「交差する境界の家」
袋小路になる手前の角地に建つ小さな住宅です。住まい手は夫婦と小さな男の子2人。南東で接道する好条件の立地ではありますが、近隣に対してはあまり開放的にし過ぎないで落ち着いた生活領域をつくり、同時にできるだけ外部環境を取り込むことを考えました。
建物は5.58m角の正方形平面で半地下を含む3層構成です。各階は十字型に交差する木造門型フレームによって緩やかに仕切られ、北西の奥まった「ウチ・スペース」と、南東の開放的な「ソト・スペース」に分かれています。
「ウチ・スペース」は各階8帖分の機能的で守られた場所で、特に1階の大きな浴室はこの住まいの特徴となっています。「ソト・スペース」は大小の窓があって外部要素の入り込んだ使われ方が曖昧な場所で、2つの道路に面する緩衝地帯となっています。
また、門型フレーム上には4枚引戸が設置されており、季節や使われ方によって「ウチ/ソト・スペース」をつないだり区切ったりと関係性を変化させることができます。この4枚引戸は地階・1階・2階で、それぞれ不透明・半透明・透明という3種類を用意して、各階で寸法を揃えることでどこにでも設置できるようにしました。
交差する境界が象徴的に存在することで、家の中に少し外っぽいところや曖昧なスペースができており、引戸によってそれらが複雑な関係性をつくりだします。この小さなキューブの中に様々な居場所と可能性を見いだせる家になったのではないかと思います。