住宅の中にできるだけ大きな空間を作る。その単純な操作で自然現象のような、当たり前でありコントロールできない何かを取り込めないかと考えた。施主は夫婦と子供2人。求められたのはミニマルである事、そしてできるだけ外に開かないという事だった。コストから逆算されたボリューム内で、いかに洗練し、いかに開くかが課題となった。ボリュームの半分を占める大きな空間は窓辺が明るく、奥には影が生じる。夜は照明が下半を照らし、照明の無い天井には闇が広がる。中空を横断する照明は構造的には梁であり、照明に擬態したC-75×40によって東面の壁厚を薄く維持し軽さ生み出した。軽く、目地割まで完全にコントロールされた室内空間にゆらぎのようにコントロールできない要素が侵入してくる。また、窓から910mm内側に、天井から910mm下がった位置に大きな布を吊るす事で開く事と開かない事とを両立した。サンルームのような窓と布との隙間は、内部からあるいは外部からの緩衝地帯となり、大きな開口でありながら内部と外部を緩やかに繋ぐ。壁内に収納されたような各室はその擬似的自然環境に開いていく。それらは決して大きくない住宅の中に深い奥行きを生み出している。
撮影:中山保寛/中山保寛写真事務所