畑の土地を宅地に変更、家を新築するご依頼を受けた建築家の森屋さん。敷地には様々な課題があったが、環境を見極めクリアした。同時にその工夫は内部空間にも生かせるように計算されており、お施主様が望むコンパクトながら奥行き感がある平屋ができた。一帯の風景をより魅力的にしているこの家の秘密を探る。
この建築家に山に向かって外観を見る。古民家は画面左の木々の後ろにちらりと見えている。里山の風景に馴染むよう、小さな集落をイメージした外観
外観。家の外側を走る溝は湧き水の水路。以前は沼のようになってしまっていたがパイプを引き直し整備したことにより、土地の管理がしやすくなった。パイプはキッチンの窓から見える位置にあり、キッチンにいると心地よい程度に水の音が聞こえてくるのだそう
長細く、幅の違う建物を角度を変えて繋げた構造のSANNOMIYA。切妻屋根の向きも変化して、ひとつひとつが独立した小さな家のようにも見える。農地を宅地に変更した部分には砂利を敷いた。写真右側には畑が残っている
北側から見た外観。中心にある階段を上がった先に玄関がある。外壁の素材は焼杉。杉を焼く作業は森屋さんが自ら行ったという。伝統的な手法である焼杉は耐久性が高く、耐火性能や防虫性能も申し分ない。また、自然素材だからこそ経年変化も楽しむことができ、山の自然によく馴染む
屋内の壁面はシナ合板を使用。アルミニウム粉体が含まれた塗料を塗りメタリックなシルバーに仕上げた。光の当たり方によりシルバーの色が変化するのに加え、画像左上は外部の緑も映している
「建物を計画するだけではなくて、実際につくる過程にもかかわっていくことが好きです」と言う森屋さん。杉を焼く工程は森屋さんが自ら行った。工業製品にはない美しさは、時が経つにつれこの土地に一層しっくりと馴染むだろう。釘も時の変化を感じられる真鍮にした
杉を焼く風景。杉を三角形に組み固定して、下から火をつける
焼杉の外壁をお気に召されたお施主のS様は、隣接するご両親宅の外壁にも焼杉を貼ることにされた。同じ外観の雰囲気を持つ家が並び、一帯の風景がさらに魅力的なものになった。竣工時は畑との境界がはっきりと分かれていたが、少しずつ自然が浸食し今は曖昧になっている