商業地域でも人々は住み、小さな個人の営みがあります。都市部地域では、どのような住まい方・暮らし方があるのでしょうか。とくに、市場経済が絡む都心密集地での賃貸集合住宅では、あまり考えられてこなかった課題です。
今回の計画は、渋谷区の狭小敷地に建つ地上6階建ての鉄筋コンクリート造の店舗+集合住宅の新築計画。1-2階を店舗に3-6階を共同住宅としています。南北2面接道のレベル差のある敷地条件を利用し、北側を店舗、南側を共同住宅出入口に分離した動線計画としました。事業収支を成立させなければならない中でどのような住まいが提供できるかがスタートでした。
外部を内部に取り込み、限られた内部空間をできるだけ有効に感じ、使いたい。都市生活者のシンプルな切なる願いです。
この計画は、外部空間を内部空間に取り込み、出入りや採光・通風にとらわれない自由な開口部の扱い方の実践です。バルコニー空間をつくる外壁に、行為に合わせた開口を開け、対応させました。ファサードに内部のふるまいをリンクさせた開口部をあけると、ファサードに個性が出現しました。
集合住宅の外観には、ともすると街に無関心になり、防御する姿勢を見せかねない危うさがあります。この計画を通して、もっと自由におおらかに都市生活を送り、その楽しさが街に寄与できること、そのような都市空間をつくることができることを実感しました。
撮影:鳥村鋼一