大阪市天王寺区にある米田建築アトリエは、新築とリフォームをほぼ同じ割合で手掛けている。代表の建築家、米田さんが特にこだわっているのが、施主様との「対話」だ。その理由は、じっくりと話をすることで、施主様の潜在的な想いや要望が明確になるからだ。一例として、対話から生み出されたプランをご紹介しよう。
この建築家に上空からの写真(リフォーム後)。下向きのコの字部分が既存家屋。中央部分はもともと中庭だったが、増築により玄関とホールを新設した。また、従来の玄関は写真右下にあったが、写真中央下部に位置を変更した
アプローチから見たエントランス。従来の玄関は敷地に入ってすぐの場所にあったが、位置を奥に変更した。長いアプローチと計算された植栽により、来客の期待感が高まる。奥にある玄関前の庇は高さを変え、奥行きが強調されている
玄関は増築部に設けたため、自由に設計できる。そのメリットを活かし、柔らかな光の取り込みを実現した
廊下側から見た玄関。南側(写真左側)にある高い位置のハイサイドライトから、中庭側のハイサイドライトを通って中庭へ光が注ぎ込んでいる
廊下から見たリビングダイニングと奥にキッチン。シックな色合いをベースに、アクセントとなる色を適度に配した。床にも落ち着いた色のタイルを使用
家具も落ち着きのある色をベースに、アクセントとなる明るい色を配した。温かみのあるベージュ色の効果で、安らぎを感じることができる
キッチンの天板下の側面にも、ピンクゴールドをアクセントとして採用。IHとガスコンロの両方を備える、贅沢な仕様。動線が短いため、奥様からは好評だという
ホールから見たリビングダイニング。既存の窓位置は変えられないため、柔らかな光が回り込むように意識。そのためテレビ側の壁には、光の反射が少ない焼き物(ソリド)を採用した
ダイニングから見たリビング。大きな面積となるテレビ側の壁は、落ち着きを感じられる暗い色をベースに、少しだけ赤みを帯びているものとした。これにより、温かみも感じることができる
リビングから見た増築部分のホール。2段下げられた床と木材の使用により、壁はないものの空間の切り替えを感じることができる。柔らかな床材を使用しているため、直接寝そべってくつろいでいることも多いそうだ。段差部分に腰掛けてくつろぐことも可能だ
ホールから見たリビングと中庭。中庭側の大きな窓のほかに、ハイサイドライトも設けられている。季節や時間によって、それぞれの窓から異なる光が降り注ぐ。増築部分だからこそできる工夫だ
セカンドリビングから見たホールとリビング方向。床や壁はリビングよりもトーンを落とした色使とし、リビング側から見た時に奥行きを感じることができる。シアタールームとして使われることも多いという
ホールから見たセカンドリビング。トップライトと左右の窓により、柔らかな光が差し込む。トップライトは従来の家では個室部分にあった。そのため、雨音や熱の問題などのデメリットもあったという。今回のリノベーションではこの場所をセカンドリビングとしてオープンな空間としたため、デメリットを感じることはなくなった
トップライトからの光の入り方を柔らかくするため、トップライトの垂直壁と天井が接する部分は曲線とした。直角の場合と比較すると、影が柔らかくなり、空間が区切られる違和感もなくなる工夫だ
セカンドリビングから見た和室。障子を開けた場合、すべてが壁に収まるように設計されている。これにより、セカンドリビングの開放感を最大限に感じられる
撮影:河田弘樹