街のシンボル!
住む人、行き交う人も心豊かにする家づくりとは?

ドクターとしてクリニックを営んでいるご主人とその奥さま。大規模リフォームしたマンションを終の住処と考えていたご主人ですが、奥さまが見つけてきたクリニック近くの角地に惚れ込み、周囲の環境に配慮しつつ希望を取り入れた新しい住まいが完成。人生の後半を心地よく暮らすための礎が出来上がりました。

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角地、高低差を生かし、広さを感じる視線の抜け感を大事に

横浜・港南台でクリニックを営んでいるご主人と奥さま。10年ほど前に大規模リフォームしたマンションで暮らしていたが、港南台の駅にも近い角地を奥さまが見つけてきた。Mさんとしてはリフォーム済みのマンションに住み続けるつもりではいたが、その土地を見て新しい家を建てることを決めたという。


 そこで建築雑誌を読んだり住宅メーカーの展示場見学へと伺っていたご主人。「自分たちの夢を叶えるのは建築家に頼むしかない」考え、河辺近(こうべ・ちかし)さんが代表を努める建築設計事務所に訪れた。

「当時住まわれていたマンションに伺ったのですが、ものすごく丁寧につくられた家でした。そこで新しい家が完成したときに『前の家のほうが良かった』と言われないよう、中途半端ではないきちっと提案しなければいけないと考えました。その際、施主さまが決めたとおりにつくっていけばクレームはないでしょうが、それ以下にはならないけれどもそれ以上にもなりません。施主さまご夫婦にとっては間違いなく、今回つくる新しい家が“終の住処”となるはずです。頼まれた以上はより良いものをつくりたいと考えました」と河辺さん。

 そこでまずは新しい家を建てる土地を見たところ、角地で1メートルぐらい高低差のあることが気になった河辺さん。施主さまご夫婦の年齢は、シニア世代であったため、スロープを付けるかエレベーターを付けたほうがいいのかを相談したという。その際いただいた返事は、「二人とも毎週テニスをしており体力には自信があるので、高齢者向けの住宅にはしないでください。もし将来的に階段が苦になるようになったら、そのときはそのときでまた別のことを考えましょう」という話だった。それにより、ほとんど制約がない家づくりに取りかかることができたという。


 家の計画に入っていった河辺さんに対して、施主さまからあった要望は「広く感じられる家がいい」といった程度であり、提案に対してフィードバックをするという、理想的な施主と建築家との関係を築くことができたという。ただ施主さまのほうでインテリアを選んでいくほか、既存のマンションで使っていた家具も持っていくため、屋内の色味はほぼ決まっていた。それに対して何をしつらえていくかを考えていったという。

 河辺さんが最初に決めたのは、大きな吹き抜けがあるリビングと、それにまとわりつくように2階の周囲にぐるっと部屋が配置され、ご夫婦がお互いにどの部屋にいても気配は感じるようにしたことである。また広さを感じられるよう抜け感を大事に考えることも重要だった。プライバシーのために扉は付けるが視線が先に抜けていき、その先から光が差し込んでくることや樹木が見えることなど、窓の先のロケーションを形作っていったという。


「設計の途中段階で私の過去の仕事を見ていた奥さまから『ステンドグラスってどこかに入れられない?』と言われたんです。せっかく作り込むなら『日常的に見えるところに入れましょう』ということになり、ダイニングの南側の窓にステンドグラス作家がつくったステンドグラスを入れました」と河辺さん。透明度が非常に高いステンドグラスなので、その外側に植栽を配置して透けた緑が見えるようにしたほか、夜間でもアッパーライトで照明を施せるようにした。ガラスを磨いてダイヤモンドのようなカットガラスで作られているため、光が通るとプリズムのような灯りが室内に広がる味わいのあるステンドグラスに仕上がったという。

 港南台の家が竣工したのは2015年6月のこと。建築面積は111平方メートルでありながら広さを感じさせてくれる、人生の後半を心地よく暮らすための家づくりが実現した。
  • 大きな窓に面したリビング。2階までの吹き抜けが気持ちいい

    大きな窓に面したリビング。2階までの吹き抜けが気持ちいい

  • 照明器具を一切設置していない天井。廊下側を中心に間接照明を配置しているので、夜間でも暗さを感じない

    照明器具を一切設置していない天井。廊下側を中心に間接照明を配置しているので、夜間でも暗さを感じない

基本データ

施主
M邸
家族構成
夫婦