ご実家を建て替え、当面はセカンドハウス、いずれは終の住処にしたいと考えていた施主さま夫妻。依頼を受けた建築家の谷山武志さん・裕子さんがつくり上げたのは、心地よい光や緑に包まれながら、いくつになっても安心・快適に暮らせる家だった。
この建築家に南の外観。『逢瀬町の平屋』は、260坪以上の広い敷地の南に庭がある理想的なレイアウト。建物のボリュームがあり、外壁は硬質な印象を与えるガルバリウム鋼板だが、高さを抑えた南面、ゆったりとした深い軒が奥ゆかしい品のよさを演出。田園風景に溶け込む佇まいとなっている
西の外観。庇が付いた部分は薪ストーブの薪などを備蓄できる外納戸。写真左の黒いドアはキッチンのパントリーに直接行ける勝手口で、買い物帰りに荷物を運び込みやすい。車いすが必要になった場合は、駐車場から勝手口へのスロープを設置することもできる
東西に長い平屋なのでほとんどの住空間が南の庭に面し、明るい陽光と豊かな緑を楽しみながら生活できる。写真右側、玄関の木製建具はオーダーでつくったもの。玄関ポーチの床は重厚感漂う玄昌石
LDK。テレビ台の奥は書斎コーナー。その先の白い引き戸の奥が主寝室。写真右側に進むとダイニングやキッチンがある。大きなワンルームの中に生活空間がまとまり、ご夫妻2人で暮らしやすい間取り。主寝室の向かい(薪ストーブの裏)には大容量のウォークインクローゼットもある
リビングはウッドデッキを介して庭とのつながりを感じられる開放空間。窓はオーダーの木製建具で、緑豊かな景色を引き立てる額縁のような役割を果たす。写真左の壁一面には先代から受け継いだ古書が並ぶ棚があり、空間にアカデミックな魅力を添えている
リビング(写真手前)、書斎コーナー(写真左)、ダイニング(写真右奥)が大きな1室空間に収められた使いやすい間取り。写真中央奥の白壁の中がキッチン。薪ストーブ側に南向きの小窓があり、小窓の戸を開ければLDKや庭の様子が目に入る
LDKは北に向かって高くなる勾配天井。上部のハイサイドライトが北の穏やかな光を広範囲に届ける。写真左、ご主人たっての希望で設置した薪ストーブは、オーダーであつらえた素敵なデザイン。暖かな炎が冬のくつろぎ時間を格別なものにしてくれる
ダイニングは北側に位置するが、腰高の窓一面に竹林の緑が広がり、和の風情あふれる清々しい眺めを楽しみながら食事ができる
LDKの書斎コーナーからの眺め。ワンルーム空間にダイニング、リビング、書斎など多彩な居場所があり、暮らしていて飽きない。それぞれの居場所がそれとなくゾーニングされており、独立感と一体感のバランスが絶妙
北側の和室。『逢瀬町の平屋』は北に向かって天井が高くなるためこの和室も天井が高く、ハイサイドライトやコーナー窓から外の景色や光も感じられ、心地よい開放感がある。左の上部には玄関ホール側からのぼるロフト収納があり、普段使わないものをしまってすっきりと生活できる
北の和室から南の和室を見る。2室の和室はひと続きで、北の和室も南の庭とのつながりを感じられる。天井は、すだれのようなサツマヨシを張ったベニヤ。和の趣が増し、ホッと落ち着ける空間に仕上がった
撮影:朝日カラー 伊藤秀樹