築36年の住宅をフル・リノベーション
クルマ好きの建築家とつくり上げた「ガレージハウス」

ご両親が長年住んでいた一戸建てを活かし、新たな住まいをつくることを決意した40代のO夫妻。思い入れのある家をフル・リノベーションして誕生したのは、使い勝手のいいガレージと明るいLDKを有する現代的な邸宅だった。築36年の邸宅は、果たしてどのように生まれ変わったのか。設計を担当した高橋貴大一級建築士事務所の高橋さんにお話を伺った。

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許可申請のハードルを乗り越え
何十年先まで価値が残る家を目指す

静岡県・浜松市に新たに誕生したO邸。風合いのある銅板葺の屋根が印象的なこの家は、Oさんのご両親が長年住んでいた邸宅をフル・リフォームしたものだ。

Oさんはもともと東京の一戸建てに住んでいたが、実家の家業を継ぐために故郷である静岡県・浜松市に帰ることに。すでに両親は別の住まいに転居することが決まっていたため、思い入れのある両親の家に手を入れて、Oさんご夫婦と3人の子どもが住む新たな住まいとすることを決めた。

建築家を探していたOさん。ある日訪れた知人宅をいたく気に入り、その設計を担当していた高橋さんに家づくりを依頼したのだという。

当時を振り返り、高橋さんはこう語る。
「Oさんが気に入ってくださった家は、他にはちょっとないような個性的な家だったんです。規模が大きな家なのですが、生活動線も良く『せっかく建築家に頼むなら、自分もこんな家を建てたい』と思っていただけたようです。もともと規模の大きな住まいの設計は得意だったので、声をかけていただけて嬉しかったですね」。

高橋さんがヒアリングをしたところ、Oさんが想い描いていたのは、明るく開放的なリビングと、使いやすいガレージのある家だったそう。加えて、両親が思い入れを抱く銅板葺の屋根を残したいという要望もあった。

さらに断熱や構造など、住宅性能を向上させたいということで、2階の大屋根と1階下屋の屋根部分を残し、壁や天井、床を解体。一度スケルトンにして、躯体を強化しながら構造計算をし直し、新たに制振ダンパーで補強することに。

「これらの工程でかなりコストがかさんだため、もしかしたら新築した方が安く上がるかも知れないという状況でした。念のためOさんにも確認を取り、了承を得たうえで作業を進めています」と語る高橋さん。

ちなみに今回は既存の住宅のリノベーションということで、許可申請にはかなり苦労したそう。
「リノベーションの許可申請は新築より難しいんですよ、O邸の場合はこの許可申請のハードルが非常に高かったのですが、何とかクリアしつつ、建物の価値をしっかりと、何十年も財産として残るようにと考えました」と話す。

  • ガレージ。タイヤ交換などもできる広々としたスペースを備えており、使い勝⼿も抜群

    ガレージ。タイヤ交換などもできる広々としたスペースを備えており、使い勝⼿も抜群

  • ⽞関ポーチと重厚な雰囲気を醸し出す表側の⽞関。左側は LDK の窓となっている

    ⽞関ポーチと重厚な雰囲気を醸し出す表側の⽞関。左側は LDK の窓となっている

  • グレード感のある⽞関スペース。⽞関外と同じ⽯材を⽞関内でも使⽤することで空間の連
続感を演出した

    グレード感のある⽞関スペース。⽞関外と同じ⽯材を⽞関内でも使⽤することで空間の連
    続感を演出した

  • ダイニング。アクセントウォールは⼤理⽯タイル、そのほかの壁には⾳や匂いを吸収する珪
藻⼟を使⽤した

    ダイニング。アクセントウォールは⼤理⽯タイル、そのほかの壁には⾳や匂いを吸収する珪
    藻⼟を使⽤した

  • 和室は以前からあったものを天井、床から建具まですべてリファイン。新たに⾼級感のある
空間に⽣まれ変わった

    和室は以前からあったものを天井、床から建具まですべてリファイン。新たに⾼級感のある
    空間に⽣まれ変わった

構造上の性能をしっかり担保しつつ
広くて明るいLDKを確保

こうして、新たに生まれ変わったO邸。外観は銅板葺の屋根とブルーグレイの壁面がうまくマッチする、高級感溢れる仕上がりとなった。

正面玄関から中に入ると、ホールを介して広々としたLDKが目の前に広がる。リフォーム前は暗い印象だった室内も、窓から燦燦と光が差し込む明るい空間となった。さらに奥に進むと、和室と、家でも仕事ができるようにというOさんの要望に応えて配された書斎がある。

1階のガレージ部分は今回新たに増築されており、ガレージスペースの幅を130㎝、横を100㎝延長。さらに、それに隣接する形でホビールームを新設した。この副産物として洗面室のスペースが広く確保できたため、ここにトレーニング・ジムとして使えるようにロッカーとトレッドミルを配置。運動して、そのままシャワーやサウナ、浴室を使うことができるほか、洗濯物の動線もここに集約し、生活空間にクロスしないよう工夫されている。

2階には、3つの寝室と主寝室を配置。主寝室にはご夫婦の希望でオーディオも設置してあり、音楽などを楽しめるようになっている。1階がパブリックな要素を備えているのに対して2階は完全にプライベート空間となっており、気兼ねなく来客を迎えられるつくりだ。

生まれ変わったO邸に、とても満足していらっしゃるというOさん。「失敗したところが何一つない」と感想を述べられているという。住む人の趣味やライフスタイルを丁寧に見きわめ、設計に活かすことを信条としている高橋さんだからこそ、これだけ満足度の高い住宅をつくりあげられるのだろう。

最後に、高橋さんが考える自身の強みを聞いてみた。

「僕の建築家としての原点は、幼稚園の時のお絵かきの時間から始まっています。その頃からずっと建築が好きで、ここまで来ました。何より自分自身が楽しんでやらせてもらっているのは、強みじゃないかなと思っています。あと、僕自身クルマやバイクが大好きなので、ガレージを活かした家づくりも得意としています。ご要望がある方はぜひお声がけください」。

家づくりを愛してやまない高橋さん。これからも住む人が本当に満足できる家を、
誰よりも楽しんでつくり続けてくれることだろう。
  • 奥様が楽しみながら輸⼊壁紙を選んだという事務室。ウォルナットのヘリボーンの床など
奥様こだわりの空間に仕上がっている

    奥様が楽しみながら輸⼊壁紙を選んだという事務室。ウォルナットのヘリボーンの床など
    奥様こだわりの空間に仕上がっている

  • トレッドミルが置かれている広々とした洗⾯所には、家族全員分のロッカーも完備

    トレッドミルが置かれている広々とした洗⾯所には、家族全員分のロッカーも完備

  • トレッドミルで⾛った後そのまま⼊れるよう動線が⼯夫された、ホテルライクなバスルー
ム。バスタブにはジャグジー機能もついている

    トレッドミルで⾛った後そのまま⼊れるよう動線が⼯夫された、ホテルライクなバスルー
    ム。バスタブにはジャグジー機能もついている

  • O さんの希望で設置されたサウナルーム。電気式のストーヴは 100℃以上にもなる本格派

    O さんの希望で設置されたサウナルーム。電気式のストーヴは 100℃以上にもなる本格派

撮影:髙橋 貴大

基本データ

作品名
ガレージのある家
施主
O邸
所在地
静岡県浜松市
家族構成
夫婦+子供3人
間取り
4LDK
敷地面積
611.08㎡
延床面積
313.75㎡