この物件は既存の構造体を生かしながら、断熱、気密、耐震性、設備の更新とグレードUPを施したフルリフォーム住宅です。
設計のポイントは以下です。
01 既存住宅の構造と面影を残しながら、無理しないリフォーム計画
02 耐震性の向上と壁量バランスの見直し
03 日射取得と遮熱を考慮した庇の施工
04 根太間パイピングによる床暖房
01 既存住宅の構造と面影を残しながら、無理しないリフォーム計画
当初は建て替えを計画していましたが、予算の関係や建物の大きさ自体に問題はないという事で、フルリフォームの選択をしました。 唯一の変更は、カーポート越しに玄関を設けたいということでしたので、玄関の位置を全く変更しています。 既存の勾配屋根ですが、落雪距離が十分に取れているため、あえて屋根型は変更しないことで積雪荷重の負担を抑えながら既存の面影を残した外観としています。 既存住宅は築35年を経過していますが基礎、土台、柱共に状態が良好だったため問題なく再利用しています。
02 耐震性の向上と壁量バランスの見直し
既存住宅の壁量の検討を行ったところ、壁量自体は基準をクリアしていましたが、余力がないことと、壁量バランスが悪く、2階の耐震性に問題がありそうでしたので、今回の工事で耐震性能を向上させています。また、当時の基準には無かった柱頭柱脚の金物補強をして、現行法規に適応できるようにしています。
03 日射取得と遮熱を考慮した庇の施工
既存住宅はこの地区のモデル住宅だったらしいのですが、それにふさわしく南面に大きな窓がたくさん設けられていました。2階からは遠くの手稲山も一望できる環境です。ただ、当時の窓の性能では、夏暑く、冬寒いというかなり厄介なものでしたが、この窓に大きな変更をしています。 先ず1階のテラス窓をややコンパクトにして開口面積を小さくしているのですが、取付位置を天井いっぱいにすることで、採光と解放感は損なわないようにしました。また、窓は樹脂製トリプルガラスを採用して熱逃げを防いでいます。 2階は1階同様にコンパクト化とトリプルガラス化のほかに、奥行きの深い庇を設けることで夏の直射を遮り、冬の日射は取り込む様にしています。同時にこの庇は単調になりがちな外観にワンポイントデザインとして効果的に用いています。
04 根太間パイピングによる床暖房
今回、リビングとキッチンは全面床暖房としていますが、従来の床暖パネルではなく、フローリング下の根太空間にパイピングを施した方式を初採用しています。 前述の窓のトリプルガラス化により、窓付近のコールドドラフトが軽減されているため、窓下に暖房パネルが無くても冷気が走ることは無いようです。
スクラップ&ビルドではなく、古いものを生かしながら新しい技術を投入した事例として、今後の我社でのお手本になると思います。