沖縄の気候風土、文化を熟知した匠がつくる
混構造と赤瓦屋根の二世帯住宅

本土と気候風土や文化が大きく違う沖縄の家づくりには、沖縄ならではの知識や工夫が必要。沖縄で生まれ育ち今も沖縄を中心に活動を続ける建築家、山城さんは建築士歴50年を超えるベテラン建築家。沖縄を熟知した匠の家づくりに迫る

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コンクリ・木造混構造に赤瓦屋根
長年の経験が生む沖縄にマッチした家

日本の南端の県、沖縄。かつて琉球と呼ばれたこの地は、気候風土や文化において、日本本土のそれと大きく違っていることはいうまでもない。気候区分も本土が温帯であるのに対し、沖縄は亜熱帯で湿度が高い。夏には毎年のように台風が通過していくから頑丈さも求められる。また、飲み会の多い文化の沖縄では、家に親戚や友人が集まる機会も多いため、空間づくりも重要だ。

そんな沖縄特有の事情に精通し、古くからある沖縄の住宅の良さと、現代建築の良さを上手くハイブリッドした混構造の家をつくり続けているのが、東設計工房だ。

東設計工房では、沖縄に生まれ育ち、建築士歴50年を超えるベテラン建築家である会長の山城東雄さんが、グランドデザインを担当しお客様にプレゼン。息子であり社長の浩二さんをはじめとしたスタッフが構造計算や実施設計を担当し脇を固めるといったスタイル。

東設計工房の特徴は大きく2つ。1つはコンクリートと木造の混構造。沖縄では、シロアリや台風の被害に備えるため、コンクリート造の家が多い。東設計工房では、外壁には頑丈なコンクリートを用いるものの、天井や梁には自然素材である木を用い、柔らかで温かみのある内部空間を実現している。

また、屋根には沖縄の古民家でよく見られる、赤瓦を用いることも多い。赤瓦は「沖縄らしさ」の演出だけが目的ではない。吸水性に優れた赤瓦は、スコールの際に水を吸収してくれるし、晴れれば含んだ水を蒸発させ、室内を涼しくしてくれる。また、断熱性にもすぐれるため、夏の熱を吸収しないばかりか、冬の温かさを室内に留める効果も。また、部分的補修ができるというメリットもある。

「沖縄の家というと夏の暑さばかりを考えがちですが、冬はミーニシ(新北風)と呼ばれる大陸からの海風で以外と寒くなりますから、そのあたりも考慮しなければなりません」と山城会長。

「雨が横から吹き付けてくることもあるので、小さな窓にも庇をつけています」と浩二さん。

こういった細かな点に気づくことも、沖縄に長く住み、沖縄の気候風土を熟知している東設計工房のスタッフには、当たり前のことなのかもしれない。

長年の経験とスキルの蓄積があるからこそ、根差し、人々に支持される家をつくり続けてきたのだろう。
  • コンクリート打ち放しの外壁に、赤瓦屋根の組み合わせが印象的なA邸。東設計工房では、沖縄らしさを感じられる赤瓦屋根を提案することが多いという。

    コンクリート打ち放しの外壁に、赤瓦屋根の組み合わせが印象的なA邸。東設計工房では、沖縄らしさを感じられる赤瓦屋根を提案することが多いという。

  • A邸はエントランス左右で親世帯・子世帯が分かれる。木製のルーバーで中庭の目隠しをしつつ、光や風の通り道を確保。

    A邸はエントランス左右で親世帯・子世帯が分かれる。木製のルーバーで中庭の目隠しをしつつ、光や風の通り道を確保。

  • エントランスから親世帯の庭へと続く小径。ここを通り親戚がふらりと庭に現れることもあるのだという

    エントランスから親世帯の庭へと続く小径。ここを通り親戚がふらりと庭に現れることもあるのだという

  • 親世帯。大開口の先に広がる庭、三角屋根がもたらす高さ方向の広がりが、開放的な空間を生む。庭にある石のテーブルは、BBQをしたりお子さんが勉強をしたりと大活躍。

    親世帯。大開口の先に広がる庭、三角屋根がもたらす高さ方向の広がりが、開放的な空間を生む。庭にある石のテーブルは、BBQをしたりお子さんが勉強をしたりと大活躍。

エントランスを共有し南北に世帯を分離
親子世帯が程よい距離感で繋がる

沖縄本島南部の東海岸にある与那原町。その住宅地に東設計工房の手掛けたA邸がある。お子さんの小学校入学をめどに、古くなった2階建ての実家を取り壊し、高齢になった両親、さらには足腰の弱ったおばあちゃんも安心して住める、平屋の二世帯住宅を建てたいと考えていたAさん。そんな中、建築展で出会った東設計工房の「混構造」「赤瓦屋根」に惹かれ、設計を依頼することとなったという。

この依頼に対し山城さんは、広い敷地の南側に親世帯、中庭を挟んだ北側に子世帯を配置し、共有のエントランスで繋ぐというプランを提案した。

「同じ敷地でありながらも、それぞれのプライバシーを確保できる配置です。お孫さんは、玄関や庭から両世帯を行ったり来たりされているようです」と山城さん。

親世帯は、もともとあった庭の景色を楽しめ、隣地との距離を採れる位置に配置。エントランスから直接庭に行ける小径も設けた。親戚や友人が玄関を入らず、この小径からふらりと訪れることもあるという。

子世帯の西側には、お父様の趣味である畑も設け、自然と親子世帯の行き来がなされる絶妙な配置だ。

実はこの配置、沖縄独自の「琉球風水」の要素も取り入れられているという。吉方とされている東南の方角は、開放的なスペースとしてエントランスや庭が設けられていて、庭に面したリビングダイニングが広がる。一方で、北西の方角には沖縄の伝統的な家と同様、キッチンやお風呂場などの水回りを中心に配置された。

利便性を持たせただけなく、風水的にも理にかなった設計ができる、東設計工房の実力には驚かされる。
  • 仏壇のある和室は、扉を開け放つとLDKと一体空間に。親戚がたくさんあつまっても快適にすごせる配置。

    仏壇のある和室は、扉を開け放つとLDKと一体空間に。親戚がたくさんあつまっても快適にすごせる配置。

  • 元の家の庭の木は、隣地との目隠しにも。深い軒で、夏の高い日差しを遮る。

    元の家の庭の木は、隣地との目隠しにも。深い軒で、夏の高い日差しを遮る。

  • 室内に設置した洗濯物干し場。雨の日でも安心して洗濯物が干せて重宝しているという。

    室内に設置した洗濯物干し場。雨の日でも安心して洗濯物が干せて重宝しているという。

庭の景色と高い天井がもたらす開放感
人々も集まる、ほっこり寛ぎ空間

それでは邸内を見ていこう。まずは親世帯から。玄関を入り歩を進めると見えてくるのが広々としたLDKだ。コンクリートの壁でありながらも、床や家具、現しの天井の垂木が木の温もりを感じさせてくれる。これぞ混構造の生むほっこり空間。大開口の先に広がる庭からの開放感、三角屋根高さ方向の広がりをもたらしている。屋根下には窓が設けられ、光を室内に導くほか、風の通り道にもなるという。赤瓦屋根にいくつもの役割を持たせてしまうことには驚かされる。

リビングの隣には、仏壇を備えた和室。扉を開け放つことで1つの大空間ともなる。
「沖縄は、先祖を大事にする文化があり、折に触れ親せきが集まって仏壇に手を合わせることが多いんです」と大城さん。そのため、大人数が集まっても十分対応できるよう配慮したゾーニングとしたのだという。

もともとあった庭木を活かした庭の端には、大きな石のテーブルが鎮座。庭でバーベキューをしたり、お孫さんがここで勉強をすることもあるのだという。

一方の子世帯。玄関を入ると開放的なLDKや中庭に面した大開口があるのは、親世帯と同様。中庭は、エントランスのすぐ隣であるものの、木製のルーバーで緩やかに隔てられているため、プライバシーは確保しつつ、光や風は通してくれる。

子供部屋は玄関近くに配置したことで、リビングに居ながらお子さんの様子を伺える。一方の夫婦の寝室は奥側にもうけられているため、奥へと進むにつれパブリックからプライベートへとゾーニングが変わっていく配置だ。LDKとキッチン、洗濯物干し場、洗面・浴室は、ぐるりと回遊できるため、家事もとてもしやすいという。

この家の出来栄えにAさんも大満足の様子。お子さんもお友達が遊びに来たり、ご両親とお孫さんの交流も増えたという。

沖縄の家づくりは本土の家づくりとは違った難しさがある。沖縄の気候風土、文化を熟知している東設計工房がつくる沖縄の家は、快適な沖縄暮らしを実現してくれる。
  • 子世帯のリビング。子供部屋がすぐ隣にあり、中の様子がうかがえるつくり。壁にはご主人の趣味の車の模型用の棚を設置。
撮影:タイムス住宅新聞社

    子世帯のリビング。子供部屋がすぐ隣にあり、中の様子がうかがえるつくり。壁にはご主人の趣味の車の模型用の棚を設置。
    撮影:タイムス住宅新聞社

  • ダイニングとキッチンの境には、お店のような雰囲気を持たせるため、屋根をせり出させたようなデザインに
撮影:タイムス住宅新聞社

    ダイニングとキッチンの境には、お店のような雰囲気を持たせるため、屋根をせり出させたようなデザインに
    撮影:タイムス住宅新聞社

  • 明るく開放的なキッチン。洗濯物干し場、洗面・浴室へと回遊できる抜群の家事動線。
撮影:タイムス住宅新聞社

    明るく開放的なキッチン。洗濯物干し場、洗面・浴室へと回遊できる抜群の家事動線。
    撮影:タイムス住宅新聞社

基本データ

作品名
与那原の家
所在地
沖縄県与那原町
家族構成
両親+夫婦+子ども1人
敷地面積
715㎡
延床面積
216㎡
予 算
5000万円台