中で街並みを見下ろすような景色を楽しめて、晴れた日は富士山も見える。

絶景を望む大開口はリビングに設けられており、リビングから一段上がったところには、キッチン&ダイニングと書斎がある。これらのスペースは大きなワンルームになっていて一体感があるうえ、どこにいてものびやかな景色が見えて気持ちがいい。しかし開放感の理由は、空間の広さや眺望だけにあるのではない。多くの場合、木造でこれだけ大きなワンルームをつくるとどこかに支えの柱が必要だが、この空間は驚くことに無柱。柱がない分、より広々としたおおらかさを感じられるのだ。

理屈を超えた提案で実現した魅力的な佇まい 地域に愛される、鍼灸院を兼ねた住宅

佐賀県鳥栖市 / 萱方の住宅

一軒家を賃貸し、鍼灸院を運営しながら暮らしていたUさま。結婚を機に自宅を新築しようと土地探しを開始。新しい家も鍼灸院と自宅を兼ねた建物にするため、患者さまたちのことも考えて元のお住まいに近い場所にある分譲地を購入された。

当初はハウスメーカーの住宅展示場なども見学に行かれていたというUさまだったが、「複数社のモデルハウスなどを見るにつれ、情報の多さに混乱されてしまったようです」と話すのは、この家を設計した山口修建築設計事務所の山口修さん。悩んでいらしたときに少年野球の後輩である山口さんが開業したことを知り、ご相談くださったのだという。

制約があっても、“あたりまえをあきらめない” 設計の力で、あたりまえを実現した邸宅

大阪府豊中市 / 刀根山の家

高度斜線の制限により、標準的な階高設定では2階の天井高を確保できない。ただでさえ狭小地であるのに、一般的な設計手法では生活に必要なスペースを十分に確保することが難しい。
このような間口や建坪、斜線の制限のある土地にあっても、過不足のない家を設計の力で実現したのが “刀根山の家” である。

竹本さんは、こう語る。
「狭小地だからという理由で、水回りや収納など、何かをあきらめるというケースが往々にしてあります。確かに“普通”の設計をした場合、優先順位をつけて妥協することも必要です。しかし、設計の力で解決できることはたくさんあります。あきらめがちなものを、すぐさまあきらめる必要はないのです」。

すぐ隣の母屋と庭を共有。視界いっぱいに 緑を取り込む大開口を実現した「斜めの軸」

福岡県太宰府市 / 太宰府の家

平野公平建築設計事務所の平野公平さんが設計した「大宰府の家」は、リビングから見える贅沢な庭の風景が魅力的な、開放感たっぷりの家だ。四季折々の美しさを見せる庭は奥行きがあり、誘われるように外へ出て散策するのも楽しそうだ。

外から見るとこの家がどんな条件の上に建っているのかがわかり、また驚いてしまう。同じ敷地内、すぐ隣にもう1軒家があるのだ。隣の家は施主であるSさま家族のご主人の実家で、当時、将来Sさまが家を建てることを考慮し敷地内で家の配置を決めたという。庭もそのときに計画され、ご主人が小さいころには駆け回って遊んでいたとのこと。