敷地は福島県郡山市。百世帯の集落の中心部に位置し、近くには昔ながらの商店、小学校やお寺や神社もある。また、集落を囲むように田んぼや畑もある。仙台に住むご夫妻のための別荘でもあり、将来の終の住処でもある。築80年の既存家屋は建主のご実家で、数年前から空き家となり、老朽化が進んでいた。
このまま次世代に受け渡すより、まずは今後の生活拠点の一つとして整え、遠方に住むお子さん一家も滞在できる場になるようにと建替えを決められた。普段はご夫妻のみで過ごすことがほとんどのため、ワンルームの広がりの中に居間、食堂と書斎を配置し、そこに厨房、寝室、ウォークインクローゼットと水廻りを隣接させて30坪弱のコンパクトな暮らしを求めた。その居住スペースを挟むように東側に客間、西側に外物置を配置した。高さを抑えた平屋であるが、北側のハイサイドライト(高窓)によって視線が抜け、穏やかな光と豊かな竹林を取込んだ。また、ご主人の長年の夢であった薪ストーブもオーダーで製作。静かな炎を眺めながらのひと時は格別とのことだ。
竣工してからは足繁く通い、ご夫婦でゆったりとした時間を過ごされているという。
撮影:朝日カラー 伊藤秀樹