東京から群馬県高崎市への移住を考えたKさま夫妻。候補に挙がったのは、見晴らしは最高だが「ここに家が建つのだろうか?」と思うほど傾斜のきつい土地だった。建築家の松下さんはその課題をどのようにクリアし、絶景を楽しめる家をつくったのだろうか?
この建築家に写真中央、木製の手すりが見える家がK邸。その下、北側の隣家の屋根には太陽光パネルが載っておりK邸が建つことで発電量に影響が出る可能性があった。そこで松下さんは日陰曲線図を作成し、隣家の住人に丁寧に説明して許可をもらってから建築を着工した
外観。写真右奥には車や人が行き来するロータリーがある。ロータリーから家の中が丸見えにならないよう、建物の一部を張り出して視線避けとした。家の前の通路は、道路ではなく駐車場へのアプローチの一部
外観、バルコニーを見る。バルコニーの前は往来がないが、隣家からの視線避けを兼ねてバルコニーには手すりを設けた。手すりは下を空け、足を投げ出して座ることもできる。近隣の方々から「瀟洒だ」と評判のバルコニーだ
玄関ポーチ。右の階段から進めば、バルコニーへアクセスできる
左からリビング、ダイニング、バルコニー。リビングとダイニングの間には30センチの段差がある。主に出入りする箇所は1段ステップが増やされ、上り下りがしやすい。ダイニングとバルコニーはフラットに続き、室内と外部が一体となって感じられる
LDKの奥から玄関方向を見る。リビングの向こうにはキッチンがあり、壁の一部を抜いて配膳用のカウンターを設けた。キッチンの中で人が交差することがなくダイニングまで料理を運べる。室内の雰囲気は、以前の住まいでも使用していた家具がしっくりと馴染むように配慮した
絶景を存分に楽しめるダイニング。北側にある窓からは一年を通して安定した光が入ってくる。また、気密性が高い機構の木製サッシが採用されており、扉を閉めれば外気が室内に入ることはない。景色を邪魔しないよう引き違い窓のそれぞれの大きさを変え、召合わせを中心からずらした
リビングからダイニングを見る。画像右は配膳カウンター。リビングとダイニングの間にある丸柱は構造上必要なもの。柱の右側から出入りするよう、ステップを一段増やしている。柱から左の壁面までは、将来手すりをつけられるようにあらかじめ計画した
撮影:早川記録(早川真介)