地方都市では、「注文住宅は住宅メーカーや工務店に依頼するもの」という意識が、都会よりも強い傾向にある。予算やデザインの問題で、思い描いていた家づくりができず、妥協したり諦めたといったケースもあることだろう。施主のYさんもそんな1人。そんな中、Yさんが家づくりを相談したのは、北陸を中心に活動する建築家、ハレ建築デザインの下野さんご夫妻。この相談が、自分達の思いをカタチに変えてくれる結果となった。
この建築家に和モダンという要望に合わせた外観は黒でシックに。切妻屋根で大きくせり出させた軒が和を感じさせる。外壁は凍害を防ぐ目的もあり、サイディングではなくガルバリウム鋼板を採用した。
実家の庭・畑を懐に抱くように、変形の敷地に素直に、くの字の配置とした。深い軒は、日差しの直射を遮りながらも、室内に光を導く。
高さと景色の抜け感で抜群の開放感のLDK。視線の先には、田んぼの風景が広がる。
カラーを黒、白、木の3色で統一した、温もりの中にも落ち着きを感じさせるLDK。照明コンサルタントでもある寿有さんによって、全体は間接照明に。テレビボードの裏は、デッキなどの収納スペース。お子さんたちのおもちゃなども隠せるのだとか。
「かっこいいキッチン」という奥様の要望に合わせ寿有さんがセレクトしたキッチン。このカラーに合わせ、テーブルやバックボードなども色を統一した。窓の先には、庭と畑が見え、実家の明かりも感じられる。
「陽が当たって、こもれる場所がほしい」とのリクエストに応じて考えられた小上がり。ベンチとして座ったり、お子さんが遊んだりするスペースに。窓が庭の景色を切り取る額縁のよう。
キッチンの奥は、冷蔵庫やパントリースペース。ここに収納があることで、キッチンをすっきりさせることができる。ダイニング上には球体のペンダント照明で、シックな雰囲気に。
広々サニタリーには、洗面台を兼ねた造り付けのデスクを。ちょっとした作業にも重宝。スロップシンクもせっちし、泥で汚れたものなどを洗うにも便利だ。
9畳もあるオープンなクローク。両サイドにはハンガーラック、中央には格子の棚が並ぶ。各部屋へと繋がる便利な位置にある。「生活感のあるものを隠せる」と奥様に大好評。
将来的に夫婦の寝室となる個室は、シンプルで落ち着きのある雰囲気。天井高を稼ぐため、あえて現しに。天井には調湿効果のあるモイスを用いることで、快適な空間をつくりだした。
はしごになりがちなロフトへの階段は、キッチン裏に。こうすることで、行き来しやすくなり、ロフトが単なる収納スペースでなくなる。開口を設けることで、風の通り道もつくった。
クロークの上のロフトは11畳もの広さ。Yさんの隠れ家として、ごろんと横になり本を読んだりゲームができるよう、カーペット敷に。お子さん達の遊び場としても重宝するだろう。奥の窓を開けることで、風が抜けていくという。
撮影:ハレ建築デザイン