急増している空き家問題に真っ向から取り組んでいる、建築家の白坂隆之介さん。紹介するがんばり坂の家は、白坂さん自身が空き家を購入し、改修した家だ。格安で売り出されていた家が再び人が生活する家になり、適正価格で売却されるに至ったその経緯とは。
この建築家に庭から家を眺める。4枚並ぶ窓のうち、左端の1枚は半分が内側の耐震壁に重なっている。本来ならば壁の手前まで窓があればいいのだが、あえて他と同じサイズにした。この仕掛けにより庭からは家の中そのものが広く見える。さらに、隣の窓とぴたりと重なり、大きく窓が開けられる
水回りから土間方向を見る。取り払った天井のおかげでできたスペースを生かし、土間には天井いっぱいまで広がる収納棚を造りつけた。残した柱や梁と新しい資材が混在するが、天井のラワン合板を表情豊かな裏側を見せて貼るなど、空間全体が馴染み、ナチュラルに見えるよう注力した
画像右から土間、リビング、水まわり。住まい手が変わっても暮らしやすいよう、また、店舗兼住居など様々な用途で使えるように、それぞれのエリアを等分に分けたシンプルな間取りとした。「ワンルームをできるだけ広々と使うためにも、すっきりとさせたかった」と白坂さん
ロフトからの眺め。切妻屋根による勾配天井のため圧迫感はない。歴史を感じさせる梁や柱が、室内に落ち着きを与えている
水回りは手前の引き戸で完全に隠せる。開けておいても、左右に取り付けたカーテンで洗濯機や洗面が見えないようにした。画像奥の右は浴室への扉、左はトイレへの扉。これらの扉をカーテンで覆ってしまえば、リビングが拡張したような感覚が得られる
土間はブロックの下に断熱材を入れ、底冷えしないようにした。半透明の玄関の引き戸は断熱性が高く、南には豊かに光が入る窓もあるため、木造とは思えないほど暖かいと驚く来客が多いという
土間から家を見渡す。大きな窓により庭まで一体感があり開放的だ。画像左の引き戸を開けると納戸がある。リビング空間に収納があることで暮らしやすさが高まる。また引き戸を外せばリビングの床面積が増え、間仕切り壁を設け1部屋増やすといった間取り変更の自由度も増した
キッチンから土間方向を見る。キッチンはカウンターを室内側に向け、家事をしながら家族とコミュニケーションが取れるように計らった。洗面脱衣室との境には中空ポリカーボネート板を使用。洗面側が透けて見え、室内空間がひとつに感じられる
夕暮れの外観。窓からはもちろん、透光性がある玄関扉からもやわらかな光が漏れて美しい
撮影:淺川 敏