滋賀県大津市に、とても目を引く建物が誕生した。広大な横長の敷地に、1階がカフェで2階が住居、そして施主様(グラフィックデザイナー)の事務所小屋が同じデザインで建てられている。とある名所にほど近い場所にあるため、この敷地の前を多くの方が通り、足を止めて建物を眺める人も多い。この作品が誕生した背景をご紹介しよう。
外観。道路に接する面がとても長い敷地の特徴を活かし、建物もあえて横長に。右手前の小屋は施主様の事務所。横長で大きく見える建物と、かわいらしい小屋の対比が印象的だ。特に意識したのが、2階のデザイン。建物が大きいので、外壁が平面だと圧迫感が出る。そのため、飛び出した部分を何か所か設けて変化をつけている
前庭から見た建物。1階がカフェで2階が住居スペースとなる。2階には広いベランダが設けられ、その下はカフェのテラス席として使用されている。1階のカフェには大きな窓を設置し、室内の明るさを確保している。また、人の手が触れる部分には木製の明るい部材を使用し、暖かみを感じられるように計算されている
カフェスペース。設計時には店内の家具が決まっていなかったため、幅広く対応できるシンプルなデザインとした
2階のリビングからキッチン側を望む。構造材が見える吹き抜けと、大きな開口部と広いベランダにより、開放感を感じることができる。写真右側の壁にはハイサイドライトが設置されており、明るさの確保と風通しにも役立っている
キッチン側から見たリビングスペース。ベランダの幅いっぱいに設置された窓はすべて開放することができ、広さを感じることができる。ベランダの柵は前面の道路や電車からの視線を遮るため、少し高めに設計されている。施主様は、視線を気にすることなく開放感を感じられるこのスペースをとても気に入っているそうだ
ベランダから見たキッチンとリビング。冷蔵庫の収納部分は外壁を外に出すことで確保した。冷蔵庫の存在感を消し、できるだけ目立たなくするための工夫だ
線路から見た外観。2階部分の外壁の凹凸や異なる窓の大きさにより、大きな建物であるにも関わらず、圧迫感のない表情を生みだしている。人通りが多い立地にも関わらず、2階部分のプライバシーが保たれている点にも注目いただきたい
施主様ご夫婦の趣味である、漫画本の収納スペース
撮影:Morimoto Yutaka