ハウスメーカーや工務店では引き受けてもらえないことすらある「変形敷地」や「旗竿地の土地」。そんな難度の高い案件でこそ、力を発揮するのが建築事務所。この特集では、そんな「変形敷地」や「旗竿地の土地」に、施主の想いと希望をカタチにした住まいを紹介します。間取り図もあわせて見ていただき、ぜひご自身の家づくりの参考にしてください。
建物を雁行に配置することで
ひし形の土地を有効的に使用
福島県福島市 / かみてつのいえ
さっそくOさんと共に土地探しを始めた清さん。建築会社の紹介で見つけたのが、今O邸が建つ、ひし形の土地だった。
「店舗併用住宅で、かつ独立性の高い子ども部屋を要望されていたこともあり、大きくなる1階のボリュームを、うまくひし形の土地に収める必要がありました」。
と振り返る清さん。
土地の形を活かしながら有効に使うべく、建物を雁行に配置。また、建物を中央に配置せず奥に寄せることで、要望があった客用3台分と、自家用車3台分(+東側に予備として縦列1台分)の駐車場スペースも確保することに成功した。
また、「店舗は店舗、住宅部分は住宅部分と認識しやすいよう、店舗部分は平屋建ての下屋として独立性を持たせ、住居部分は親世帯を1階に、子世帯を2階に配置する2階建の計画を基本としました」。と語る清さん。こうして、現在のO邸の形がある程度定まってくることとなる。
眺望も心地よさもかなえる新発想。「斜めの空間」の魅力とは?
神奈川県横浜市 / K邸
施主のKさまが横浜市内の高台にあるこの土地を選んだ理由は「眺めの良さ」。街を俯瞰するような広がりのある景色が気に入り、購入を決めたという。
土地探しで協力を得た不動産会社の紹介で設計を担当することになったのは、イノウエヨシムラシタジオ(IYs.inc)の井上亮さんと吉村明さん。洗練されたユニークなデザインと暮らしやすさを両立した家づくりに定評のある2人だ。
Kさまの主な要望は、(1)高台からの眺望を活かす (2)開放的な空間だけでなく、こもった感じの床座のリビングもつくる (3)シンプルでありながらオリジ
変形敷地だからこそ。建築家によるプランニングで理想の間取りを実現
東京都品川区 / K邸
「変形敷地」と呼ばれる整った四角形でない敷地の場合でも、大手ハウスメーカーでは家が持つそれぞれの角が90度になるよう設計されることがほとんど。そのため敷地を生かしきれず無駄なスペースが生まれてしまうのだそうだ。
「設計事務所なら対応ができるんです」と上原さんが設計した家の外形は、扁平な台形の敷地形状をそのまま生かしたもの。その中に必要な機能を当てはめていき、見事に希望する間取りを入れ込んだ。その手腕に施主様ご夫妻も「こんな設計ができるんですね」と驚かれたという。
特徴的なのはリビングだ。生活の中心となる部屋は、家の高さ的にも方向的にも真ん中に置く、というセオリー通りならば2階にあるはずのLDK。それを3階に配置したのは、施主様ご夫妻のLDKを一番大事にしたいという思いからだった。
居場所を見つけるのが楽しくなる 心地よさが詰まった自然体の住まい
東京都杉並区 / K邸
緑が茂る長いアプローチを通り抜けるとモミジに彩られた庭が現れ、庭を囲むように白い家が立っている。雑多な都会を隔絶する清々しい自然が迎えてくれるこの家は、建築家の熊澤安子さんの自宅兼アトリエだ。道路から20mほど奥まった旗竿地ゆえ電柱などが視界に入らず、空や緑の明るさをダイレクトに感じられ、瞬時に心がやわらいでいく。
邸内は1階に熊澤さんの仕事のアトリエ、キッチン、リビング&ダイニングがあり、主寝室や水まわりは2階に集められている。1階がパブリック、2階がプライベートという空間構成だが、各室の設計でこだわったのは「居場所をたくさんつくる」ことだった。
旗竿地でも陽光の中でくつろげる眺望抜群のLDK。その秘策は?
東京都小平市 / K邸
建築家の日部(かべ)友裕さんが自邸を建てたのは、周囲を建物に囲まれた21坪の旗竿地。「自分の家だからこそ、あえて狭小×旗竿というハードルの高い土地を選んでみました」。完成した住まいは陽光たっぷり、明るく開放的で眺望も抜群。旗竿地とは思えないのびやかな空間は、いったいどんな工夫で生まれたのだろうか。
すごいのはここからだ。完成した住まいは地下1階、地上2階建て。といってもプロならではの秘策ともいえる工夫があり、1階は玄関から半階上がり、地階は玄関から半階下がるスキップフロア。この造りで2階のLDKは近隣住宅の2階よりも半階分ほど高い位置になり、採光も眺望もいちだんとアップ。さらに、隣家と窓の高さがズレるため、外部の視線が気になりにくいというメリットも。スキップフロアは「面白い!おしゃれ!」などという無邪気な感想を軽く飛び越え、明るく開放的な空間づくりに大きく貢献しているのだ。
それぞれの場所に役割り!賑やかな街のような家には人が集まる
岐阜県多治見市 / T邸
広い庭をつくるには課題があった。駐車場の位置だ。渡辺さんは「郊外の広い土地でしたが、旗竿敷地だったんです。入り口は狭いけども奥は17メートル四方の広さがありました」と、説明する。
「狭い”旗”の部分にも駐車はできますが、そうすると建物以上に駐車場の存在感が出てしまう。バックで入ってきて突き当たりに置く案もありましたが、奥さまは運転に自信がないと。車なしでは生活できない地域ですから、最終的に、車が出し入れしやすい広さの駐車場を奥につくることになりました」。
駐車場にスペースがとられてしまうため、残りの部分にどんな建物をつくることが出来るかと、渡辺さんは考えた。浮かんだのは街のイメージだった。建物のかたちをひとつの箱ではなく、いくつかの箱をずらして並べたような形にする。色々なかたちの建物がひしめく街並みのように、大小の箱が並んだような家。広い庭は人々が集まる広場だ。駐車場も街並のひとつと捉えれば、全体の雰囲気にうまく溶け込む。