敷地は住宅地の奥まった一角にあります。周辺は昔ながらの露地を残した下町ですが、近年は徐々に新しい家々に建て変わりつつあり、今と昔が融合した雰囲気の町並みとなっています。
そんな敷地に、木造2階建て・建築面積18坪・延べ床面積32坪の家を提案しました。プランニングの過程でもっとも意識したのは、坂の町・神戸の特徴である高低差をいかに解決するかということ。また、この敷地は、北と南が道路に面している珍しい敷地でもあります。この難しい問題を逆手にとり、楽しい空間構成としたいところです。
一方、周辺が建て詰まった住宅地では、いかにプライバシーを守りつつ、光を取り入れるかということも大きな課題となります。周囲には3階建てのアパートや戸建住宅があり、そこから見下ろされてしまうということも解決したいポイントでした。
これらのことを丁寧に読み解き、問題を一つ一つ素直に解決していくことで、クライアントのおふたりにぴったりなかたちを浮かび上がらせました。
コンセプトは〈Roofcourtの家〉。周囲から見下ろされることなく、光がたくさんある場所を見つけ出し、そこにプライバシーの守られた中庭(court)をつくりました。日曜の朝に外の冷たい空気を感じながら朝食をしたり、夕涼みをしながらロウソクの明かりで夕食をしたり、友人たちとのBBQを楽しんだり──この8帖の白い壁で囲まれたRoofcourtが、敷地が抱える様々な問題を解決していきます。
撮影:Akiyoshi Fukuzawa