神田の魅力発信地をつくるプロジェクトに、建築デザインのスペシャリストとして参加した建築家の水間寿明さん。関係者とともに思いを具現化していくプロセスから、設計のスキルやセンスだけにとどまらない、水間さんの仕事の魅力を探ってみた。
この建築家に改修で、3方向がガラス張りのオープンな空間に一新。外に広がる神田の街と一体化するような感覚を味わえる
正面から入ってまず目に入るのが、大きな炭の炉。この地で薪炭店として創業した廣瀬家にふさわしい、空間デザインの要だ。カフェダイニングにはお客さまがこの炉で料理を炙って仕上げるメニューもあり、人気を博している
モダンな店内。シックな黒は、廣瀬家の家業が薪炭店から始まったことにちなんでいる。モルタルや天然木をバランス良く組み合わせた洗練された空間は、屋外とシームレスにつながり抜群の開放感
ライティングレールやアッパーライトなど、雰囲気の良い照明が灯る夜の内観。木の温もりも感じられ、ホッと心が安らぐ。「空間が素敵」「居心地がいい」と、空間に惹かれて訪れるお客さまも多い
道路に面した大きな連続窓は南向き。東側は駐車場だったが改修でウッドデッキテラスが誕生。爽やかな光や風をダイレクトに感じながら食事やお茶を楽しめる
広々としたオープンキッチンは、黒い壁やモルタルの床に合わせてモールテックスを使用。モルタルを使ったベルギー製の左官材料で、意匠性に優れ、防水性も高い。このキッチンの脇には、のれんで仕切った個室も用意されている
神田マップ前のスペースは、必要に応じて棚を設け、神田のお店のポップアップショップなどで物販もできるように計画。神田の魅力発信地として、空間をフレキシブルに使えるように設計している
竣工した2023年5月には、コロナ禍を経て4年ぶりに神田祭が開催された。廣瀬家は3代目が名誉総代、4代目が総代を務めていることから、神さまにお供え物を献ずる「献饌の儀」は『廣瀬與兵衛商店』の前で実施。地域の方々が大勢集まり、賑わった
撮影:髙橋菜生(Nao Takahashi)