完全分離型の2世帯住宅の計画。
3階建てが立並ぶ、都心の住宅地。築40年近い施主の両親が住んでいた実家を建替え、両親と同居できる完全分離型(玄関、水回りが別々)の2世帯住宅にする計画。2世帯住宅にするといっても、土地の大きさは24坪で前面道路が約4mのため建てられる床面積が、160%にまで減ってしまい、合計の床面積40坪弱の中に、2世帯合計で6名、5部屋+納戸、LDK2つと水回り(洗面やお風呂)を別々に入れ込む難易度の高い設計となった。1F~3Fまで吹抜がるある案や、スキップフロア等様々なアイディアを検討した結果、施主の希望もあり最終的には、1Fは親世帯、2,3Fに子世帯で過不足なく個室もとったシンプルなプランにまとまった。
敷地は間口よりも奥行きが長い長方形の土地。周囲3方を3階建てや2階建てに囲まれていて日射の条件が悪い状況だった。周囲の2階建ても将来的には3階建てに建て替わることが予想されるため隣地からの採光も期待できない。そのため前面道路側から最大限採光できること、道路と家の関係性に着目して設計を進めた。
「世帯を丁度良く繋げる」
2世帯住宅の問題点は、世帯間の距離感だ。一体的すぎても良くないし、離れすぎていても味気ない関係となってしまう。玄関も別々な完全分離型の2世帯住宅は階によって分断されてしまうため、この分断された距離感を丁度良くつなげる方法として、道路側にたくさんの大きな開閉窓設け道路側のスペースを介して間接的につながるような計画とした。大きな窓は採光の役目も果たしている。
前面の4m巾の前面道路は車通りが少ないので、子供たちの遊び場となっていて、その庭のようなスペースから家をみると、個々に設けられた窓から両方の世帯の窓やそれぞれの部屋が一度に見えて子供が遊んでいる風景と家の内部の上下階の空間が間接的につながる。すべての窓には庇がついており、雨でも窓を開けることができる。窓を開ければ、ダイレクトに道路(街)と繋がることができる。
3階建ての住宅の場合は、道路側にバルコニーがくるこが多く、居住空間と道路(街)との間に隔たりができるような状態が多いが、本立地では丁度良い巾の静かな前面道路があったので、思い切ってダイレクトに居住空間と街が繋がることができる計画とした。街との距離が近づくと近所の人との距離感も近づいてくる。ずっと前からこの土地に住んでいる施主や環境との兼ね合いが合致したのでできる計画だが、居住空間を街から隔離するのではなく開くことによって、単純な4mの道路と家の前の駐車場が近所の人たちや子供たちや世帯間の憩いのスペースとなった。
なお、道路側の壁耐力はスチールブレースによって担保され、耐震等級も2以上の数値でクリアしている。
空調の計画は第三種(自然吸気、機械排気)だが、1Fの親世帯エリアの床にガス温水式の床暖房を設置し、暖かい空気が上階へと流れるようにしており、また最上部で集熱した空気を、基礎内に戻して家全体の空気の循環を測り、自然の熱エネルギーも利用した効率よい空調、断熱の計画としている。3階建てにありがちな上下階の温度差を緩和している。施主曰く、冬でもエアコンいらずで過ごせるとのこと。
休みの日は、子世帯が前庭で遊んでいるのを、窓ごしに祖父母が見ている。
窓を開けて会話をしたり、テレビを見ながらぼんやりと外を眺めるなど。。
特徴的に設けられた庇のついた窓が、2世帯住宅での世帯同士や街と家との心地よい関係をつくることを願っている。