家づくりはときに、厳しい現実に直面することがある。土地条件や予算により、ハウスメーカーから「その条件では無理」と言われ、思い描いていた家を諦めたり妥協したという人も多いことだろう。Oさんもそうなりかけた1人。そんなOさんの救世主となったのは、キトキノアーキテクチャの小林玲子さんだった。
この建築家に防火地域にある約10坪の土地に建っていた2階建ての旧宅。建物右側と裏には隣家が迫り、後方にも大きな建物があるため、良好な陽当たりが望めない場所だった。
さまざまな困難を克服し3階建てに生まれ変わったO邸。道路側以外の横からは大きな窓がとれないため、上部に天空の光庭を設けることで延焼防止建物にできた。(写真☆)
室内空間を最大化するため、敷地めいっぱいまでオーバーハングできるよう素材選びもこだわった。玄関も扉も斜めづけすることで空間をより広く利用。
玄関を入った左には個室、廊下の先には床下収納。階段を半階分上った先にある洗面、風呂、トイレといった水回りスペースの下にあたる。
1階の個室の奥にも大容量の床下収納が。スキップフロアとすることで生み出された空間だ。
2階部分にある子供室。上部の扉を開くと半階上のダイニングにつながる。光や風の通り道になるとともに家族の程よい距離感を生む。
驚くほど明るいダイニング。各所の窓から得られる光やリビングへの抜け感が、居心地の良さを生み出した。
右の窓は、敷地ギリギリまで有効活用するべく、出窓のようにオーバーハング。子供室と繋がる扉の先に窓を配置し、さらなる抜け感ももたらした。
光シミュレーションにより綿密に計画された窓で、隣家が迫る側からも効果的に光を導いた。
ダイニングとキッチンを隔てる収納棚は、構造柱とテイストを合わせた造作で。キャスター付きで移動可能なため、来客時などは一体空間とできる。
吹き抜けの高い天井をもつリビングは開放感抜群。DK部分の天井をリビングにむかって広がるよう斜めにすることで籠る感じのキッチンからより広がりを感じさせる。
天空の光庭は柱を用いず、吊り構造とすることで空間を広く。光庭からの光がスキップフロアで下に導かれ、想像以上の豊かな空間を生み出した。
撮影:Ookura Hideki / Kurome Photo Studio