ご紹介するのは、緑深い山懐という鎌倉らしいロケーションに立つ一軒家。設計を担当した伊藤寛さんは、美しい風景に馴染むデザインとともに、住まい手の暮らしに寄り添う住空間を提供。シンプルながら個性的な佇まい、暮らしを豊かに彩る空間体験、そして、家族が心地よく共存できる多様なスペースを生み出した。
この建築家に庇や樋などの出っ張りがない、きれいな輪郭が印象的。全体を雨風に強いガルバリウム鋼板でくるんだ姿は、カッパを着込んでいるかのよう。屋根は雨水をスムーズに流れ落とすために45度の急勾配に。家がキュッと尖ったとんがり帽子をかぶっているように見え、とても愛らしい
北側の外観。素朴過ぎず、かといって先鋭的過ぎることもない端正でかわいい外観デザインは、緑深い山あいの風景によく映える。屋根に穴が開いているように見える部分は、屋根の斜面を内側に切り取ってつくられたルーフテラス。まさに屋根にいるような感覚を味わえる楽しい空間だ
2階は高い三角天井のおおらかな大空間。壁は漆喰、床は無垢のサワラと、自然素材を贅沢に使っている
ルーフテラスの下のスペース(写真左奥)を通り抜けると、天井の高いのびやかな空間が現れる。両脇の窓やテラス越しに迫るように緑や空が広がり、とても気持ちがいい。お子さまが小さな頃は、階段横の吹抜けに落下防止用のすのこを置いていたが、現在は取り払っている
2階ダイニングスペース。2階全体は大きなワンルームだが、ほどよい距離感で多様なスペースがつくられている。写真左のキッチンからまわり込むようにして正面の間仕切りの先に行くと、奥さまのパソコン作業やお子さまの勉強コーナーとして使えるワークスペースがある
2階の東に位置するカウンター付きのワークスペースは、お子さまが本を読んだり勉強したりするのに最適。大人の身長ほどの間仕切りの端には、キッチン用の造作棚もある。扉がなく日常使いするものを取り出しやすいが、ダイニングからは見えない向きなので生活感を出さずにすむ