京都の中心部を流れる鴨川の東側に位置する、『旧市街地型美観地区』に指定される大黒町通。細い通りには町家が軒を連ね、落ち着いた雰囲気を漂わせている。その一角に、板壁と塗り壁のファサードが印象的な2軒。設計したのは井上直大建築設計事務所の井上さんだ。
この建築家にDKと仏間を仕切る構造壁は、塗り板で仕上げアクセントに。壁が外まで伸び、内と外の連続性が生まれている
仏間の天井は、茶室などによく使われる掛込み天井。土佐和紙の壁や障子と相まって、和の装いを醸し出している。窓の外の石灯籠は、建て替え前にあった場所とほぼ同じ位置に据え、庭の踏み石とともに旧邸の面影を残している
DKから仏間を望む。グレーの漆喰壁が落ち着いた雰囲気を醸す。インナーバルコニーやトップライト、西側窓からの光が壁にあたると、趣のあるほどよい陰影が生まれる。ダイニングテーブルの上に吊された照明のペンダントは、井上さんが竣工のお祝いに施主にプレゼントしたものだ
階段を登り切った2階ホールにあるトップライト。南北方向が妻となった切妻屋根の東面に設置されている
撮影:杉野圭・中西紀郎