大分県宇佐市に、とても特徴的な邸宅が完成した。目の前には公園や田畑が広がり、背後には1m高い地盤に造成された住宅街が広がっている。いわば自然と住宅地が切り替わる場所に建てられたこの作品は、土地の特徴をとらえ、その最適解を見つけ、お施主様の要望を低コストで実現した力作だ。その詳細をご紹介しよう。
窓がない外観(正面)。切妻の大屋根が最大の特徴だ。柱を中央にすることで、雨で木の柱が傷まず、車の出し入れが容易になった。玄関ドアは外壁の縦のラインに合うように製作されている。木の梁に屋根が乗っているようなデザインにするため、軒の裏側も屋根と同じ色に塗装した
外観(東側)。とても珍しい、大屋根の張り出し。駐車場をすべて覆っていることがわかる。 構造設計の専門家の協力を得て実現した。リビングの大きな引戸は全開することができる
公園からはこのように見える。公園側には窓がなく、人や車からの視線を遮っている。手前の自然と奥の住宅街の境界に位置していることがわかる。奥の隣家からリビングが見えないように寝室を配置し、L字型のプランとした
すべて吹き抜けで、広さを感じるリビング。等間隔に設けられた、天井梁と柱の連続性が美しい。写真左の外壁が室内に続いているようなデザインで、外とのつながりを感じることができる。テレビの後ろにある壁は半透明のポリカーボネート製で、南の光を奥まで運ぶ
リビングには、外からの視線を感じない方向に大きな引戸が設置された。全開にすると、このような開放感を得ることもできる。左の納戸、右のオープンクローゼットの壁は天井まで届かない設計で、開放感とともに光を取り込んでいる。床材の貼り方も向きを変え、変化を生み出している
数少ない窓は、最も効果的な位置に配置。右の窓から入った光は、手前のダイニングとトイレ、奥の洗面所まで届く
現在は子どもの遊び場となっている、フリースペース。将来2つ目の子供部屋に変更できるよう、あらかじめ梁が設けられている。梁があることで、ハイサイドライトからの光が直接室内に入らず、陰影が美しい。子供部屋に変更した時は、この梁の上にポリカーボネートの屋根を設けることも可能だ
フリースペース(左)とオープンクローゼット(右)。オープンクローゼットには可動式パイプハンガーが用意されている。リビング側からパイプに掛けた洋服が直接見えないよう、ポリカーボネートの壁が設けられている。フリースペースの壁には安価なラワン合板を使用し、コストを抑えた
サンルーム。両サイドに洗濯物をかけるパイプハンガーが用意されている。天井がないことで風が通り抜け、洗濯物が早く乾く。水回りのエリアは壁の色を変え、木目と白い壁で構成された他の場所と異なる雰囲気を出している
キッチン(左奥)と納戸(中央奥)。北側だがハイサイドライトから光が入り、曇りの夕方でも明るい。キッチンはオーダーメイドで、レンジフードも照明を組み込んだ特注品だ。大きなワンルームに小さな四角い箱がいくつもあるイメージで、大きな気積の中に変化を出している
ダイニング(右)とトイレ・水回り(中央奥)。ダイニングの照明は、ゴールドの色で他のパイプ類と統一している。照明は左右に動かすことができるオリジナルで、奥の黒い部分も収納と飾り棚を兼ねたオーダーメイドだ
玄関からは、正面の壁により内部が見えない。しかし角を曲線にカットした効果で、ハイサイドライトと吹き抜けの空間を感じられる。高さも幅も、入念に計算して設置した。照明のソケットは真鍮のパイプで手作りだ。コストカットのために、室さん自身が作業することも多いという
撮影:八代写真事務所(YASHIRO PHOTO OFFICE)