趣味の釣りを満喫!
船上デッキから海を望む家

大阪に住まいを持つYさんが、趣味の釣りを楽しむためのセカンドハウスとして建てたY邸。その設計を担当したのが、ef設計の木下太さんだ。このY邸最大の魅力が、雄大な海を望むルーフバルコニー。生活の中にうまく海の景色を取り入れた、木下さんの家づくりの技に迫る。

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北側と東側に約13畳!
広いバルコニーから海を一望

Y邸が建つのは、大阪湾を望む山の山頂付近。Yさんはその眺望の良さに惹かれ、この土地を購入。セカンドハウスを建てることを決めたのだという。もし住み心地が良い家ができれば、ゆくゆくは移住することも視野に入れていたというYさん。「どうせ建てるなら建築家に設計を依頼したい」。そう考えて、知人に相談。そこで紹介を受けたのが、木下さんだった。

Yさんが思い描いていたのは、2階からの素晴らしい眺望を活かした家。広いデッキで海を見ながらバーベキューをしたり、お風呂の中から海を眺めたり…。日々のなかに、いつも海がある。そんな暮らしだった。

Yさんの要望を叶えるべく、さっそくプランを練り始めた木下さん。初めに考えたのは、母屋とガレージを南向きに並べ、バルコニーを東側に配置するパターンだったそう。ここからYさんと共にアイディアを出し合い、最終的には、南側に5.63畳、東側に7.92畳と、L字型に2つのバルコニーを設置するプランで確定した。リビングダイニングは二方向を広々としたバルコニーで囲まれており、開放感たっぷり。南側・東側の両方で海を眺めることができる、まさにYさんの希望通りのプランである。

「プランを作る際は、Yさんとアイディアを出し合って作り上げていきました」。と話す木下さん。Yさんとはかなりフィーリングが合ったということだが、これはYさんに限った話ではないのだという。
「僕を選んでくださったということは、そもそもフィーリングが合う方だと思うんです。そんな方と仕事をさせていただけるのは、いつも本当に嬉しいですね」。そう言って、木下さんは微笑んだ。自分を信頼してくれるお施主様に、最高の家を建てたい。そんな木下さんの想いは、完成したY邸の随所に現れている。
  • 南側のルーフバルコニー。最大限バルコニーの面積取ることで、船上デッキから眺めるような絶景を確保した。Yさんの希望どおり、知人を呼んでバーベキューを楽しむのにも十分なスペースとなっている

    南側のルーフバルコニー。最大限バルコニーの面積取ることで、船上デッキから眺めるような絶景を確保した。Yさんの希望どおり、知人を呼んでバーベキューを楽しむのにも十分なスペースとなっている

  • 南側よりやや細長いつくりの東側のルーフバルコニー。両方の窓を開け放てば、雄大な外の景色との一体感を味わうことができる

    南側よりやや細長いつくりの東側のルーフバルコニー。両方の窓を開け放てば、雄大な外の景色との一体感を味わうことができる

  • 東側のバルコニーから見たダイニング・キッチン。Yさんの希望でアイランドキッチンを採用。キッチンバックカウンタ-の細い窓からは、西側のきれいな山並みを望む

    東側のバルコニーから見たダイニング・キッチン。Yさんの希望でアイランドキッチンを採用。キッチンバックカウンタ-の細い窓からは、西側のきれいな山並みを望む

  • リビングの壁の素材(珪藻土)と天井の素材(杉)は木下さんが提案。リビング奥にはYさんの希望だったペレットストーブを配置

    リビングの壁の素材(珪藻土)と天井の素材(杉)は木下さんが提案。リビング奥にはYさんの希望だったペレットストーブを配置

構造の強化や窓の配置で
海風にも負けない家を実現

それでは、完成したY邸を詳しくご紹介しよう。まず外観は、耐候性の高いガルバニウム合板を用いた落ち着いた色合いの外壁をセレクト。シンプルモダンな四角い家よりも、屋根がある従来の家らしいフォルムがYさんのお好みということで、三角屋根が採用された。

この場所は海が近いこともあり、海風が強く、冬になると海側、山側からの風が吹き込む。このため、風が吹いても壊れないよう、構造を強化。特に西側は風が強いため、あえて窓をあまり設けないなどの工夫がされている。

間取りは、2階に約18畳のリビング・ダイニング・キッチンと水回り。そして1階に6.5畳の寝室と、約12畳の予備室という配置。やはり特徴的なのは、リビングダイニングに設けられた大きな開口部である。東側・南側の両方でピクチャーウィンドーのように広大な海を眺めることができ、まさに暮らしとともに海があるといったイメージだ。

そして、窓の外に広がるのは、併せて約13畳の、まるでアウトドアリビングのようなルーフバルコニー。ここに座って海を眺めていると、まるで船上デッキから海を見下ろしているかのような気分が味わえるのだという。

またキッチンバックカウンタ-には、西側のきれいな山並みを望む、細長い窓を設置。これは、海とは趣向の異なる景色が楽しめるようにという、木下さんの配慮である。

船上デッキのあるこのセカンドハウスに、実際に住み始めたYさん。当初はご主人だけが魚釣りのために使っていたものの、今では奥様もすっかりこの家を気に入り、ここで2人で過ごす時間が増えたのだそう。「当初は開口部が広いので暑さが心配でしたが、風通しが良いので、実際住んでみても全く気になりません」と大変満足されているようで、趣味の釣りを楽しみ、家に戻って海の景色を楽しむ。そんな理想の暮らしを満喫されている。

「Y邸は下から見ると、緑の丘に建っているように見えます。実はここにYさんご自身が植栽を植えられて、1年を経てここまできれいになったんです。こうして育っていく住宅を見られることが、設計者としてとても嬉しいですね」。最後に木下さんはそう話してくれた。
  • 三角屋根が特徴的な、北東から見た外観。手前はガレージスペースとなっている

    三角屋根が特徴的な、北東から見た外観。手前はガレージスペースとなっている

  • 西側から見た外観。海風が強く当たる方向なので、窓は極力少なくつくられている

    西側から見た外観。海風が強く当たる方向なので、窓は極力少なくつくられている

  • 緑の丘に建つY邸。下の植栽は、Yさんがご自身の手で植えられたものだそう

    緑の丘に建つY邸。下の植栽は、Yさんがご自身の手で植えられたものだそう

撮影:宮本 淳

基本データ

作品名
船上デッキからの景色が望める家
施主
Y邸
所在地
兵庫県淡路市
家族構成
夫婦
敷地面積
728.18㎡
延床面積
123.09㎡
予 算
2000万円台