思い出とモダン建築が融合するやさしい家。
入居者にも愛される賃貸併用住宅

フレイム一級建築士事務所が設計したこの賃貸併用住宅は、都市部にありながら光と風に恵まれた心地よい住まい。思いを込めて建てた家はずっと大切にしたいし、次世代にも大切にしてもらえたら嬉しい──。多くの施主が抱くそんな願いへの答えも隠されている。

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たっぷり光を届ける吹抜け&トップライト。
暮らしの全てが気持ちいい住まい

東京・世田谷の閑静な住宅街の角地に、道行く人の目を引く洒落た建物がある。フレイム一級建築事務所(以下・フレイム)の建築家・小俣忠義さんの自邸兼事務所『1st FRAME』だ。

『1st FRAME』は、小俣さんが生まれ育った旧家屋を建て替えたもの。地下1階+地上3階建ての建物で、一部にテナントや賃貸住宅も備えたRC造のビルである。

外壁はコンクリートと、明るいブラウンで塗装したスギ板張り。堂々たる佇まいだが、少し重ねながら木板を張っていく「鎧張り」ならではの温もりがあり、穏やかな街並みにしっくりと馴染んでいる。

小俣邸は、このビルの2階の一部と3階全体にある。上品な白い大判タイルや強化ガラスを多用した邸内は、木のイメージが強い外観とは打って変わったモダンで都会的な空間だ。

「設計時は都市型住宅の中にいかに光と風を取り入れ、心地よい居場所をつくるかを考えました」と話す小俣さん。その言葉通り、外から見るとルーバーで覆われて閉じた印象なのに、中はとても開放的で明るい。

その秘密は住空間の中央に設けられた開閉式トップライトと吹抜けの階段室。小俣さんはここから入る全ての方位の光が2フロアの邸内全体に届くように計画したのだ。加えて、3階LDKは広々したテラスとの一体感が高く、風通しも抜群。ホテルライクな空間で自然の光や風を感じられ、とても居心地がいい。

2階にある水まわりも、吹抜け&開閉式トップライトの効果で採光、通風ともに良好。円形バスの横にはバスルーム専用のテラスもあり、空を眺めて至福のバスタイムを楽しめる。

「LDKがどんなに素敵でも、水まわりが暗くて狭いと心が寂しくなってしまう気がします。だから僕らの設計は、水まわりを大切にしたものが多いんです」と教えてくれたのは、小俣さんとともにフレイムを運営する建築家の金子有太さん。

フレイムの2人にとって、LDKが心地いいのは当たり前。その上で、毎日必ず使う生活の場の心地よさにもこだわる。そうやって暮らしの満足度を高めることが、彼らの設計の流儀なのだ。
  • 立地は北東角地。1階の一部にテナント、1階と2階の一部に賃貸住戸(メゾネット形式)を備えている

    立地は北東角地。1階の一部にテナント、1階と2階の一部に賃貸住戸(メゾネット形式)を備えている

  • 外壁のスギは板を少しずつ重ねて張っていく鎧張り。重なる部分の影が連続し、独特の表情が生まれる

    外壁のスギは板を少しずつ重ねて張っていく鎧張り。重なる部分の影が連続し、独特の表情が生まれる

  • 小俣邸のエントランス。ゆとりある造りで心が和む。奥のすりガラスのドアの先はビルトインガレージ

    小俣邸のエントランス。ゆとりある造りで心が和む。奥のすりガラスのドアの先はビルトインガレージ

洗練の中に家族の絆とノスタルジー。
ずっと大切にしたくなる家

モダンで洗練された小俣邸だが、バスルームを拝見したとき、あるものの存在に違和感を覚えた。それは、専用テラスの壁に張られたタイル。1つは金魚の絵。もう1つは宇宙の絵。どちらも画風がレトロで、洗練を極めた小俣邸の中では少しちぐはぐな印象を受ける。

だがこのタイルは、新居の建築にあたり小俣さんが最もこだわったものだという。

小俣さんは旧家屋を取り壊して『1st FRAME』を建てるとき、旧家屋に刻まれた家族の思い出を受け継ぎたいと考えた。

それが、この金魚と宇宙のタイル。小俣さんのご両親は地方から東京に来て仕事をがんばり、遂にはこの地に居を構えた。そのとき、お父さまが自らの手で、これらのタイルを浴室に張ったのだという。

小俣さんはいう。「家のデザインテイストと異なるので、遊びにいらした方も『何これ?』と気になるようで、そこから家族の昔話に花が咲いたりするんです。そういう時間が生まれるものがある家は、魂がこもっているような気がします」

実は、旧家屋からこのタイルを取り出すには相当な手間とコストがかかっている。

「それでも、『今は亡き両親の思い出としてこのタイルを残したい』と私が思ったように、どの施主さまも、何かしらの思いをもって家づくりに臨まれます。住宅建築に予算の制約は付き物ですが、施主さまのお気持ちを丁寧にくみ取って、思いを形にするためのコストバランスを熟考するのも私たちの役目だと思っています」と小俣さん。

フレイムの2人はこの家をつくってから、新築でも建て替えでも、住まう人が重ねてきた時間をどこかに反映させる家づくりをいっそう意識するようになったという。ハイレベルな意匠性や快適性をかなえるだけでなく、そこで紡がれる暮らしや人生に愛情を寄せ、具現化してくれる建築家。そんな2人とつくる家は、今も、次世代の家族にとっても最高の宝物になるに違いない。
  • 3階LDK。間接照明、大判の白タイル、脚にアクリルを使った浮遊感のある家具が洗練を極め、高級ホテルの一室を彷彿とさせる。手前のガラス張り部分が開閉式トップライトと吹抜けの階段室。強化ガラスで囲うことで全ての方位の光を通しつつ、吹抜けによる冬の寒さを防いでいる

    3階LDK。間接照明、大判の白タイル、脚にアクリルを使った浮遊感のある家具が洗練を極め、高級ホテルの一室を彷彿とさせる。手前のガラス張り部分が開閉式トップライトと吹抜けの階段室。強化ガラスで囲うことで全ての方位の光を通しつつ、吹抜けによる冬の寒さを防いでいる

  • 3階LDKのリビングスペース。東に設けた広いテラスとの一体感が高く、屋外の心地よさをダイレクトに味わえる。テラスはバス通りに面しているがルーバーで囲われており、採光とプライバシー確保を両立

    3階LDKのリビングスペース。東に設けた広いテラスとの一体感が高く、屋外の心地よさをダイレクトに味わえる。テラスはバス通りに面しているがルーバーで囲われており、採光とプライバシー確保を両立

  • 3階LDKのダイニングからキッチン、リビングを見る。リビングスペースはトップライトのある階段室と東のテラスに囲まれ、明るい光の中でゆったりとくつろげる

    3階LDKのダイニングからキッチン、リビングを見る。リビングスペースはトップライトのある階段室と東のテラスに囲まれ、明るい光の中でゆったりとくつろげる

  • 2階バスルームは寝室に近く、吹抜けを介して3階とのつながりも感じられる配置。「両親を介護した経験から、家族の居場所から孤立しないバスルームにしたいと思いました」と小俣さん。ブロー&ジェット機能付きの円形バスの奥は、家族の思い出を象徴するタイルが張られたテラス

    2階バスルームは寝室に近く、吹抜けを介して3階とのつながりも感じられる配置。「両親を介護した経験から、家族の居場所から孤立しないバスルームにしたいと思いました」と小俣さん。ブロー&ジェット機能付きの円形バスの奥は、家族の思い出を象徴するタイルが張られたテラス

選ばれ続けるデザイナーズ賃貸にも
温かな思いが込められている

『1st FRAME』には、安定収益を実現している賃貸住宅としての顔もある。

ビルの1階一部と2階面積の約半分を占める賃貸住戸(メゾネット形式)は、16年前の竣工以来、ほぼ空室期間がない。さらには、築年数を経ているにもかかわらず高額家賃を維持。その理由は洒落た空間デザインと、入居者の気持ちを的確にイメージした住み心地のよさにある。

まず、内見時に心をつかむのが賃貸住戸への動線だ。賃貸住戸のエントランスは小俣邸のエントランスと全く異なる位置にあり、双方が気兼ねなく生活できる。

しかも、賃貸住戸へのエントランスには外門扉があり、玄関を開けると光あふれる白い階段。この階段をのぼって2階へ向かうプライベート感がある動線も魅力だが、ゆったりとした1LDKの部屋は東のテラスに面し、快適に暮らせそうな明るさと開放感に満ちている。

キッチンはコンロ&シンクと作業台が並列するⅡ型で食洗機付き、お風呂はブローバスと設備のグレードも高く、空間使いにもゆとりがある。そんな住戸が入居者を惹きつけるのは想像に難くなく、内見すれば決まる最強の物件となった。

高額家賃を維持するために贅沢な造りにしたのですか? と尋ねると、「入居者さまに気持ちよく暮らしていただきたいのが一番の理由ですが」と前置きして、小俣さんはこういった。

「もし私が急に倒れて妻が1人になったら、この賃貸住戸に妻が住み、今の自宅を賃貸に出せば妻1人が暮らせるくらいの収入を得られるのでは? と思ったんです。そのときは妻にも快適に暮らして欲しいですから」

家族の歴史を刻み込んだ『1st FRAME』には、家族の未来を慮る深い思いも込められている。
  • 北の道路側にはビルトインガレージが。写真右端は賃貸住戸(メゾネット形式)専用の外門扉。門扉の内側には自転車などを停められるスペースがある。入居者さまのプライバシーに配慮し、小俣邸と全く異なる動線で部屋まで行けるようにした

    北の道路側にはビルトインガレージが。写真右端は賃貸住戸(メゾネット形式)専用の外門扉。門扉の内側には自転車などを停められるスペースがある。入居者さまのプライバシーに配慮し、小俣邸と全く異なる動線で部屋まで行けるようにした

  • 玄関を開けると賃貸住戸2階への室内階段。階段上部にはトップライトがあり、南側の明るい光が落ちてくる

    玄関を開けると賃貸住戸2階への室内階段。階段上部にはトップライトがあり、南側の明るい光が落ちてくる

  • 2階への階段を上がったところ。上部にはトップライトがあり、室内階段も明るい。賃貸住戸専用の門扉やこの室内階段は入居者さましか使わないため、戸建てのようなプライベート感がある

    2階への階段を上がったところ。上部にはトップライトがあり、室内階段も明るい。賃貸住戸専用の門扉やこの室内階段は入居者さましか使わないため、戸建てのようなプライベート感がある

  • 賃貸住戸2階のキッチンも、トーヨーキッチン。壁付のIHコンロ&シンクとアイランドタイプの作業台が並列したⅡ型で、行き止まり感がなく賃貸とは思えないゆとりがある

    賃貸住戸2階のキッチンも、トーヨーキッチン。壁付のIHコンロ&シンクとアイランドタイプの作業台が並列したⅡ型で、行き止まり感がなく賃貸とは思えないゆとりがある

基本データ

作品名
1st FRAME
施主
O邸
所在地
東京都世田谷区
家族構成
夫婦+子供1人
敷地面積
180.44㎡
延床面積
420.47㎡
予 算
1億円台