家を建てるとき、ハウスメーカーにするか? それとも設計事務所に頼むか? どちらにも良さがあり、実に悩ましいところです。とくに本サイトをご覧になっている方ならなおさらでしょう。アイネクライネ一級建築士事務所の伊藤克弘さんが手掛けた「下平尾の家」に、その良さを両立するヒントが隠されているかも知れません。
この建築家にセンターブロックは高さ約8m。ここに1階リビングダイニングとキッチン、階段が収まり、左側の平屋部分に水回りと寝室を配置。センターブロックは軒ゼロの納まりであるが、窓部分を900mmほどへこませているので、庇機能は担保しつつすっきりとした印象を与えている
一般道から西側の建物を臨む。擁壁は1.2mほどの高さがある。道路斜線制限に引っかからないよう、道路に面した西側に低層ブロックを置くことを考慮して設計。プライバシーや西日などに対してデメリットとなる窓を設けずに済むように平面計画をしている。平面だけでなく立面も同時に考えながら設計するのが、伊藤さんのいつものやり方だ
東側にあるインナーガレージ。雨天時も雨に当たらずに家に入ることができる。玄関側に置いた外収納は、ガレージの屋根を支える構造材と目隠しの役割も併せ持つ。ガレージは木造構造ではギリギリの3間飛ばし。車を2台、余裕をもって駐車することができる
インナーガレージと西側の建物の軒天には、木毛セメント板を採用。テクスチャーがユニークで、金額的にも安い
玄関ホール。2階へ続く階段が吹き上げ構造になっていて開放感がある。正面の扉はキッチンとつながっている
リビングダイニングを玄関側から臨む。天井の高さは2600mm、窓際の木部とキッチンは2400mm。撮影したのは冬で、大きな窓から陽光が部屋の奥まで射し込んでいるのが分かる。一番奥のくぼみや、施主希望のお雛様のスペース。上部ルーバー内にエアコンを設置
リビングダイニングを逆から見る。玄関から続く開口部には扉をつけていない。高気密・高断熱&全館床暖房ゆえ、建具で部屋を仕切らなくても家中快適。建具を減らすことでコストダウンにもつながっている
リビングダイニングの北側にキッチンを配置。回遊動線をとることで使い勝手にも配慮。こだわりのキッチンが映えるように、冷蔵庫を見えない位置に置いている。写真左奥の扉の向こう側は土間のパントリー。勝手口があるので、土付きの野菜などもそのまま収納できる
寝室はあえて1階に配置。子どもが小さい頃は子ども部屋を家族の寝室として使い、ここをキッズルーム的に使用。ライフステージに合わせ部屋の使い方をフレキシブルに変えられるよう提案。天井木部は軒天と同じラインでつながる。同じ素材を使うことで連続性と統一感が生まれている
奥様の一番のこだわりはキッチン。キッチンハウスのピアノべトン色で天板はフラットでスッキリと。使い勝手のいい海外製の食洗機を入れたいという希望で、ドイツのボッシュ製の食洗器を取り入れた。背中側にはキッチン同色のカップボードがある
撮影:shiokawa kotaro