2室をつなぐ?
来客とプライベート動線をわける驚きのリノベ術!

将来は別のところに移り住むという前提で、リセールバリューを考えて購入したのは、昭和56年築の事務所用マンション2室。先々のためにSOHOユースも考慮した、建築家のリノベーションの技の数々を紹介しよう。

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寝室を中心に据えた斬新な間取りでスペースを確保

もともと「5年~10年程度住み、子どもが大きくなったら住み替えたい」ということで、SOHO用中古マンション2室を購入し、リノベーションを検討していた施主のHさん。建築家である吉田裕一さんに伝えられたのは「生活するために必要な最低限の機能を確保しつつ、外部側に何でもできる場所を大きく取りたい」という要望だった。

 そこで吉田さんが提案したのは、寝室を中心にして水回りをコンパクトな一体の空間にまとめ、開けたバルコニー側に大きなおもてなしスペースを取るというプラン。寝室が中心というとプライバシーが確保しにくいようにも思えるが、引き戸を閉めればしっかりとしたプライベート空間に。また、普段は引き戸を開ければリビング・ダイニングと一体となるため、空間が広く感じられる。この寝室は個室や打ち合わせスペースなどに使えるので、将来売却したり、賃貸に出す場合にも使い勝手がいいよう考えられているのだという。

 この寝室のすぐ後ろにあるのが、バス・トイレ・洗面所・洗濯機置き場を1カ所にまとめたスペースだ。中に仕切りが一切ないというのも、吉田さんの思い切りの1つだ。これだけ大胆なプランを実現できたのも、Hさんの協力があってこそだと吉田さんは話す。「取捨選択が明確にできる方だったので、思い切ったプランを受け入れて頂くことができました」。取るものと捨てる物を明確にできたからこそ、このようなメリハリのある空間が実現できたのだろう。
  • おもてなしスペース/最低限の家具だけを配したシンプルな空間。テーブルは旦那様の手作りだそう

    おもてなしスペース/最低限の家具だけを配したシンプルな空間。テーブルは旦那様の手作りだそう

  • 寝室/部屋の中央に据えられた寝室。ベッドの下は収納として利用することができる。開閉できる扉を開けると、リビングと一体化したスペースに

    寝室/部屋の中央に据えられた寝室。ベッドの下は収納として利用することができる。開閉できる扉を開けると、リビングと一体化したスペースに

  • 寝室/扉をクローズすることで、しっかりとプライベートが保てるうえ、光が入らずゆっくり眠れる空間に早変わりする

    寝室/扉をクローズすることで、しっかりとプライベートが保てるうえ、光が入らずゆっくり眠れる空間に早変わりする

2つの玄関でプライベートとパブリックを使い分けるアイディア

もともと2つのマンションを1つにつなげたH邸には、2つの玄関がある。その1つはプライベート用、もう1つは来客用だ。自分たち用の玄関からキッチンまでは土間が続いており、ベビーカーのまま入室可能。このほかちょっとした汚れ作業なども気にせずできるスペースとなっている。廊下の収納スペースと、温かみのある木のキッチンは今回作ったもの。限られた空間ながら、実にコンパクトに必要なものが配置されている印象だ。

 来客用の玄関から人を招いたときは、プライベート空間を通らずに、広いおもてなし空間へ。先々移り住むことを考え家具も最低限に抑えているというこちらのスペースにはハンモックが取り付けられており、Hさんの長女のお気に入りの場所になっているという。

 この家が完成してからは、友達を招く機会も増えたというHさん。4~5年で他に移り住む前提で購入・リノベーションした住まいではあるが、あまりの居心地の良さに「もしかしたらもう少し長く住むことになるかも…」とHさんは話していらっしゃるそうだ。
  • 来客側の玄関から入った通路/H邸には玄関が2つあり、その1つは来客用。プライベートなものは見せずに、おもてなし空間に案内することができる

    来客側の玄関から入った通路/H邸には玄関が2つあり、その1つは来客用。プライベートなものは見せずに、おもてなし空間に案内することができる

基本データ

施主
H邸
所在地
東京都中央区
家族構成
夫婦+子供1人
延床面積
47.55㎡