兵庫県中央付近の田園風景広がるのどかな地域に建つ住宅。
約250坪という広大な敷地に建てるにあたり、建物の配置には無数の可能性があるため、建物の建たない空地部分をどのように工夫しようかと思いめぐらした。
南北に細長い敷地から建物の南と北に二つの庭をつくり、通り土間でつなぐ。LDKにも大きな窓を対称に設けて庭とつなぐ。二つの庭を建物で分断するのでなく、LDKを通してつなげることで見通しが効き、家族の気配をどこにいても感じることができる。
南側は大きな庇と板塀で囲む、プライバシーの確保された庭となっているのに対して、北側は一面に芝生のひろがる開放的な空間で、一部に家庭菜園も作った。
玄関を入ると、自立したRC打ち放しの壁が出迎える。通り土間としての直線的な空間でありながら、上部の隙間から差し込んだ光がガラスを通してLDKまで行き渡る、横への広がりも併せ持つエントランスとなっている。
梁や天井の木目が美しい広々としたLDKには、アイランドキッチンや薪ストーブ、パースの効いた大階段といったエレメントが空間を彩っている。
階段の幅を斜めに変化させたことにより、段板に座って本を楽しむ読書スペースとしてリビングの一部となるとともに、2階の廊下が広がることで子供達の勉強スペースとして利用できる空間が生まれた。
断面構成をステップフロアにすることにより、リビングやフリースペースの高い天井高さと、玄関から綺麗な山並みが拝めるバルコニーまで流れるような連続した空間のシークエンスを楽しむことができる。
スタイリッシュな建物でありながら、のどかな風景とも調和しており、穏やかに時を刻む素敵な住まいが完成した。
撮影:太田 拓実