富士を望む展望風呂!
プライバシーと開放感を併せ持つ二世帯住宅

「富士山が見えるから景観を楽しみたい。そして、四季折々の自然を感じながら暮らしたい」というお施主さんの希望を叶えるため、建築家・植木健一さんが二世帯住宅の新たな可能性に挑戦。随所に工夫を凝らした家は、眺望にこだわり開放感がありつつも、プライバシーをしっかりと確保した素敵な家でした。

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二世帯がお互いの距離感を保ちつつ、土地の可能性を最大限に

 お施主さんが植木さんと出会ったのは知人の紹介。富士山の見える良い土地が見つかったので、お子さんの世帯と一緒に二世帯住宅を建てたいとの要望だった。


 閑静な住宅地にある広い土地の北側には菜園が広がっており、広々とした空間。見晴らしにこだわり、富士山を眺めることができるデッキテラスやサンルームを設けるだけではなく、展望風呂も完備している。露天風呂をイメージしたという展望風呂は、テラスへ出ることも可能だ。

 既製品はほとんど使わずにデザインをし、道路に面した場所はプライバシーをしっかりと確保しつつも、見晴らしが良いところは開放的になるように心がけた。お施主さまのお気に入りは「ガラスの屋根」。開放感があるだけではなく光が入り室内が明るくなる。

 夏場には水平のブラインドで日よけを行うことで涼しさを保ち、冬はサンルームのように暖かくなる。家に居ながらにしてリゾート気分を満喫することができる夢のような家なのだ。


 植木さんが一番頭を悩ませたのが「プライバシーの確保」。繋がりを大切にするだけではなく「繋がり方」を考え、プライバシーをどれだけ分けるのか。それぞれの世帯が、おたがいの暮らしの雰囲気を把握しつつも、程よい距離感を保てるように、つかず離れずの距離を考えた。結果、エントランスを共有した二世帯の別棟となり親と子世帯の目線がずれ、二世帯住宅にありがちな窮屈さを全く感じることのない家になった。


 建物の外観は屋根の高さを変えてリズム感を出し、独り善がりにならないように何度も打ち合わせを重ねる。二世帯住宅は敷地内同居で別の世帯を建てるとコストは2倍になってしまうが、共有部分があるとその分コストカットをすることができる。お施主さまは費用面へのこだわりよりも、要望を叶えることを優先とのことだったので、無理のない距離感を実現することができたと言えるかもしれない。

 この家は開放感のある家にありがちな、住宅街から浮いてしまう家ではなく、「場所ならではの雰囲気を大切にしたい」との植木さんの思いから、土地をみてから調和を考えた。そのため、大きなお屋敷なのに圧迫感や威圧感を感じることがなく、自然と風景に溶け込んでいる。

 予算や使い勝手そしてデザインなど、夢を形にするにはどうしても諦めることが多くなっていくのが常だろう。夢をすべて詰め込んだ「自分だけの城」を、植木さんは単に要望を汲むだけではなく、デザイン性と機能性を兼ね備えた完璧なものに仕上げたのだ。まさに究極のドリームハウスの一つの形と言えるだろう。
  • 道路に面している個室や水回りへの視線を遮る壁は、石張りの一部がグラデーションになっている。石とガラスを組み合わせてあり、石の裏側を削ってガラスはその削った形状に合わせ外面ガラスを小さくした特殊な合わせガラスを使用している。このガラスから陽光が入るだけではなく、生活の光が零れだすことにより、石壁にありがちな「要塞」のような重苦しいイメージを避け、周囲の風景とも溶け込むように配慮されている。

    道路に面している個室や水回りへの視線を遮る壁は、石張りの一部がグラデーションになっている。石とガラスを組み合わせてあり、石の裏側を削ってガラスはその削った形状に合わせ外面ガラスを小さくした特殊な合わせガラスを使用している。このガラスから陽光が入るだけではなく、生活の光が零れだすことにより、石壁にありがちな「要塞」のような重苦しいイメージを避け、周囲の風景とも溶け込むように配慮されている。

  • 和室やベッドルームは石壁で囲まれており、昼には陽光が差し夜には生活の光が零れだす。和室の壁と天井には和紙を使用しており、温かみと落ち着きを演出し、素材感を楽しめるように配慮されている。ゲストルームとしても利用可能な和室は、坪庭に面しており、ここでも四季折々の自然の移ろいを感じることができる。

    和室やベッドルームは石壁で囲まれており、昼には陽光が差し夜には生活の光が零れだす。和室の壁と天井には和紙を使用しており、温かみと落ち着きを演出し、素材感を楽しめるように配慮されている。ゲストルームとしても利用可能な和室は、坪庭に面しており、ここでも四季折々の自然の移ろいを感じることができる。

  • 日当たりのよい中庭に向かい合うコートハウス形式を採用しているが、閉鎖的になりやすいコートハウスをガラスを使うことで開放的にしステレオタイプからの脱却をしている。リビングやサンルームを通して外の景色を見ることができ、視線が抜けるのがポイントだ。

    日当たりのよい中庭に向かい合うコートハウス形式を採用しているが、閉鎖的になりやすいコートハウスをガラスを使うことで開放的にしステレオタイプからの脱却をしている。リビングやサンルームを通して外の景色を見ることができ、視線が抜けるのがポイントだ。

  • サンルームから奥の書斎を見渡すと、北側の菜園を眺めることができる。開放感のあるガラス張りのサンルームに、お施主さんのお気に入りだという「ガラスの屋根」。お施主さんが最もこだわった見晴らし台は、夏はお孫さんのプール、冬にはサンルームなど、四季折々の自然を楽しみながら過ごすことができる家族憩いの場である。

    サンルームから奥の書斎を見渡すと、北側の菜園を眺めることができる。開放感のあるガラス張りのサンルームに、お施主さんのお気に入りだという「ガラスの屋根」。お施主さんが最もこだわった見晴らし台は、夏はお孫さんのプール、冬にはサンルームなど、四季折々の自然を楽しみながら過ごすことができる家族憩いの場である。

開放感とプライバシーを両立した二世帯住宅のリビング

 一階にあるリビングはガラス張り。中庭から北側の菜園へ視線が抜ける。広々とした解放感のある空間で、ガラス窓を開ければテラスとフラットで使うことができ、ホームパーティーなどにも活躍してくれる。

 キッチンの奥にはプライベートリビングがあり、可動式の仕切りでプライバシーの確保も可能。二階では開放感とプライバシーの両立を熟考するだけではなく、親世帯と子世帯の心地よい距離感についても配慮されている。

 また周囲の建物との「調和」も大切なポイントだ。駐車場は外に置くのが普通だが、それをしてしまうと車が家の「顔」になってしまう。そのため車はあえて地下に収納し、防犯面を重視し風雨をしのいで機能的になるように工夫されている。プライバシーを守る石の壁はガラスを組み合わせることで生活の光が零れ圧迫感を軽減。風通しが良く開放感がありながら、プライバシーも大切にすることができる。

【植木健一さん コメント】
 お施主さまの要望を叶えるために既製品はほとんど使わずにデザインをし、道路に面する箇所はプライバシーを確保し見晴らしの良いところは開放的になるように工夫しました。使い勝手を大切にし収納をきちんと作ることで、散らからずに美しい状態を保つことができるように配慮しました。23区でありながらリゾート感のある家を作ることができたのは土地の広さと立地ありきだと思います。二世帯住宅を手掛けるのは二軒目でしたが、お施主さんのご要望を取り入れながら、親世帯子世帯がストレスを感じることなく共に暮らしやすい家を考えました。

撮影:新 良太

基本データ

施主
B邸
家族構成
夫婦