「暖炉のある家」特集

幻想的にゆらめく暖炉の火。大切な人と暖炉を囲む幸せなひととき。
家全体をやさしく暖めてくれるという機能面だけでなく、そこあるだけで「豊かな生活」を演出してくれる「暖炉」に憧れる人も多いのではないでしょうか。
ここでは、暖炉の魅力に建築家の経験豊かなアイデアをプラスした実例記事をご紹介いたします。

憧れの「暖炉のある家特集」を、ぜひみなさまの住まいづくりの参考にしてください。

緑あふれるテラスとLDKが1つになる。 家族の憩いを楽しむリゾート風邸宅

東京都世田谷区 / Garden House

Nさまはご夫妻とお子さま2人の4人家族。お子さまが成長し、「家族で楽しむ」ということができるようになったタイミングで、東京・世田谷に賃貸併用住宅を建てる計画をスタートさせた。

海外生活経験のあるNさまは日々の暮らしを満喫する現地の人々を見て、自分たちも気持ちのよい空間で生活を楽しみたいと思うようになったという。そこで、施工会社に「開放的なリゾート風住宅をつくりたい」と相談したところ、「それなら設計はこの建築事務所しかない」と紹介されたのが、desus(デサス)建築設計事務所(以下desus)の稲垣裕行さんと花形将壽さんだった。

上質なモダン建築がもたらす極上の時間。 都心に佇む羨望の高級邸宅

東京都品川区 / F.R.邸

「このお宅は地下1階、地上3階建て。リビングは1階のほか、2階にお子さまたちのラウンジ、3階にご夫妻専用のラウンジ、地下にファミリーラウンジがあります」と教えてくれたのは、設計を担当したJWA建築・都市設計一級建築士事務所の渡辺純さん。1階リビング以外に家族用のラウンジが3つもあるとは驚いてしまうが、外国人の施主さまはホームパーティーをよく楽しまれるため、1階は来客を意識してつくられたのだという。

その1階リビング・ダイニングは、広いテラスを囲むL字型。どちらにいても屋外のような開放感を得られる気持ちのよい空間だ。間接照明がホテルライクな雰囲気を醸すダイニングにはガス暖炉があり、炎を眺めながら歓談する穏やかな時間を演出。ウォークインのワインセラーを備えたバーカウンターやキッチンは、リビング・ダイニングと行き来しやすく、ゲストが自分でドリンクを取りに行く欧米のパーティースタイルにぴったりのレイアウトとなっている

つくるのは、住まいではなく暮らし 今見直される、これからの暮らしのカタチ

埼玉県所沢市 / 通庭が楽しい家

玄関の引き戸を開き邸内へと入ると、そこは和の雰囲気に包まれながらも洋の暮らしができるスペースだった。LDKまで連なる大谷石の土間、きめ細やかで白さひきたつ漆喰壁、柔らかく温もりある杉の床で構成されたスッキリとした佇まいが、まるで小さな旅館を訪れたかのような気分にさせてくれる。
大きな掃き出し窓を開くと、広いテラスが現れる。吹き抜けの天井と相まって、とても開放的な空間に早変わり。庭の緑、そよぐ風、鳥や虫のさえずりなど、自然の中にいるという実感が湧いてくる。大谷石の土間が玄関からLDK、テラスまで連なるのは、民家の通庭(とおりにわ)のように、ご近所さんが集う開かれた場所にしたかったそうだ。

振り返ると、そこに鎮座しているのは、薪ストーブ。薪ストーブは、ただ空気を温めるだけの暖房器具ではない。「薪ストーブは、三度からだを暖める」という言葉がある。まず一度目は、薪割りの時。自らの手で薪割りをすることで、無心になれストレスの解消にもなる。二度目はストーブとして体や部屋を暖めるとき。そして三度目は、ストーブ料理を味わうとき。
「冬になると、ご近所さんをお招きして薪ストーブ料理を一緒に味わうのが恒例になっています」と増木さん。
さらには、薪が燃えるときの炎のゆらめき、爆ぜる音、薪の香りが、心まで暖めてくれる。

どんな季節でも、雨の日でも。 閉塞感なく暮らせる、通り土間がある家

新潟県 / H邸

南北に伸びる通り土間は、いわば横のライン。それに結びつけるように、家の中心に吹き抜けを設けて縦のラインをつくった。縦と横のラインがクロスする構成により、土間に置かれたペレットストーブが生きてくる。ストーブによる暖気は土間中に広がるだけでなく、縦のラインを通って上に上がる。吹き抜けのほかにも1階と2階が繋がる場所を3か所つくることで空気が循環し、サーキュレーションなどを付けなくても2階の隅々まで充分に暖まる。冬はペレットストーブ1台で家中を暖めることができ、真冬でも1階と2階の温度差はほぼないというのだから驚きだ。

暖気が上昇する吹き抜けの2階部分に沿って物干しを設置したことにも、意外な理由があった。冬はもちろん夏も洗濯物はすぐ乾くという。同時にその乾燥時の水分蒸発を利用して家中を加湿でき、一石二鳥のメリットが生まれた。「最近の建物は室内が乾燥しがちなのですが、ちょうどいい自然の加湿器になります」と堀井さんは言う。

のどかな景色と家族の居場所が1つになる、 通り土間のある家

千葉県野田市 / S邸

プランに対するSさまの要望は、「北海道を舞台にした、とある映画に出てくるカフェのような家にしたい」というもの。そのカフェは薪ストーブのある木のぬくもりにあふれた空間で、大きなガラス窓越しに雄大な自然を一望できる。

S邸の敷地も、南に隣家がなく緑が広がる好条件に恵まれていた。そこで小嶋さんは、1階の南側に薪ストーブのあるダイニングやリビングを配し、南に大開口を設けた住まいを提案。1階北はキッチンや水まわり、寝室などのプライベートゾーンは2階とした。

これだけならよくある理想的な間取りのように思えるが、小嶋さんは「土間がほしい」というSさまのもう1つのリクエストにも応え、大きな通り土間をプランニング。この通り土間が、暮らしを豊かにする開放感と心地よさを生み出すこととなる。

施主の想いを理想的な形にした、自然とともに暮らす家

岐阜県中津川市 / S邸

施主の要望のコア部分は「この土地と自然が大好きで、自然とマッチする山荘風の家を建てたい」というもの。持参された完成スケッチもこぢんまりとした山荘風の建物だった。聞けば吉村順三が好きだ、とも。
「自分も吉村順三氏の作品が好きでしたので一気に意気投合。基本的に目指している方向は同じで、感性も似ているということを確認できました。自然に敬意をはらい、見栄を張らず、簡素で美しい建築。その時の感情に流されることなく、永く愛される建築を目指しました」と宮崎さんは語る。目指している方向はただひとつ「いい家をつくりたい」ということだ。