吹抜けは開放的だが、木造住宅では多くの場合、居住スペースに上階を支える柱が出てしまう。この柱をなくし、光と風が通るおおらかな吹抜け空間をつくった建築家の大塚新也さん。土地探しから空間演出まで、施主の思いに寄り添う大塚さんの家づくりを紹介。
この建築家に洗練された外観。南の道路側から見るK邸は、1階の大開口の脇にある大きな袖壁が印象的。この袖壁とテラスの庇で日照をコントロールし、夏は暑くなり過ぎず、冬は暖かい住まいを実現している。写真右の玄関は庇が大きく、3人のお子さまの自転車などを置くのにぴったり
キッチンからの眺め。写真左の畳スペース、キッチンカウンター越しのダイニング、その先のリビングと、家族の居場所が全て視界に入る。柱がない無柱空間はどのスペースもすっきりと見通せて、家具も制約なく好きなところにレイアウトできる
1階リビングからダイニング、キッチンを見る。リビングは吹抜けだが、ダイニングは上に2階の一部を配して天井高を抑え、落ち着きのある空間に。大塚さんが構造計算で試行錯誤したおかげで支えの柱がない無柱空間を実現でき、空中に部屋が浮いたように見え、開放感を高めている
LDKはリビングがキッチン・ダイニングより数段高いスキップフロア。リビングの床下には段差を利用した収納があるほか、リビングへの階段の一部も、踏み板を外して内部にモノをしまえるようになっている
大塚さんは窓計画の際、専用ソフトで時間・場所ごとの日照を入念にチェックする。階段上の2階通路には、朝日が入る東向きの高窓。ほか、ダイニングには西の窓、2階奥には北の窓、リビングには南向きの大開口があり、1日中しっかり採光。もちろん、風も気持ちよく通る
奥さまこだわりの、グレー目地のタイル壁がかわいいキッチン。カウンターの腰壁はリビング・ダイニングから手元が見えない高さで、調味料などを置けるニッチ収納もあって使い勝手がよい。天井はシナ合板だが塗装や目地のある張り方で、コストを抑えつつ高級感をアップ
写真左のダイニングスペースの壁には、異なる木材を使った3本の付け柱がある。使用した木材は、3人のお子さま一人ひとりにゆかりのあるもの。柱の間の壁に写真などをディスプレーできるよう、ピクチャーレールとスポットライト照明が設けられている
大塚さんは、照明も専用ソフトでじっくりシミュレーションし、各スペースの過ごし方をイメージして計画している。リビングはダウンライトを用いず、天井際の壁に間接照明を入れて空間の広がりを演出。反対にダイニングは食卓を照らすよう、上から光が落ちる照明を設置
2階への階段は、浮遊感のある片持ち階段。一般的に木造で片持ち階段を設置するのは難しく、さらにこれだけ踏み板を薄くするのも高難度。大塚さんは緻密な構造計算を行ったほか、踏み板の材質にこだわり、壁の中に鉄板を入れるなどの工夫を凝らして実現した
撮影:アラタケンジ