景色の良い丘の上に建つ住宅です。既存の木造住宅からの建て替えとなりました。長い急な坂道をうつむきながら一生懸命登り、ふと見上げると、曲線の美しいらせん階段越しに現れる、大きな木と白い家が印象的です。
この建て替えにあたり、敷地の環境を読み解くと、ふたつの軸が見えてきました。ひとつは東西の長手方向、もうひとつはそこから約30度ほど振った、垂水の海を見下ろすことのできる南北方向の軸です。これらの条件に従って素直に計画をおこなった結果、この枝状にわかれたプランをもつ、Branch Hausができあがりました。
住まいの中心となるのは、「へ」の字のかたちをしたアトリエ(1F)とLDK(2F)です。長時間を過ごすことになる場所ですから、ふとした時に景色を楽しめる位置にと考え、加えて海を見渡せる真南方向へ開口部を設けました(南北軸に沿って配置しているので西日を気にしなくても良くなりました)。とくに2階のLDKからの眺めは絶景です。クライアントからも「窓を開放する方角を変えるだけで、こんなにも景色が変わるなんて!」との声が。建て替え前は、海はちらっと見える程度で、向かいの建物の屋根を見ながら生活していたそうです。
また、敷地の形状から東西に長く、かつ入口が東端であることから動線が長くなってしまいそうでしたが、この中央に配置された広いLDK/アトリエを介して東西に移動するプランによって、動線を短くすることもできました。長い廊下も必要がなくなり、空間も効率よく活用できたと思います。木造在来工法に木造ラーメン構造をプラスアルファしたハイブリッドな工法を採用しています。
撮影:Akiyoshi Fukuzawa