親子三代で、星が見える家に住む家族は、
ぜったい幸せ!

とある住宅地の一角に、道行く人の目を引く外観の建物ができました。まっ白な外壁に散りばめられた大小の窓枠が特徴的な二世帯住宅です。名付けて「マドワクの家」。この家には外からの見栄えの良さはもちろんのこと、室内にも、狭い敷地に、6人の大人が快適に暮らせるための工夫がたくさん詰まっていました。

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近隣の環境を考え抜いた採光と、家族それぞれの声に解を

購入した土地は、23区画から成る大きな敷地の一区画。個人では購入できない大きな敷地を不動産業者が買い、私道などを配置してエリア一帯を適度に切り分け、建築条件付きで販売していた土地のひとつだった。

 条件付きとは、間取りや仕様は自由だが、設計や施工の業者が決まっているということ。ご家族がこの土地を購入すると決めたときに、専属の建築士であった西村さんが設計することも同時に決まった。

 23区画のうち、奥村さんが選んだ区画があるのは大きな道路に面した角で、往来の人の目に止まりやすい。このプロジェクトの顔にふさわしい外観が望まれていた場所だった。そんなプロジェクトの要望と、「白くて四角いカッコいい外観の家がいい」という奥さまの要望から、白くてシンプルな箱状の建物に、大きさ違いの窓を散りばめた印象的な外観が生まれた。

 窓枠はこの家を特徴づけるモチーフでもある。この家に住むのは、ご夫婦と大学生の息子さんと娘さん、大阪から引っ越してくるご両親の大人が6人。限られた面積のなかに、いかに生活に必要な部屋を確保しつつ、気持ちの良い空間をつくろうかと工夫した結果、あちこちに窓がついた。

 たとえば、ちょうど階段へ光が差し込むような位置につけた窓。暗くなりがちな北側の階段も明るくなった。あちこちにつけられた窓のお陰で、リビングとダイニング、5カ所の個室、廊下から階段に至るまで、どこも明るい空間になった。


 当初はまだ建っていなかったが、建物の東側と南側は売りに出されている別の区画。いずれ建物で日が遮られてしまうことを見越して、外からどう光を入れるかも課題だった。「3階に長めのバルコニーをつくると、隣の建物との距離がおけます。そこを2階の吹き抜けとつなげると、隣に建物ができても光が入るんですね。リビングのソファから見上げるとバルコニーの緑や空も見えます。このスケッチを見せてご提案したら、そこを非常に気に入っていただけて、ご依頼をいただきました」と西村さん。吹き抜けやバルコニーは室内を明るく広く感じさせることのほか、法律上ギリギリいっぱいまで居住スペースを広くするための工夫でもあった。ご家族は、さまざまな条件を勘案した間取りを見て迷うことなく提案されたプランに決め、インテリアの打ち合わせに移っていった。


 西村さんによれば、キッチン周りや室内の壁の仕上げなど、生活に近い部分は、雑誌やインターネットなどで簡単に情報が集めやすくなった反面、逆に整理がつかなくなっている人も多いという。口にした要望をそのまま言う通りに実現すると、それぞれが対立してしまうというようなこともある。クロスの色で迷う娘さんや、この柄の壁紙を使いたいという奥さまの声を聞きながら、本当に望んでいるのは何なのかを注意深く探り、ポイントを押さえて計画に織り込んでいった。

「求めるものは高いけれども、細かいご要望はなかったんです。『こんなふうにしたいんですけど、どうでしょう? かっこ良くなりますかね?』といったかたちで、こちらに委ねていただいていたので、いいものをつくらないといけないなと気が引き締まりました」と西村さん。

 打ち合わせを重ね、竣工まで全力を尽くしたが、引き渡しの際にはやはり、ご家族の反応が気になったそう。「想像以上に良かったとおっしゃっていただいて嬉しかったですね。他の現場に行く道すがら、このお宅に行くこともあるんです。スケッチでご説明したバルコニーからの採光もイメージどおりで、『星も見えてすごいです』とお話いただきました」。


 新居を楽しんでもらおうと、不動産業者さんと一緒に、サプライズでインテリアグリーンをプレゼントしたそう。ご家族は説明を受けた通りにグリーンをバルコニーに置き、部屋から空の景色と共に楽しんでいるという。都内では建物が密集していて近隣の視線が気になることも多いが、周囲の環境を充分考慮してつくられている奥村邸は、カーテンがなくても過ごせるほど。リビングから空を眺め、自分の好みインテリアに囲まれて過ごす時間は格別だろう。
  • 2階のリビングから吹き抜けを見上げたところ。スケッチを参考に、植物が置いてある。バルコニーは窓越しに見える植物を置くエリアと、物干のエリアに分けて使っている

    2階のリビングから吹き抜けを見上げたところ。スケッチを参考に、植物が置いてある。バルコニーは窓越しに見える植物を置くエリアと、物干のエリアに分けて使っている

  • 来客時にも使う2階の洗面には、奥さまが気に入ったベルギー製のクロスを使った。置き型のボウルやラウンド型の鏡などもこだわった選んだところ

    来客時にも使う2階の洗面には、奥さまが気に入ったベルギー製のクロスを使った。置き型のボウルやラウンド型の鏡などもこだわった選んだところ

  • 3階の息子さんの部屋にはリビングを覗ける窓がついている。窓から顔を出すと、家族が過ごすリビングが見下ろせる

    3階の息子さんの部屋にはリビングを覗ける窓がついている。窓から顔を出すと、家族が過ごすリビングが見下ろせる

書斎は狭くても、使い勝手がつまった居場所

約30坪のなかに二世帯6人。ご家族が、もともと持っていた家具もおさめなくてはいけない。玄関とお風呂は共有にしたが、それでもスペースは限られていた。リビング、ダイニングを広くして夫婦で過ごしたいというご両親。奥さまとご主人で別々の部屋が欲しいというご夫婦。もう大きい息子さんと娘さんはそれぞれ別の個室が要る。必要な部屋をどう配分するかには、西村さんもずいぶん苦労したそうだ。

 結果的に一番小さくなったご主人の部屋はほんの3.1平米。デスクを置いて、布団を敷けば部屋いっぱいになってしまう。「非常に小さな部屋ですが、意外と充分だね。日当りもすごくいいし、バルコニーにも出られる、コンパクトで気に入っています」とご主人の声。

 打ち合わせで、「僕の部屋もほしい、部屋さえあればいい」と言っていたというご主人。小さいながらも、心やすまる自分の部屋が実現した。

【西村 佳太さん コメント】
いい建物は、もちろん住む人が満足していて、空間的におもしろいということもありますが、実は、つくりやすいこともポイントです。難しい建物ですと結局、つくれる職人さんも限られますし、引き渡した時にはきれいに仕上がっていても使っているうちにほころびが出てきたりします。直接お客さんには関係のない部分ですが、10年後、20年後もかっこ良く見える建物であるために、つくりやすいかどうかも普段から意識しています。
  • ピンク色の壁が印象的な、3階の娘さんの個室。クローゼットは隣の息子さんよりも大きめ

    ピンク色の壁が印象的な、3階の娘さんの個室。クローゼットは隣の息子さんよりも大きめ

  • 窓辺に向かって端から端までカウンターを渡し、書斎スペースとして利用。ご主人のくつろぎの場に

    窓辺に向かって端から端までカウンターを渡し、書斎スペースとして利用。ご主人のくつろぎの場に

基本データ

施主
G邸
所在地
東京都世田谷区
家族構成
夫婦+両親
敷地面積
71.14㎡
延床面積
122.75㎡