「富士山が見えるから景観を楽しみたい。そして、四季折々の自然を感じながら暮らしたい」というお施主さんの希望を叶えるため、建築家・植木健一さんが二世帯住宅の新たな可能性に挑戦。随所に工夫を凝らした家は、眺望にこだわり開放感がありつつも、プライバシーをしっかりと確保した素敵な家でした。
この建築家に道路に面している個室や水回りへの視線を遮る壁は、石張りの一部がグラデーションになっている。石とガラスを組み合わせてあり、石の裏側を削ってガラスはその削った形状に合わせ外面ガラスを小さくした特殊な合わせガラスを使用している。このガラスから陽光が入るだけではなく、生活の光が零れだすことにより、石壁にありがちな「要塞」のような重苦しいイメージを避け、周囲の風景とも溶け込むように配慮されている。
和室やベッドルームは石壁で囲まれており、昼には陽光が差し夜には生活の光が零れだす。和室の壁と天井には和紙を使用しており、温かみと落ち着きを演出し、素材感を楽しめるように配慮されている。ゲストルームとしても利用可能な和室は、坪庭に面しており、ここでも四季折々の自然の移ろいを感じることができる。
日当たりのよい中庭に向かい合うコートハウス形式を採用しているが、閉鎖的になりやすいコートハウスをガラスを使うことで開放的にしステレオタイプからの脱却をしている。リビングやサンルームを通して外の景色を見ることができ、視線が抜けるのがポイントだ。
サンルームから奥の書斎を見渡すと、北側の菜園を眺めることができる。開放感のあるガラス張りのサンルームに、お施主さんのお気に入りだという「ガラスの屋根」。お施主さんが最もこだわった見晴らし台は、夏はお孫さんのプール、冬にはサンルームなど、四季折々の自然を楽しみながら過ごすことができる家族憩いの場である。
撮影:新 良太