保育と普請
待機児童が年々増加する状況に見られる通り、乳幼児が1日の大部分の時間を過ごす場所として保育園は子供の成長過程に与える影響が大きい。子供の生活空間といっても過言ではなく、そのあり方は現代における住宅のスタイルとの対比で考えなければならない。現代の住宅は、言わずもがな日本の住文化が培ってきた様式や技術を捨ててきている。意匠としての和風というもののみならず、畳の床での床座という生活スタイルからフローリングでの椅子座への変化、大工の棟梁が丁寧につくる木の造作に溢れた空間から新建材に覆われたレディメイドの空間。経済原理と効率性にもとづく時代の変化の流れに抗うことは難しいが、多くの子供達が集まる保育園という場所において、現代の住環境が失ってしまった価値を幼児期の記憶に埋め込めないかと考えた。GG KIDSインターナショナル保育園は、英語で保育を行う保育園であり、その教育方針とも、「国際化の第一歩は自国の文化への理解である」という信条が合致した。
その信条の元、この保育園はテナントの内装だけではあるものの、内装のほとんどを木工事で行い、大工の丁寧な手仕事を活かしきることを意図した。
欄干で仕切られた通路空間、床をもつ和室など、伝統的な住宅の要素を保育スペースにアレンジしながら居場所を作っている。
奥の2層になったスペースは、大人が立てない天井高さの子供に最適化された場所として、人工芝であったり、デンと呼んでいる洞穴のようなスペースなどがあり、子供が空間自体を楽しめるつくりとなっている。デンの天井は三次曲面でできた左官の天井としている。これも職人の技あってのものである。
「普請」いまではあまり使われなくなったこの言葉を、現代に生きる子供たちの空間を作る上で再び考えてみたいと思った。
撮影:繁田諭