仙台市内の擁壁上に立つ眺めの良い平屋の住宅である。
敷地は、大通りから坂を登った旗竿上の敷地で、通路を歩いた突き当たりには、ぐるりと擁壁がそびえ、階段を登ると、南西の大通り越しに大変見晴らしの良い眺望が望め、また、周辺の建物の屋根越しに遠景の魅力を感じる変形敷地であった。擁壁は震災後築造されたもので、基礎が干渉しないようセットバックすれば、建物が建てられるものであった。
そこで、擁壁に干渉しないように建物を建て、擁壁に干渉しそうな部分は、半外部のテラスや玄関ポーチをキャンチレバー(跳ね出し)の基礎や庇で構成しながら、擁壁際まで建築を近づけることとした。シンプルな正方形の平面を元に、眺望に合わせて対角線上に片流れの屋根を掛け、眺望や敷地の形状の成りに合わせてボリュームをカッティングしながら形を決めていった。既存の擁壁は、あたかも新築の上部に合わせてデザインしたような基壇のようにも見えたり、基壇の上にオブジェのような塊があるような状態を目指した。
見晴らしの良い丘に立ったような感覚をワンルームの空間にしようと考えた。リビングは、段々状になっており、一段降るごとに書斎→リビング→ダイニング→リビングテラスと繋がり、眺望に対して広がり、天井は床の段々に呼応して下がっていくような空間である。見返すとタイルで覆われた収納ボックス越しに三角の開口部がぽっかりと空いており、空が見え、風が抜けていく。
内部でありながら外にいるようなおおらかな空間の、いたるところに心地よい居場所があり、その時々の気分により、過ごしたい場所が生まれる居心地のよい住処である。