desus(デサス)建築設計事務所が設計した『TIME』は、築45年の日本家屋をフルリノベーションした住宅だ。贅沢な眺めを生かした開放的な設計と、新築では難しい「リノベーションだからできる空間デザイン」の魅力を解き明かす。
この建築家に贅沢な眺望と、2方向に視線が伸びる抜群の開放感に圧倒されるLDK。「視界を遮るものがない高台」というロケーションを最大限に生かした設計の力だ。築古なので、耐震も入念に強化。熱環境の快適性にも配慮し、屋根、壁、床下に性能の高い断熱材を入れている
リビング。天井は既存の皮付き丸太梁を現しにし、空間デザインに深みをプラス。高さも出て開放感が増した。床は荒々しい天井に負けないよう、節が目立つオークを使用。エタノール暖炉(写真左)も存在感のあるネロマルキーナをあしらいつつ、上部は収納を豊富に設けて実用性も担保
ウッドデッキとLDKは、大開口とフラットな床で一体化。内と外のつながりが大胆に強調された設計は、desusの得意分野だ。高台にせり出すウッドデッキは空中のステージのようで、壮大な景色を独占した気分に。デッキ自体も広いので、屋外での食事ものびのびと楽しめる
冬場はエタノール暖炉の幻想的な炎と、アーティスティックな照明が極上の時間を演出
ダイニングからキッチン方向を見る。新建材を使った規格品はこの空間に似合わないからと、キッチンもオリジナルで造作。モルタル調の素材がLDKの木の風合いと好相性。写真左の階段をのぼるとロフトがある
ウォークスルークローゼット。このクローゼットを介して洗面脱衣室とキッチン、ダイニング、ウッドデッキなどをスムーズに行き来でき、家事動線が抜群。クローゼット内には化粧台など多目的に使える造作カウンターも。寝室も近く、便利な身支度スペースになっている
「プラスアルファの空間も欲しい」との要望に応えてつくったロフト。音楽に詳しいご主人の趣味部屋となっている。リノベで新たに用いた資材は、45年の歴史を感じる既存の柱に合わせてウォールナット色で塗装。邸内全体のデザインに統一感をもたせている
逗子の街並みから葉山の山々までを一望。ウッドデッキは隣地との高低差を生かして高台にせり出すようにつくられており、視界を遮るものがない迫力満点の景色を堪能できる
撮影:ヤマベスタジオ 山邊章史