グッドデザイン賞を受賞!
アートギャラリーのような光あふれる家

「アートギャラリーのような光があふれる家に住みたい」というご夫妻の希望を叶えるため、建築家植木健一氏が考えたのが三面体をL字型に入れ子構造で組み合わせるという独自の発想。四方にある開口部からの光と風に満たされたデザイン性と機能性を兼ね備えた邸宅は、2010年度グッドデザイン賞を受賞するなど、高い評価を得ました。

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光あふれるアートギャラリーをイメージ

お施主さんのご夫妻が植木さんにあったのは、建築家とお施主さんのマッチングサイト経由。
「アートギャラリーみたいなシンプルで光が映えるようにして欲しい」という要望を叶えてくれる建築家としてコンサルタントが名前を挙げたのが植木さんだった。
植木さんの建てた家の画像を閲覧したお施主さんは、是非植木さんにお願いしたいとお見えになった。
植木さんが最初に考えたのが現在の家よりももっとアバンギャルドな家。
「アートギャラリー」からの発想でユニークなものだったが、こちらはお施主さんの「住める気がしない」という一言で、良い所を残しつつ発想の転換を行うことに。
土地の正面は北向きで高台に位置している立地を考慮し、次に考えたのが光と風を取り入れられる四方に開口部のある家。
住宅街にありながら、お隣に面する所にあえて窓を置き、身長位の高さの壁の上に窓の位置をずらすことで、視線を遮りプライバシーの確保に成功。
周辺には2~3階建ての家が多く、建築上の高さの制限が問題となる。
制限がなければ4階建てにする方が建築費用は安く済むが、南側のテラスの下にドライエリアとトップライト付きのベッドルームを埋め込む選択をとり、30坪ながら開放感と光に溢れ、BFまで自然光が入る家ができた。
開放感とプライバシーの両立という、住宅街の家が抱える問題を解決するため「家というハコをひらく」仕組みを考えて、相当スタディを重ねたという植木さん。
「施工ではなく設計でどれだけ工夫するか」ということが大切なポイントだと明かしてくれました。
三つのハコをそれぞれ三面体にバラしてひらき、L字型に入れ子構造で組み合わせることにより、壁と床・天井の間に開口部を作り、光と風が通り抜けるワンルームのような空間を作ることに成功。
真っ白な壁は白くてモダン、そして重量感や圧迫感を感じることがないとお施主さんに好評だそう。
1FとBFには白いタイルが用いられており、光が反射して室内を明るくしてくれます。
「光の入り方が大切でした」と植木さん。
外の壁には光触媒塗装を使用しており、光が当たった後に雨が降ると汚れが浮いて流れ落ちる。
その為、白い壁でも汚れが付かないので「汚くなってしまった」という理由で頻繁に塗り替える必要がないという。
普通は5年くらいで白い壁は汚れてしまうのだとか。これも、「白を持たせるための選択です」と植木さん。
光を効果的に演出してくれる「白」以外にも、拘りは随所に散りばめられている。
収納を多くし、すっきりと暮らすことができるように配慮したり、コンセントを床に埋め込んで見えないように工夫したり。
注文住宅は1つ1つオーダーメイドが当たり前。
如何にお施主さんの要望を汲みつつ、最善の提案ができるか試行錯誤を重ねるという植木さん。「施工ではなく設計でどれだけ工夫するか」ということが大切だと語る植木さんは、お施主さんの要望を汲みながら、空間を最大限に生かすマジシャンのよう。
正面が北向きとは思えない開放感と光溢れる家は、2010年度のグッドデザイン賞を受賞した。
  • 床にコンセントを収納し、スッキリとした印象のインナーテラス。大きな窓を開放すると、外の屋外テラスと一体型になりフラットになる。3階からは都心の景色を眺めることができ、ホームパーティー等にも活躍する。

    床にコンセントを収納し、スッキリとした印象のインナーテラス。大きな窓を開放すると、外の屋外テラスと一体型になりフラットになる。3階からは都心の景色を眺めることができ、ホームパーティー等にも活躍する。

  • 1Fの左手は駐車場、奥はベッドルームを半分地下に埋め込んだテラス、ガラス戸を開けるとマルチファンクションルームにダイレクトにアクセスすることが可能。こちらは将来親と一緒に住む際に親のお部屋になるほか、客間や趣味の部屋としても活用することができるように設計された。

    1Fの左手は駐車場、奥はベッドルームを半分地下に埋め込んだテラス、ガラス戸を開けるとマルチファンクションルームにダイレクトにアクセスすることが可能。こちらは将来親と一緒に住む際に親のお部屋になるほか、客間や趣味の部屋としても活用することができるように設計された。

  • BFはドライエリアを介して奥にバスルームが。つくりつけの収納をしっかりと確保することで、スタイリッシュな空間を美しく保つことができるように配慮されている。

    BFはドライエリアを介して奥にバスルームが。つくりつけの収納をしっかりと確保することで、スタイリッシュな空間を美しく保つことができるように配慮されている。

  • 照明はデザイン的にすっきりするよう、目立たないように配慮されており、間接照明を使用し温かみある色をセレクト。大きな照明が天井にないので、圧迫感を感じることなくスッキリとした印象になっている。

    照明はデザイン的にすっきりするよう、目立たないように配慮されており、間接照明を使用し温かみある色をセレクト。大きな照明が天井にないので、圧迫感を感じることなくスッキリとした印象になっている。

住宅街でも開放感とプライバシーを両立

両隣には民家があるが、入れ子式の構造のお陰で視線がずれるのでプライバシーもしっかりと確保。住宅街にありながら四方にこんなに大きな開口部がある家は珍しいといえる。1FとBFにはタイルが使われており、全体を白で統一。統一感を出すだけではなく、光が反射して明るくなり、BFにも自然光が入る。建築費用としては4階建ての方が安いが、高さの制限があるためBFという選択を取った。「キャンチレバー構造」と呼ばれる手法を採用し、駐車場とアプローチ周辺の柱をなくしている。デットスペースがなくなることで、車のスペースにゆとりができるだけではなく、1Fのマルチファンクションルームも明るくなる。

【植木 健一さん コメント】
「家の形を先入観で規定しない仕組みを考えるのが大切」と考えています。とはいえ相当スタディを重ねました。施主さんからは圧迫感を感じない点や光が四方から入ってくるところが良いと言われております。「光溢れる家」を具現化するために、隣に民家がある東側と西側の開口部も敢えて大きく取ってあります。開放感とプライバシーの両立を叶えられるように考えました。
  • 階段のデザイン1つを取っても、開放感を出すために計算して設計。重い印象にならないように隙間があり抜けているタイプをセレクトした。当初はもう少し1段1段の重なりが少なかったが、お施主さんが「怖い気がする」ということで、1段1段の重なりを多く取り視線の抜けをキープしながら恐怖感をなくすことに成功している。

    階段のデザイン1つを取っても、開放感を出すために計算して設計。重い印象にならないように隙間があり抜けているタイプをセレクトした。当初はもう少し1段1段の重なりが少なかったが、お施主さんが「怖い気がする」ということで、1段1段の重なりを多く取り視線の抜けをキープしながら恐怖感をなくすことに成功している。

  • リビングの開放感をより高めているのが吹き抜け。南側に大きくとった窓からは、明るい日差しが室内を照らしてくれる。ナチュラルなフローリングで、温もりを感じられる心地よい空間となっている。

    リビングの開放感をより高めているのが吹き抜け。南側に大きくとった窓からは、明るい日差しが室内を照らしてくれる。ナチュラルなフローリングで、温もりを感じられる心地よい空間となっている。

撮影:新 良太

基本データ

施主
B邸
家族構成
夫婦