尾道市の向島に、特徴あふれる2世帯住宅が誕生した。外観は周辺の景色に溶け込み、近隣の人々との交流が生まれ、2世帯が適度な距離感を感じられ、家族全員が毎日の生活を楽しめ、コストを抑えた家。それらすべてを実現し、“ひろしま住まいづくりコンクール 2023 新築部門最優秀賞”や“2024年度グッドデザイン賞”を受賞したこの作品をご紹介しよう。
この建築家に周辺環境。写真左側には比較的新しい家が並ぶ。家全体を2つにわけ、新しく建てられた周囲の家とボリュームが同じようになることを意識したのがよくわかる。切妻屋根は周囲に多く、色も周囲の家と近いものを使うなど、周囲に溶け込むプランとなっている
大きく張り出した庇は、きれいに手入れされた隣家の植栽とのつながりや平面的な広がりを考えて設置された。里道をはさんだ隣家の擁壁は2mの高さがあるため、まるで庇が隣家の地面につながっているように感じられる。同時に里道と敷地の、ゆるやかなつながりも実現している
数多く配置されたガラスから漏れる光が美しい。ガラスの配置は、外からの視線を遮るように設計されている
外観夕景。建物内から漏れ出る光が美しいだけでなく、1階にある親世帯のリビングから漏れる光が写真右側の里道を明るく照らす効果もある。照明がなく暗かった里道が明るくなったと、近隣の方にも好評だそうだ
ダイニングから見たリビング。青色の部分が、高くなっている浮床。廊下であるだけでなく、下部に収納ができ、リビングに食い込んでいる場所は腰掛けにもなる。リビングと左側の浮床がある廊下側にはドアで仕切られていないため、広さを感じるだけでなく自由な使い方ができる
リビングから見た、ダイニングとキッチン。多くの窓と階段上部のトップライトにより、照明がなくてもこの明るさを確保している。ダイニング右の壁にある作り付けのスタディースペースでは、仕事や勉強などができる
リビングからみた子供部屋方向。リビングから階段室、その先にある子供部屋まで扉での仕切りはない。そのため、子供の様子も常に感じることができる。浮床が手前にあるので、子供部屋が仮に散らかっていてもリビングからは見えない設計となっている