まるで公園!広い庭とテラスで
内と外がつながる、開放的な住まい

外から見るとまるで公営の公園のように見える、南津軽郡のK邸。「敷地全体を使った地域に開かれた開放的な住まいにしたい」というKさんの要望を叶えたこの住まいは、随所に外部空間と内部空間をつなぐ工夫がされている。家のどこにいても外が感じられるこの開放的な住まいを形にしたのは、Kさんの中・高校時代の同級生であるmizuiro architects 一級建築士事務所、葛西瑞樹さん。その家づくりの詳細について、お話を伺った。

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全ての部屋からテラスを望む
外に開いた居住空間

お子さんが生まれてこれまでの住まいが手狭になったため、新たに家を建てることにしたKさんご夫婦。さっそく購入したのが、現在の住まいの近くにある横に長い農地だった。設計を依頼したのは、小中時代の同級生だった葛西さん。かねてから「家づくりをする際は葛西さんに…」という願いが実現した形だ。

打合せの際にKさんから葛西さんに伝えられた要望は、「移動が少なくて済むシンプルなデザインの平屋」。そして、「子ども部屋2室、リビングとご夫婦の寝室」、「屋根付の駐車スペース」、「低い天井高で落ち着いた空間」だったそう。それ以外は基本的にお任せということで、葛西さんのプラン作りは始まった。

Kさんが購入した土地は東西に長いため、必要な間取りを平屋で確保しても、どこかに空き空間ができる。この空きをどう生かすかを考えた末に思いついたのが、駐車スペースと建物を両端に配置し、その間の空間を公園のような広い庭とするプランだった。

380㎡の敷地のうち庭の部分が180㎡ほどを占めるという大胆な設計プランに、周囲の人も驚いていたよう。「建築中は誰も個人の家が建つとは思わず、公民館か何かを作っていると思われていたようです」と葛西さんは笑う。

こうして完成したK邸。道路側から庭スペースへの入口には白いエントランスが設けられており、公園と間違えて入ってしまう人がいても不思議ではないつくりである。さらに、駐車スペースも、人々が憩う公園の東屋のよう。まさに「誰でも気軽に入ってこられるような空間にしたい」。という、Kさんの想いが反映されたプランとなっている。

そして、さらにユニークなのが、K邸の間取りである。庭から両開きの扉を開けると、そこには庭に向かって広がるような台形のテラスが現れる。このテラスを取り囲むような形でコの字型にリビングや個室などの居住空間が配置されており、どの部屋からもテラスを通して外部空間を感じることができるのだ。

このプランを見たKさんはすぐに気に入り、一発OKをいただけたそう。「テラスと庭をつなげ、晴れた日には庭でバーベキューをするというイメージも膨らませていました」。と、葛西さんは振り返る。
  • 白が好きなKさんのために、白で統一された建物の正面。木の扉を開けると居住空間の間に配された台形のテラスが現れる

    白が好きなKさんのために、白で統一された建物の正面。木の扉を開けると居住空間の間に配された台形のテラスが現れる

  • 道路側から見たエントランス。左側に建物、右側に駐車場スペースがあり、公共の公園のようにも見える

    道路側から見たエントランス。左側に建物、右側に駐車場スペースがあり、公共の公園のようにも見える

  • 公園の東屋のような駐車スペース。バーベキューなどを楽しむスペースとしても活用できる

    公園の東屋のような駐車スペース。バーベキューなどを楽しむスペースとしても活用できる

  • 建物側から見たテラス。庭とテラスの間の扉を開放すれば連続した空間となり、さらなる開放感を演出する

    建物側から見たテラス。庭とテラスの間の扉を開放すれば連続した空間となり、さらなる開放感を演出する

建物の高さをミリ単位で調整し
周囲に溶け込む外観を実現

玄関から建物の中に入ると、まず靴好きなご夫妻のための広めのシューズルームが。そしてその先に進むと、畳敷きのリビングスペースが配されている。その奥にあるのは、キッチンと家族共有のウォークインクローゼット。さらには畳スペース、水回り、そして主寝室・2つの子ども部屋へとつながっている。テラス側には本好きのご夫婦のための書庫も設けられており、屋外の風景を眺めながら読書を楽しむこともできるのだという。

「内部空間と外部空間の関係性や可能性」を常に考えて設計するという葛西さん。
今回も公園の雰囲気に近づけ、空を近く感じられるよう、建物の高さはミリ単位で工夫したそう。建物の高さを抑えることで建物の圧迫感を下げ、コストも下げることができたのだという。

寒冷地ということで外部空間を取り入れることによる断熱の問題が気になるが、外壁の断熱を外張り断熱と充填断熱の付加断熱工法とし、床下空間にも寒冷地用のエアコンを2台入れ、冬でも温かく過ごせるのだそう。

その甲斐あってKさんも、新たな住まいでとても気持ちよく暮らしていらっしゃるとのこと。「リビング・居室がすべてテラスに開いているため、カーテンのない生活がとても開放的だそう。テラスから空が見えるところも気に入っていただけているみたいです」と、葛西さんも嬉しそうに笑う。

インタビューの最後に、葛西さんが設計するうえで大切にしていることについて聞いてみた。

「前述しましたが、やはり外と中をいかにつなげるか、周りの建物のたちかたや敷地の形状などを考えて工夫し、周辺環境からあまり閉じすぎないよう地域との接点をつくりだすことに気を付けています」。と話す葛西さん。今回の公園はパブリックなイメ―ジだが、外への開き方はお施主様の要望によって適宜考えているという。

自社施工ができるという強みも持つ、mizuiro architects 一級建築士事務所。K邸のように繊細に外部と内部をつなぐ家づくりも、設計視点・現場視点を兼ね備えているからこそ実現できることなのかもしれない。
  • リビングから見たキッチン。床材にはカバの無垢材が使われている。左側に見えるのがテラスで、家のどこからでもこのテラスを眺めることができる

    リビングから見たキッチン。床材にはカバの無垢材が使われている。左側に見えるのがテラスで、家のどこからでもこのテラスを眺めることができる

  • キッチンは「アイランドキッチンを設置したい」というKさんの要望で今回造作されたもの。建具に合わせてシナが使われており、全体に統一感を生み出している

    キッチンは「アイランドキッチンを設置したい」というKさんの要望で今回造作されたもの。建具に合わせてシナが使われており、全体に統一感を生み出している

  • リビングから寝室を見たところ。「床に座って暮らしたい」というKさんの希望でリビングには縁のない琉球畳を用いた。落ち着いて過ごせるよう、天井高も2.2ⅿと少し低めに抑えている

    リビングから寝室を見たところ。「床に座って暮らしたい」というKさんの希望でリビングには縁のない琉球畳を用いた。落ち着いて過ごせるよう、天井高も2.2ⅿと少し低めに抑えている

  • 書庫から見たテラス。右側の十字の格子は洗面の窓となっており、洗面所からもテラスを見ることができる

    書庫から見たテラス。右側の十字の格子は洗面の窓となっており、洗面所からもテラスを見ることができる

撮影:JIGEN FOTOGRAFIAR

間取り図

  • 平面図

基本データ

作品名
福島の家
施主
K邸
所在地
青森県南津軽郡
家族構成
夫婦+子供3人
敷地面積
386㎡
延床面積
153.84㎡
予 算
2000万円台