開放的な子世帯と、レトロモダンな親世帯。そして、ホッと和める居心地の良いレストラン。異なる3つの世界を備えた店舗併用住宅を設計したのは、コーデザインスタジオの小嶋直さん。公私を共存させつつ世界観はしっかり分けたプランニングの魅力に迫る。
この建築家に写真左の木製ドアが店舗エントランス。角地のどちらの道路からもアプローチしやすい位置で、来客促進の面でもベストなプランとなっている。外壁は店舗部分がモルタル、住居部分は明るく塗装した杉材を使用。親世帯の庭は大和塀で目隠ししている(写真右)
店舗エントランス。ハーブやフルーツに彩られた数段の階段をのぼると、レストランを訪れる華やいだ気持ちが盛り上がる。木製ドアはオーダーでつくったオリジナル。ドアの取っ手やメニューのディスプレースペースの照明は真鍮でつくっている
山海の幸を描いたお店のロゴを、レーザーで丁寧にくり抜いた真鍮の看板。小嶋さんはクリエイターの人脈が豊富で、お店のロゴデザインや看板製作などの相談にも乗ってくれる
店舗は、ドアを開けると店内全てを見渡せるオープンな造り。イタリアの親しみやすいレストランをイメージし、床はモルタル、壁は炭を混ぜた自然塗料で温かな雰囲気に仕上げている。壁はK様一家が左官塗りに挑戦。手仕事のざっくりした風合いが味わい深い
店内はK様と綿密に打ち合わせを行い、お客様との距離感や、お客様からの見え方などを丁寧にカスタマイズして設計。カウンターは3mのマホガニーの一枚板を使用。一見するとシンプルな空間だが、使っている素材の良さが印象をランクアップしている
住居の玄関土間。二世帯共用の玄関で、階段をのぼると子世帯。写真奥の引き戸を開ければ店舗にも行ける。小嶋さんは生活空間の1つとして土間をデザインするのが得意で、この家でも玄関ホールやディスプレースペース、収納を兼ねた「使える土間」を計画した
子世帯のLDK。リビングはK様の要望で和テイストのデザインに。畳リビングはお子様が座っておもちゃ遊びなどをするのにぴったり。開放的な連続窓は、畳リビングに座ったときに空だけが見えるよう、高さや大きさを調整している
1階親世帯のLDK。家具はご両親が以前から持っていたものや、ご祖父母が使っていた思い入れのあるものを適宜リペアして取り入れている。床や壁は親世帯も子世帯も自然素材だが、親世帯では家具のレトロな表情に馴染むよう、色を微妙に変えている
撮影:金田幸三