観光地から離れた静かな別荘地に建つ、山荘の改修計画。
森と人が住むエリアの境界に立つ山荘は、間に人工的なものが何もなく、ただ緑だけを眺めることができる特別な立地だと感じた。
既存の建物は、屋根に積もった雪を落とすための大きな切妻屋根にもかかわらず、内部は水平天井のフラットな空間であった。さらに森の景色も構造壁によって塞がれ、この土地に備わる豊かな環境との良質な呼応を感じられない状態だった。
切妻屋根に覆われたおおらかな環境と、眼前に広がる森の木々との関係を整え、既にある環境の性質を最大に顕在化する改修を考えた。
森側は長手方向を通して気積を最大限に広げ、大屋根に包まれた森と対峙する空間とした。窓は横長のプロポーションとし、パノラマに広がる森の景色を切り取った。
窓は掃き出し窓とせず、歩道を散歩する人の目線を切り離し、森との関係性の純度を高めている。
窓辺のベンチでは森を背に親しく語らい、少し深い窓台では森を横目に本を読んで過ごす。
屋根の勾配に沿って上った階段の先には読書机を設け、静かに森を眺めるパーソナルな場所とした。
感染症の影響により多数で集まることへの懸念から、人々は箱から解放され、より自由を求めて暮らし方や働き方が変化している。日常の喧騒から距離を置き、別段何をすることもない、特別な余暇の時間がここに流れている。